彼の名はテッド

カラサエラ

第一章 セオドア・ロバート・バンディ

かのコリン・ウィルソンは「テッド・バンディ」のことを次のように語っている。


「バンディは殺人者としては異例に属する。法廷に彼が現われた時、そこで彼を初めて見た者は我が眼を疑った。何かとんでもない間違いが起こっているのではないか。それほどにバンディは犯罪とは無縁の好青年に見えた。しかし、セックス殺人において、彼が何か記録のようなものを作ったことは確かである」


セオドア・ロバート・バンディ、通称テッド・バンディは1946年11月24日、婚約をしていない母親の私生児として生を受けた。父親の素性は未だわからない。


母親の名はルイーズ・コーウェル


彼女の家筋のコーウェル家は厳格なキリスト教の戒律と敬虔な信仰生活を重視したメソジスト派であった。そのため彼女がどこの誰だかわからないような男との子供を産むことなど許されなかった。


しかし彼女は信仰上、堕胎することはできず

こうして招かれざる客として生まれたテッドは、祖父母の子として育てられ、母親は年の離れた姉として共に生活をしていた。


祖父、彼にとっては父親のサム・コーウェルは気性の激しい人物であった。家庭内暴力も絶えなかったが、テッドにだけは虐待されることなく可愛がられた。


テッドもそんな彼を「父」として愛していたが、やがて現実を知ることとなった。


「お前、父なし子なんだろ」


テッドが10歳になったくらいの頃、従兄弟からそう言われた。


テッドはそんなことない、と反論したが

従兄弟から出生証明書を見せつけられ理解した。


よくよく思い返せばおかしな家族だった。テッドが4歳の頃“姉”はジョン・バンディという男と結婚したが、なぜかテッドの姓までバンディになった。


こうした出生をめぐったトラブルが明らかにテッドを暗い影に落としたことは確かだった。


そして彼は自分が私生児であるということを憎んだ。母がそのことを隠していたことに怒りを感じていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼の名はテッド カラサエラ @3cutter_4cats

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ