第13話 頭痛

朝食を取って、墓のある方向へ向かった。

力を使ってもいいが、特に急ぐ必要もないから自分の足で行こうかなと思う。

地図を見る限り、この先ずっと行ったとこに霧のかかった森がある。

そこが墓らしい。

別れ際、女王は俺に


「霧のかかった森は気をつけて。

あの森には魔女が住んでいるから。」


と忠告してきた。

マジな顔で魔女を語る奴は初めて見た。

そりゃあ当たり前だけども。


最悪、その霧を迂回することも出来なくはない。

だからとりあえず墓の方向へ進む。


山を2つ超える必要があるっぽいが、まともに歩くとなると1週間ぐらいかかりそうだ。

片道にそんな時間かけてちゃあ飢え死にしかねない。


結局、ところどころ力を使いながら進むことにした。


ここに来る前の俺は、大学に行ってないただの引きこもりだった。

昼夜逆転はもちのろん。

部屋を出るのはトイレの時、家を出るのはコンビニに行く時、そういう生活だった。

だから、こうやって太陽の下を歩くなんてとても新鮮なことだ。


なんだかんだでようやく、ゆっくり出来るようになったから、考え事でもしながら歩いていこうと思う。


今更ながら、俺がこうやって旅をすることになるなんて思いもしなかった。

まあそもそも転生すら予想外だが。

この先どうしようか。

旅人として生きていくのか?

いや、それは嫌だな、なんか。

だからといってやりたいこともないからなぁ。

数年前に転生系のアニメを見たときは、勇者にでもなりたいとか思っていたけど、この世界にもあるのだろうか。

あったとして、俺は勇者になりたいか・・・?

そういえば、俺この世界のこと全然知らないなぁ。

まずはその辺からはじめてみるか。


この世界を知るっていったって、どうやって?


目で理解できる範囲には限りがある。

やっぱり誰かと接触して、そいつから聞き出すのが妥当だろうか。

墓に行くとすると、その近くの街とかがあれば良いが・・・。

地図には山を1つ超えた先に街が記されている。

でも、許可証が無いんだよなあ。

入ってしまえば許可証は必要無くな・・・らないかも。

宿をどうやって取る。

金さえあれば行けるんだろうか・・・。

許可証が必要ならどうしたものか。


まあ、金すらないし、リーノアさんが入れてくれたレジャーシートがあるから寝床には正直困らない。


ただ、このまま行けば一週間で食料は尽きるだろう。

そっちのほうが問題な気がする。


どちらにせよ、近いうちに人との接触は取ることになるだろう。


魔人の長ってどんなやつだったんだろうか。


戦いながらほかのこと考えるって、しかも数的不利でしょ?それもめちゃくちゃに。

それでいて後世を生きる生命のためにって・・・。

絶対今の俺より強いだろうなぁ。


・・・俺がもしそれだけ強かったら、人を殺さないで済んだのかな。

いやぁ。

異世界に来て、この力をもらって最初にしたことが殺人か・・・。

ほんと、・・・、


「んッ、グぁあァッ!」


あぁぁぁぁああぁ!!

脳が焼けそうだ!

何だ!何が起きた!


「ッはァ、ハァ、ハァッ・・・」


な、何だったんだ今のは、、

頭痛か?いやこんなの体験したことないぞ。

頭痛なんて比になるものじゃない。

頭が溶けたかと思ったし、脳が焼け爛れたかとも思った。

さ、幸いにも目立ったケガとかはなさそうだ。

またいつか起きたらと思うとゾッとするな。

食中毒か?

だとしたらさっき食べた朝食だろうが、腐ったりしそうなものは持ってないぞ。


「しかし、一瞬で引いたなぁ。」


そう、たった数秒のことだった。

その短さが余計に不安を煽ってくるのだが・・・。


病気は勘弁してほしいなぁ。

とは言っても、これを今どうこうできるようなことはない。

人里へ向かえば病院とかもあるかもな。


今日中にどこかしらの街に行こう。

精神的にも、何日も歩き続けるのは流石にキツい。





墓の方向へ進んでいたが、日が沈む前になんとか、途中で小さな町を見つけられた。

話をして、そこにとりあえず一晩は泊めてくれることになった。

地図には載っていない町だが、村長曰く、ここみたいな小さな町は地図にすら載せてもらえないんだとか。

でも、町の人は物静かだが優しいひとばかりだ。食料も分けてくれた。


長居する気もないから、明日ここを出ようと思っている。

ついに魔人の長とご対面ってとこだ。


魔女の霧についてはみんなあまり知らないと言っていたが、いくつかわかったことがある。

・範囲は限られるが、霧の位置が変わったりすること

・ずっとあるわけでは無いこと

(霧がかかっていない時もある)

・霧の中に入っても魔女と遭遇しないこともある

(遭遇することの方が少ないらしい)


最近は霧がかかっていないことの方が多いらしい。

霧がかかってなかったら、突っ切っていこうと思う。

正直魔女とかに負ける気がしない。


まぁそれはそれ。

今日は本当に歩きまくった。

今日は今日で、とりあえず休もう。




















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