第11話

「ね~。早くお花見しよ~よ~。余計な横槍入ったせいでまだ楽しめてないんだけど~。」

ちょっと楽しいけど、やっぱりつまんない。だから、つい皆を急かしてしまう。

「そうですね、余計な横槍が入ったせいで、まだ楽しめていません。」

青月せいげつは私の言葉に同調してくれる。

いつだって青月せいげつは私の味方なんだぁ。

黒月こげつの眠気が吹っ飛んでくれて、僕は嬉しいけどね~。」

白月しげつはいつもと変わらないニコニコ顔で言う。

「私は白月しげつとの幸せな時間が邪魔されてとても気分が悪い。」

黒月こげつはめっちゃ不機嫌。

何故か紅月こうげつの方見ながら言っていたんだけど、なんでだろ。

「なんで俺の方を見んだよ。俺なんもしてねぇだろうが。」

紅月こうげつはその視線に反論する。

「まぁ~しょうがないよね!一番狙われてんのは紅月こうげつだし~。」

黒月こげつは何も言わなさそうだから、多分そうだろうなって思うことを、私が代わりに言っておく。

「そうですね。ですが、私達も様々な場所に顔が割れていますから、人のことは言えないんですよね。」

青月せいげつがまた同調してくれる。

でもちゃんと現実問題も指摘するのが、青月せいげつの癖。

紅月こうげつ青月せいげつの言葉を聞いて、不思議そうな顔をした。

なんでずっと一緒にいようなんて思ってんだろうなぁ~とかかな、多分。

「僕は承知の上で一緒にいるからね。君みたいな誠実な人が狙われてるなんて耐えられないから。」

誰も何も言わない中、白月しげつがそう言った。

誠実…誠実かぁ。まあ、確かにそうかも。

紅月こうげつは誠実。紅月こうげつと関わったことのある人は誰もが軽薄で嘘ばかりつき、悪知恵ばかり働かせている奴だと言うと思うけど。

でも、深く関わっていくうちに、そうじゃないって分かった。

紅月こうげつは、なんか、違うんだよ。私とは。

まっさらな誠実さ。黒の中で、外側だけそれらしく塗りたくって、内側は真っ白で、キャンバスの白に真っ黒な絵の具を雑多に塗りたくった感じ。

その真っ黒な絵の具を綺麗に剝がしていったら、綺麗な白が出てくるの。

「まあ、別に文句を言いたいわけではない。私だって承知の上だ。白月しげつだけを危険な場所に連れられるわけにもいかないしな。」

黒月こげつは、なんだかんだで優しい言葉をかける。

そしてそのまま沈黙。

………………つまんない!!!

「も~!なんでそんなどんよりになっちゃうのさっ!早くお花見しよ?楽しんじゃえば、全部どーでもよくなるんだってさ!ね⁉」

思わず叫びながら、踊りだす。それに青月せいげつが寄り添い、一緒に踊ってくれる。そして歌うように喋る。

「楽しめばいいと黄月おうげつさんが言っているのですから、楽しめばよいのです。黄月おうげつさんは楽しむプロですから。」

「そうだよ~♪」

そうそう、こういう楽しい雰囲気が私は好きなんだよ。

青月せいげつと笑って、皆笑って、そうするのが好き。

そして白月しげつ黒月こげつも踊りだす。

「楽しいって良いよね~♪人生楽しんだもん勝ち、な~んて、よく言ったものだよ。まさにその通りでさ。」

白月しげつは独り言みたいに呟く。

「楽しさはなかなか感じられるものではないからこそ、楽しいと感じるのだろうな。少なくとも、私はそう思っているが。」

黒月こげつも呟くように、歌うように言った。

黒月こげつ良いこと言うね。」

「ありがとう。」

無音のホールに、四人の踊る足音だけが響いた。



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