第28話 過去

リーノア

「あそこにお宿を立てたのは私のお母さんなんです。

お母さんはとても優しくて、明るい人でした。

なので、お宿もとても賑やかで、もっと活気に溢れていました。


でも、ある時お母さんは亡くなってしまいました。




お母さんと二人家族だった私は、独りぼっちになってしまいました。

それにこの時はまだ幼く、1人で生きていくことすら難しいのに、お宿を経営することはとてもできませんでした。


それから大体10年ぐらい、色々ありましたがなんとか私は生きることができました。


でもその頃には既に、お宿に近づく人は誰一人としていませんでした。


仕方のない事なんですけどね。


ただ、私にはやることが無かった。

お母さんがいなくなってから、家の外に出る事なんてなかったので。

だから、お母さんの真似をし続けました。

例え誰の役に立たなくても、誰も来なくても、やり続けました。


私も働きながら、どうせ誰もこない、って何度も思いました。

それどころか、誰か来るなんて考えてもいませんでした。

ただただ、自分の日課のようにしてやり続けました。

毎日をそれに充てました。


そしたら、貴方が私を見つけてくれました。


私は貴方にとても助けられた。


だから今度は、何かの役に立ちたいと思ってここに来ました。」


「・・・・・・君も苦労、してるんだなぁ。」


リーノア

「あはは!

確かにそうかもしれませんが、今となっては良い思い出ですよ!

もし途中で辞めたら、貴方に会えなかった。

今は、頑張って本当によかったなって心の底から思えます!」


「・・・」


なんて返したらいいのだろうか。

言葉が見つからない。


リーノア

「今度は私から質問させてもらいますね!

この一か月ぐらいの間、どこにいたんですか?

どれだけ本気で探しても、気配一つ見つけられないとは驚きましたよ!」


「最初は魔人の長の墓の近くの村に数日お世話になって、そのあとは、魔女といたよ。」


リーノア

「ま、魔女ですか⁉

え、っということは、魔女の霧の中にいたってことですか?」


「うん。」


リーノア

「どうりで全く見つけられない訳ですよ!

本気で探したんですからね!もう!

で、魔女さんってどんな人なんですか?」


「どんな人・・・。

そもそも人なのかな、あれは。

なんか、まぁ、よくわからねえ奴だよ。」


リーノア

「ふむふむ、よくわからない・・・ですか。

今からまた魔女さんの元へ向かうのですか?」


「そうだよ。

ここ一カ月は住み込みで鍛錬してるから。」


リーノア

「た、鍛錬してるんですか?

魔女と?」


「そうだよ。

まぁ、あれは鍛錬っていうか、一方的にボコられるだけだけど。」


リーノア

「えぇ、嫌だなぁ、それ。」


「ははは。

もう慣れちゃったよ。」


とかなんとか話しながら、魔女の元へ向かった。


大事なことを思い出したのは、この時だ。


あ、、、ちょっと待ってくれよ。

これ、マズいんじゃねえの。

大事なものは作ったらダメだって、

そうしないと、また人を殺す羽目になる。





「大事なことを思い出した。

超大事なことだから、出来るだけ早く帰るよ。」


リーノア

「え?

大事なことってなんですか?」


「後でちゃんと話すから!

今は急いで!」


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