第14話 墓

「ふわぁ。よく寝たなぁ。」

今日も快晴!

さて、さっさと腹ごしらえも済ませて墓へ向かいますか!


荷物は置いて行くことにした。

村の人がそう提案してくれた。

確かにここからそう遠くないし、身軽な方がもし魔女と戦う羽目になってもやりやすい。




「それじゃあ、行ってきます!」


雲一つない空の下、俺はやる気に満ちていた。


今から霧の中に入る。

といっても、見た限り霧は見当たらない。

恐らく今日は霧が出ないと思う。快晴だし。


地面の土質が霧の中と外で違うように感じる。

そりゃあ、霧がよくかかっているところの土はぬかるんでいるか。


歩く

進む

どんどん歩く

奥へ

奥へ

奥へ



気が付くとそこには、野原が広がっていた。


「ここが、魔人の長の墓・・・?」


見渡しても、遠く彼方にある木しか見当たらない。

なにかに惹かれるように、その木へ重い足を運びだした。

ここはどこなんだろうか。


木の後ろに、人の容姿をした、しかして人とは全く異なる雰囲気を放つ異質な存在があった。


魔女

「おや、客人なんて珍しいねぇ。」


「そうか。

ところでここはどこなんだ?

俺は魔人の長の墓に行きたいんだが。」


魔女

「まずは名乗りたまえよ、君。

君が勝手に私の場所に入ってきたんだろう?

それぐらいの礼儀はわきまえろ。」


「俺の名前は■■■だ。」


魔女

「変わった名前をしているね。」


「それは関係ないだろう。」


魔女

「ああ、そうだとも。

私のことだが、おそらく少し知っているな?」


「魔女、だろ?」


魔女

「ご名答。

それで、君は何をしに来たんだい」


「魔人の長の墓に用があってきた。」


魔女

「・・・ふむ、その用とは何のことだい?」


「いや、特にこれといってすることはないんだが。

まあ俺、暇なんだよ。色々あって。

んで、やることないからかの有名なあの長のお墓にでも行こうかなって。」


魔女

「・・・悪いが、どうやら君はまだここを通るに値しないみたいだ。」


「は?

何だよ、それ知らねえよ。

お前に止めれられる理由ねえんだけど。」


魔女

「ごもっともだね。

でも、今の君には無理だ。耐えられないだろう。」


「力ずくでもって言ったら?」


魔女

「私に君は止められないだろうね。

でもこれは君のために言うよ。

今行くべきじゃない。」


「それは俺が決めるんだよ。」


魔女の言葉を払いのけて、ただひたすらに前へと進む。


気が付いたころには、野原はなくなっていた。


魔女

「なるほどね。

本当に君の言うとおりだよ、全く。」




この世の終わりのような光景だ。

見た限りこのあたり一帯に生命力を感じない。

いや、感じないというよりは「無い」という言葉がふさわしい。

視覚的にも、感覚的にも。


ここにも一本の木が立っている。

とはいえ葉はもちろん無く、ただあるだけの置き物にしか見えないが。

木の近くから声がする。


???「来たか。」


「どちら様で?」


???「お前らの言葉じゃ、魔人の長ってやつだよ。」


「・・・ん?」


魔人の長

「そりゃあ、伝説上の存在が、しかも太古の存在がいきなり話しかけてきているんだから無理もない。」


「お、おう。」


魔人の長

「・・・ここへ何をしに来た。」


「いや、暇人なものでやることがないから先人のお墓でも訪ねようかなと。」


魔人の長

「・・・。

面白いことを言うな、お前は。

だがしかし、お前がここに来ることになるのはわかっていた。」


「あぁ、あの魔女?」


魔人の長

「まぁ、そんなところだ。

暇を持て余しているそうだな。

どうだ、すこしぐらい俺の話し相手になってみてはくれんか。」


「別に構わないが、話なんだな。

てっきり拳で語るとかそっちかと思ったのに。」


魔人の長

「その話だよ、君。

前述の通り、君がここに来ることは事前に知らされていた。

それ故に今は亡き俺が、こうやって今お前と対話ができている。

また、これからする話から決して逃げてはならん。

なぜなら、これが見るべき過去であり、訪れる未来だからだ。

たとえどれだけ過酷でも、お前にはそれに立ち向かう義務がある。

良いな?」


「あ、あぁ。」


魔人の長

「・・・。

お前まさか、魔女の忠告を無視してきてたりしないよな。」


「え、やっぱりあれ聞いといた方が良かった感じ?」


魔人の長

「もうどちらでもよい。

今この場にいる時点でその意味はなくなった。

・・・これより先は、お前の過去と未来の話だ。

心しろ。」


急ごしらえの覚悟をできるだけ全力で構えて進む。



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