シェラミエ・エイレストその6

 私は今、とても幸せだ。

 子供にも、"夫にも"恵まれ、大好きな花に囲まれた生活をしている。

 きっといつまでも、こんな幸せな生活が続くのだろう。

 それは願望だろうか?


 

     ♦



 私はいつものように、庭の花の面倒を見ていた。

 ただ、昔と違うのは、娘のピリフィルも一緒にいるところである。


「ねえ、お母様。私もお水やっていい?」

「ええ、もちろんよ」


 娘はまだ5歳だけど、私に似て花が好きなようだ。今から大きくなって、一緒に花畑に囲まれるのが楽しみである。


「ですが、お水をやり過ぎてもいけませんからね。気を付けてください」


 そう後ろから声をかけてきたのは、侍女のデリアである。

 彼女も結構いい歳になってしまったと思うのだが、そう感じさせない程若々しく美しいのだ。

 彼女には、ピリフィルの教育係もやってもらっている。

 おかげで、ピリフィルも元気に育ってくれている。


「あら、デリア。今日は注意しないのね」


 それは、私が二人目を妊娠しているのに、出歩いていることを注意しないということだ。


「はぁ……もう諦めました。ピリフィル様も元気に生まれてきたことですし、二人目もきっと元気に生まれてくるでしょう」


 もう私のお腹も大きくなってきている。

 出産の予定はそろそろである。


「ねぇ、ピリフィルは弟と妹、どっちがいい?」

「うーんとね。弟の方がいいな!」


 きっとそれはなんとなく言ったことなのだろう。

 自分が女の子だから、次は男の子がいいということである。


「私も男の子がいいわ」


 だけど、私もそう考えていた。

 それは単純に、王位の継承権があるのが男の子だからである。

 妾のオージェリンの子も女の子であった。

 このまま男の子が生まれないなんて言う事はないだろうけど、早く生んでしまって安心したいのかもしれない。


「お母様と私!一緒だね!」


 ピリフィルはとても嬉しそうに、満面の笑みを浮かべた。


「あら、私も一緒ですよ。男の子がいいです」


 そこに、デリアも加わる。


「じゃあ3人で一緒だね!」


 ピリフィルが私とデリアの手を取る。

 それに合わせて、私はデリアの手を取り、3人で仲良く円を描いて、楽しく笑いあったのだった。

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