第126話 到着

 馬車の中でリナとよく話し合った。カナロアの本名を伝えるとやはり身内だった。カナロアが曾祖父だと言う。そして俺がそのカナロアの遺伝子的な父親だと伝えた。カナロアから聞かされた事をそのまま伝える形になるのだが、俺はこの世界に召喚され、召喚される数日前に関係を持った女性が身籠っていて、その子供がカナロアである。また、カナロアがこの国の初代皇帝の父親であり、時間軸がおかしいと告げた。


 俺は帰れなかった、少なく共カナロアが日本にいる時代には。


 説明後リナの俺に対する想いが一気に消えていくのが分かった。男性として求められていたのだが、血縁者だと分かると理性が働いたようである。俺も流石に自分の子孫とはっきりわかる者を抱く事には抵抗がある。やはり近親相姦の愚は避けたいとブレーキが掛かった。


 リナと俺の場合は俺の血は1/10いや、もっと薄いのだろうが、既に世代交代していて血縁的にもほぼ他人に近いのだが、それでも自分の子孫である事が判明してしまった以上子をなす事はできない。もしリナを抱いてしまい更に子ができた場合、その子にどういう影響が出るか分からないのだ。お互いそれが理解できたから距離を置かなければとなったのである。


 ただ、リナがもし帰れない場合は娶って下さいというので俺は頷いていた。


 ただ全員欠けることなくホームに帰れ無いと言うミリアの言葉は、おそらくリナが向こうに帰る事を指しているのだろうと半ば確信していた。


 そして街に入り、イリアとミリアの屋敷跡に向かう。

 やはりそこに有った。


 ゲートに着く前にリナを抱きしめ、熱いキスを交わす。熱い抱擁の後リナが思い出をありがとうございますと言い、検査用と称して俺の髪の毛を数本袋に入れてからポケットに入れる。


 リナには地球にない貴重品になるミスリルの武器をある程度渡し、ペンダントや装飾品をミスリルやオリハルコン製と入れ替えさせた。売れば不自由ない生活を送れるだろうと。


 そしてリナと別れを済ませてゲートに向かう。


 ゲートは兵士に囲まれていて、厳戒態勢だ。


 近付くと誰何され、エルザが対応してくれた。


「我は第5王女のエルザである。これは我が夫である勇者友安とその一行である。勇者としてゲートを閉じに来た。通されよ」


「お久し振りでございますエルザ様。~中略~ 相変わらずお美しい。お待ちしておりました。こちらへ」


 エルザを見知っている者がいて話が早かった。


 ゲート前に着くと妻達とゲートに入る準備をする。

 予め作った白い旗を出してからゲートに向かう。先頭は俺だ。スマホを出してスマホのカメラアプリをセルフタイマーにて出し、ゲートからスマホを出すとシャッターが切られると直ぐに引っ込めた。写真を確認すると近くには誰もいない。

 白旗を先に出してから俺はゲートに入る。妻達も少し後から続く。万が一俺がゲートの先に残る場合、妻達も残ると言うからだ。


 俺はゲート前にテーブルと椅子を並べて対話を促す。


 収納にある以前確保した端末を出す。すると間髪入れず通信が入った。

 リナに操作を教えられ、応答する。


「結城か?今まで何をしていた?」


「あなたは誰ですか?残念ながらこの端末を持っていた方は亡くなった。可能なら政府高官から連絡が欲しい。私はゲートから来た。だが日本人だ。ここは日本で間違いないか?また1人の日本人女性を保護している。それと今は西暦何年の何月何日だ?」


 相手は驚いていた。

 相手は確認したいと画像ありで通信してきて、こちらの状況を確認していた。右手をあげてグーパーをと言われ実施すると本物と確認できたと。


 テレビ中継されていてそれから確認したらしい。通信を待って欲しいと言われた。


 端末の時計からリナの方で1年半経過していると言う。


 【日本人だ。代表者と話しをしたいから来てくれ!】


 紙に書いてミリアに掲げて貰った。

 リナに端末を渡し、両親に電話をさせた。


 実は先の通信相手は信用出来ない。前回攻めて来たのは私兵だったからだ。ただ、ライブ配信されているのが分かったから、別の手を試している。


 程なくしてリナは両親と連絡がついたようだ。話の途中だったが一旦通信を終えさせた。

 それは1台のタイヤのない車?が向かって来るのが見えたからであった。

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