アミュス・パメルその5

 私達が敵を倒し、巨大な化け物にたどり着くころには、アジェーレ軍とエイレスト軍が総がかりで化け物と戦っていた。

 だけど、相手は人間よりも10倍以上の大きさはあるし、それに巨大な化け物は強かった。

 だから、軍隊は大苦戦をしていたのだ。


「おお!これは大魔導士どの。見ての通り中々に手強い魔族のようです。先ほど踏みつぶされそうになりました」


 私達の近くまで来たウィグランド王がそう言った。

 しかし、大魔導士どのだなんて、最初に会った時はそんな言い方はしていなかったし、一体誰に向けて行っているのだろうか?

 そして、ウィグランド王は、あの巨大な化け物を魔族と言ったけど、あれは魔族なのだろうか?モンスターの方がまだしっくりとくる。


「どうするのですか?」


 おばあちゃんが王様に聞いた。


「それは、もちろん。我々の武で粉砕します」


 なんか、かっこよく言っているのだけど、つまり力押しという事だ。

 そして、そのかっこいい台詞を残して、ウィグランド王は再び巨大な化け物へと向かおうとした。


「お待ちになってください!」


 その背中を、おばあちゃんが止める。


「どうなされました?」

「あの化け物はこのアミュス学園長が倒します。無駄な犠牲を出す必要はありません。足止めだけお願いします」

「おお!大魔導士どのが!」


 ウィグランド王の口ぶり的に、大魔導士というのは私の事のようだ。でも、私はそんな大それた存在ではない。

 そして、学園長があの化け物を倒すという事は、


「ええ!私がですか?」


 そういう事だろう。

 つまり、何故だか、私があの化け物を倒すことになっているのだ。


「それが一番いいでしょう?」


 おばあちゃんが当たり前という感じで言うけど、魔法で倒すのならおばあちゃんでもいいと思う。


「そうだな、頼んだぜ」


 ベルテッダは黙ってて欲しい。


「よろしく頼む」


 ウィグランド王が馬から降りて、私に頭を下げた。

 一国の王が頭を下げるなんて大変な事だ。


「私も歌いますので」


 更に、ウルスメデスさんもお願いして来た。

 ここまで皆にお願いされたら、断るどころか、なんだかやる気になってきてしまった。


「は、はい!任せてください!」


 だから私は、張り切ってそう答えたのだ。

 


     ♦



 そして、私は見晴らしのいい場所で魔法陣を作り出す。

 巨大な魔法には、巨大な魔法陣を作り出す必要がある。これに時間がかかるのだ。


 眼下では、おばあちゃんが化け物に殴りかかり、ウィグランド王が勇ましく戦い、ウルスメデスさんの綺麗な歌声が響き渡り、ベルテッダは逃げ惑っていた。

 そして、やがて、私の魔法陣が完成する。


 的が大きいし、空に向けて撃てるので、遠慮をする必要はなさそうである。

 だから私は、作り出した全てを消滅させる炎の魔法を――撃ちだした。


 撃ちだされた魔法は、私の考え通りに化け物を撃ち抜き、体の半分を消滅させた。

 そして、力なく倒れた化け物に、兵達が群がっていく。


「ふぅ……」


 私は疲れて座り込む。


「これで平和になるといいな」


 そして、空に向かってそう呟いたのだ。

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