第6話 クリームコロッケ

ゴールデンウィーク明け。

飯田は出張で北の方にきていた。


飯田の住んでいる地域は暖かく半袖で過ごしても問題がないがこちらの方は肌寒く夜と春の寒暖差が激しい


暑ければ冷たいものが食べたくなるのだが、本日は寒いので何かあたたかいものが食べたいところだ


さて何を食べようかと考えていると一緒に出張に来ていた同僚が

「飯田さん、俺この出張中にここでしか食べられないクリームコロッケに出会ったんです」

「ほう。それは興味深いな」


ここでしか食べられないクリームコロッケというのに興味が惹かれた飯田はもっとよく聞こうと話を催促する


「実は昨日居酒屋に行った際に店員さんにすすめられて注文したんですけどね、食べた瞬間に今まで味わったことのない味でびっくりしたんです」

「へぇ、どんな感じだったんです?」


今まで晩ご飯は定食屋で済ませてきたが居酒屋は盲点だった

明後日には帰ってしまうし今日の夜あたりにでも行ってみるかと思いながら同僚の話をさらにきく


「どんな感じですか?…うーん…具沢山って感じなのにクリーミーで、シチューをそのままあげちゃったみたいな感じですかね?」


なんだそれは?

クリームコロッケといえば1番先に思いつくのはカニクリームコロッケやコーンを想像していたので、それ以外の具が入っていると?

俄然興味がそそられた飯田である


「とにかく飯田さんも食べてみればわかりますよ。せっかくですから飯田さんも今夜一杯どうですか?」

「そうですね。ぜひご一緒しましょう」


あまり酒は飲めないがクリームコロッケに興味がひかれる

飯田の舌はもうクリームコロッケの口になっているが昼食がまだだったことに気づき


「まずは昼食ですね」

「そうですね」

2人して笑った


昼食は簡単にすませて午後の仕事へと戻る

仕事も終盤に差し掛かっているので最近は書類仕事が多い

あっちからきた書類とこっちの書類に齟齬がないか確認していく

そして最後の一枚をチェックしてその日の仕事は終わった


「やっと終わりましたね」

「お疲れ様です。今日の仕事は一段と長かったですね」

「俺らがいるのもあと二日ですし、ラストスパートと思って詰め込んできているみたいですよ」

「…明日も大変になりそうですね」


支部の人たちは飯田達がいるうちに面倒な仕事はすべてやってしまおうと躍起になっているらしい

意気込みは素晴らしいのだが、俺たちがいなくても躍起になってほしいものだ


「さて、飯田さん!早速飲みに行きましょうか!」

「ええ!行きましょう」


飯田は今日これを一番楽しみに仕事をしてきたのだ

そして2人は同僚オススメの居酒屋に足を運んだ


「あら、お客さん今日も来てくれたんだね」

「ここのクリームコロッケが美味しくて是非食べてほしい人がいたから連れてきちゃいました」

「ありがとね」


そう言って席に案内してくれる女将。

「ご注文はいかがなさいます?」

「俺ハイボール。飯田さんはどうします?」

「じゃあ、俺もハイボールで」

「あいよ!ハイボール2つとクリームコロッケ2つね」


それからいくつか注文していく

「クリームコロッケは揚げるのに時間がかかるので最初に注文しておくと中判くらいででてくるんですよ」

「出てくるのが楽しみですね」


ハイボールがすぐに運ばれてきて、それじゃあ乾杯しましょうか

「お疲れ様です」

「お疲れ様です」


カツンとジョッキを合わせる

そのままゴクゴクと喉を潤し、クリームコロッケが来るまでテーブルに届いた枝豆や冷奴を食べながら待つ

話はこの地方に来てどうだったらしゃべっていると


「お待たせしました!こちらがクリームコロッケになります!」

目の前に置かれたのはホカホカと湯気を立てる大きなクリームコロッケだった。

「おおー美味そう」

思わず声が出てしまう。

女将はそのまままま伝票を置いて去って行った

「さて、食べるか……いただきまーす!」


箸で掴んで一口食べてみる。サクッとした衣から溢れ出す肉汁たっぷりなクリームソース、ゴロゴロとした野菜や肉が具 が絡み合い絶妙な味わいだ。これはいくらでも食べられそうだ。


「どうですか?飯田さん」

「うまいです。最高ですよこれ!」

俺はつい興奮して答えてしまった。そんな俺を見て佐藤さんはクスリと笑った


「気に入ってくれてよかったです。飯田さんいつもすぐに帰ってしまうから、出張にいるときに一度は一緒に飲みに行きたかったんです」


と真剣な顔をして言った

飯田は自分でも人付き合いは悪い方だとは思っているが苦笑いをした


「俺みたいなやつと飲んでも楽しくないでしょ」

「そんなことないですよ。確かに飯田さんは寡黙ですけど、俺今日飯田さんとの飲みすごく楽しみにしてたんですよ」

「ありがとう」

「また誘ってもいいですか?」

「ええ、今度は俺からも誘いますよ」


クリームコロッケ美味しかったし、同僚との会話も楽しかった

こうして本社に帰っても飲みに行く約束をし、ホテルへと帰った

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る