結婚しました!


「というわけだ……! 今日から私とユレルミは夫婦! 私は晴れてユレルミのお嫁さんになったのだっ!」


「はい! 僕はエステルさんの夫ですっ!」


「な、なな……!? な……あが……っ!?」


「わーーーーっ! おめでとう二人ともっ! すごいすごーいっ!」


 あのめくるめくような夜から丸二日。

 私とユレルミは揃って夫婦になったことを告げた。


 なぜ報告するまで丸二日もかかったのか?


 まあその……私もユレルミも色々と夢中になりすぎてしまって……。

 気がついたらいつの間にか二日も経っていたのだ……ッ!


「ま、待ちやがれ変態女っ! この二日間どこにもいねぇと思ったら、まさか……まさか……ユレルミたんとあんな事やそんな事をしてやがったってのかッ!?」


「う……! いや、その……なんというか……。私の内に潜む〝どう猛な獣〟を抑えることができなくてだな……。まあ……端的に言うと最高だった……ッ!」


「はわぁ……エステルさん、とっても綺麗でした……」


「あ、あがが……あがが……! 嘘だ……! 俺のユレルミたんが、こんな変態女に……! アバッ……」


「きゃああ!? ジローが真っ白に燃え尽きて倒れちゃった!」


「ジローさんっ!? しっかりしてくださいっ!」


「許せジロー……。もし私達の間に生まれてくる赤ちゃんが男の子なら、その子にはお前の名前を……つけるのはやはり嫌なのでそんなことはしないが、きっと私の心の中でしばらくはそれなりに生き続けるだろう……!」


 ばったりと仰向けに倒れたジローに向かって祈りを捧げると、私は最愛の恋人から、最愛の伴侶となったユレルミに微笑む。


 櫓の中から倒れたジローを不安そうに見つめるユレルミの姿は、この二日間でどこか大人びたようにも、見ているだけで今すぐ襲いかかりたくなるような、妖しい色っぽさが漂っているようにも……じゅるり……。


「はっ……!? い、いかん……陽が高い間は我慢すると約束したのだった!」


「ねーねー! じゃあ二人はこの後どうするの? ウィンターの雪だるま病はなくなったみたいだし、この後の予定もないよね?」


「はい。それについてはエステルさんと相談して、バラエーナさんのご両親がいる辺りの島に一緒に住もうと思ってます。あそこなら暖かいし、貧乏神の僕でも、食べ物や飲み水に困ることも少なそうなので」


「そっかそっか! でもなんだかユレルミ君も、エステルと結婚して大人っぽくなったよね! しっかりしてるって感じっ!」


「く、悔しいけどよぅ……っ! 前にも言ったが……テメェがユレルミたんを幸せに出来るってのは俺も認めてんだ……! いいか〝エステル〟……これからもユレルミたんを絶対に幸せにし続けろ! 一瞬でも辛い思いをさせたら、すぐに俺がテメェをぶちのめしてやるっ! あと俺はまだ諦めねぇっ!」


「あ! ジローが生き返った!」


「言われるまでもない……! ユレルミのことは、私が絶対に幸せにしてみせる!」


「僕も……エステルさんのこと、必ず幸せにしますっ!」


 私とユレルミは互いに微笑みながら頷いた。

 そして櫓から伸ばされたユレルミの手を、私はそっと握りしめる。


 ここでは人目があるのですっぽんぽんになるわけにはいかないが……今の私にとって、ユレルミに触れた時に感じる貧乏神の力すら喜びだった。


 なぜなら、それもユレルミが生きてここにいてくれることの証だから。


 サマーに行ったら、私もそこでユレルミと一緒にすっぽんぽんで暮らそう。

 お客さんが来たら大事なところには葉っぱをつけて、それ以外の時はずっと二人でイチャイチャするのだ。


 はっきり言って服とか邪魔だし。

 着ててもどうせ、二人っきりならすぐにすっぽーんと脱ぐことになるし!


 そうしてずっと一緒にいる。

 それが私の幸せで、それでユレルミも幸せになってくれるのだから――。


 だが、その時だった。


「いるかユレルミ!? 大変だ……大変なことがっ!」


「ミセリアさん!? どうしたんですか!?」 


 だがしかし。

 幸せに浸る私達の部屋に、慌てた様子のミセリアが飛び込んできたのだ。


「す、スプリングだ……! スプリングの奴らが、ウィンターに攻め込んできたんだよっ!」


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