第五章 生きる為の戦い開始
第44話 セカンドオピニオン
それから少しした頃、へっぽこはEらい先生の診察時にセカンドオピニオンを受けてみたいとのお願いを切り出した。セカンドオピニオンを受けるに当たっては、それまでの経過などや画像診断の結果のコピーを貰って、紹介状を書いて貰わないといけない。その画像診断などのコピーにも紹介状にも結構なお金がかかる。そして、セカンドオピニオンは自費診療。つまり高い。だから、勿論前もってダンさんを説得していた。最初ダンさんは病院を変えることに関して大反対だった。自宅から自転車圏内の総合病院。手術も受けてるし、危ない所を助けて貰った病院だ。変えるなんてとんでもない!という勢いだった。でもセカンドオピニオンは別に病院を変えるわけではなく、担当医とはまた別の専門性を持った先生に意見を聞くだけで、実際の診療は行なわない。経過観察と診察は今まで通りで大丈夫とわかったら、やっと納得してくれた。
セカンドオピニオンに行く先は先の書籍を書いたM先生のクリニックと決めていた。同じ市内だから自宅の最寄り駅からは電車で30分。その当時の相談料金は、初診料と相談料(時間制)で合わせて一万と少しだっただろうか。(今はもう少し上がってるみたい)
とにかく、Eらい先生に、そのM先生への紹介状を書いて貰い、画像診断のコピーを貰う。それで合わせて一万円くらい。これらは保険診療外なので自費。病気は何かとお金がかかる。それでも日本は保険内診療は基本3割負担にしてくれてるのだから助かる。のだが、それ故の問題もあるのだろう。「病気にならない」「自分で自分の健康を維持する」という気概が欧米に比べて弱いとどこかで読んだ。確かにそういう面は少なからずあると思う。私自身も含めて。
さて、目的地は神社の近くのクリニック。あー、参拝していきたいなぁと思いながら、先を急ぐダンさんに必死で付いて行く。基本、5分前行動を目指すへっぽこだけど、ダンさんは30分前行動の人。不測の事態があっても対応出来るからだと言うのだが、そんなことほぼない。よって、いつもかなり待つことになる。待つ場所がある時はいいのだが、無い時は寒風吹き荒れる中で立ち尽くすことに。でも、まぁ今回は病院なので待合室があるだろうと踏んでいく。それでもやはり予約の40分前に着いてしまった。そしたら、クリニックのドアが固く閉まってる。そりゃそうだ。予約時間は診療開始時間ピッタリだったのだから。
あーあ、やっぱり参拝してから来れば良かった。と残念に思いつつ、ドアの前で暫し呆けるが、「化粧室はこちら」の貼り紙を見て、へっぽこはダンさんを置いて「行ってきまーす」とそちらに向かった。「危ないよ、大丈夫?」と付いてこようとするダンさんにヒラヒラと手を振り、杖をつきつき、ヨロヨロと奥のドアに向かう。お手洗いの中には健康グッズらしきものの紹介チラシがあれこれ貼ってあって、それを興味深く読んでから外に出る。するとダンさんが待ち構えていた。かなりの心配症なのだ。とても有難いのだけど、心配し過ぎて病気になられたら、とそっちの方が困る。というか、既にそれでウツのお薬飲んでるのに。性格はなかなか変わらない。
気付けばクリニックのドアが開いていた。
「お早かったですね」
感じの良い女性に声をかけられ、早く来ちゃってすみませーんと頭を下げる。待合室に通して貰い、へっぽこはソファに腰掛けて辺りを見回した。あたたかなオレンジを基調にした、こぢんまりしたクリニック。棚には本や雑誌がたくさん並んでいる。画像診断のデータが入ったCDなどを手に受付に向かったダンさんを横目で見つつ、本棚の前に立つ。健康本ばっかりだ。それらのタイトルを眺めていたら、エドガーケイシーという文字が目に留まった。名前は知ってた。予言とかで検索したり、それ系の本を読んだりすると出て来る名前。でも何故予言の人が健康本コーナーに?って思った。タイトルをズラズラ〜と眺めている内に、壁の貼り紙で、このクリニックの下の階ではパワーストーンなどを取り扱うお店があることを知る。
女性はパワーストーン好きが多いように思うが、御多分に洩れず、へっぽこも働いてた時は結構好きだったし、今も一応ブレスレットは持ってる。そして、買うつもりはなくても見てみたいというウィンドーショッピング大好きなサガはしっかり持ってる。
——終わったら、何とかダンさんを引っ張って行こう!
何をしに来たのか、すっかり忘れてウキウキしているへっぽこ。
「へのさーん、どうぞー」
——あ、呼ばれちゃった。
まだ本棚を眺めてたいのになぁ、と思いつつ呼ばれたので仕方なくヨロヨロとそちらに向かう。
「こんにちは」
わりに太い声。入った瞬間からじっと見つめられる。
それは著書を読んだ時に書いてあったから別に驚かなかった。
「歩き方や姿勢、何気ない動作、身体の歪み、癖など全て診て診断する」
よく分からないけどスゴイ!と思ってた単純へっぽこ。
——おお、見られてるよ。どうなん、どうなん?
ワクワクしながら先生の言葉を待つ。
先生はダンさんが渡してくれたらしき画像診断のCDをPCで読み込んで、それを黙ってじっと見ていた。
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