第10話 釈迦(妃達)の掌! (5)
「あやつは、あの子を目に入れて痛くない程可愛がっていたから致し方がない」と。
西太后藍華様は、目尻に溜まる、自身の涙を指先で拭きつつ、『アハ!』と微笑みつつ東太后シルフィー様へと告げれば。
「……本当にあやつだけは、何処に行ったのやら……。いつもフラフラと何処かに行きよって」と。
何処かの誰かさん?
そう、この国の、七柱神の戦妃の主様こと、皇帝ケイン様が何処に行ったものやらと、苦笑いを浮かべつつ呟くから。
「今頃馬小屋にいるのでは?」と。
東太后シルフィー様が、にへらと笑いつつ、呆れ声で呟けば。
「そうかも知れぬなぁ」と。
西太后藍華様は、先ほどまで鳴いた烏がもう笑った、ではいが?
彼女はケラケラと笑いながら東太后シルフィー様へと言葉を返し。
「後で厩の爺のところにいって、あやつの服を回収しにいかねばならぬな?」とも呟くから。
「ええ、そうですね。後でわらわが厩へといって、爺から陛下の衣服を回収してきますね」と。
東太后シルフィー様はプンプンと、自身の頬をまた可愛く膨らませつつ、西太后藍華様へと言葉を返すものだから。
「ああ、そうしてくれシルフィーさん……。朕は、もう少ししたら、自室に戻りお昼寝をしようと思うから。後は全部シルフィーさんにまかせるよ」と。
西太后藍華様は、皇帝陛下の悪態振りに対して不貞腐れている東太后シルフィー様の様子が、余りにも可笑しいから、彼女は笑うのを辞めることもなく嘆願をする。
だから東太后シルフィー様は更に不貞腐れた顔と声音で。
「はいはい」と。
西太后藍華様へと了承したと告げたのだった。
◇◇◇
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