第125話 おっさんは

 はっきり言って臭かった。酒臭いのだ。30代のドワーフだ。


「なあ、召喚しといて何だけどあんた誰?しかし酒くせーな!」


「何を言っとるか小僧。儂は儂じゃ。こんなの臭いのうちに入らんぞ」


 ミザリアがまさかと震えていた。


「うーん。なんとなくゼツエイの爺さんに似ていなくはないが、あのおっさんはこんなに若くないぞ。あんた、親戚か?」


「ばかたれ。本人に決まっとるだろう」


 ミザリアが泣きながら抱きついていた。


 ミザリアの頭を優しく撫でていたが、暫くしてミザリアが落ち着いてから話をしだした。


 前後の記憶が曖昧だったが、そこにいるのは間違いなくゼツエイだった。ゲートを閉めた後なんとか逃げ切り、山中にある誰かの別荘?でひっそりと暮らしていたが、ついに病に倒れ死んだと。


 どんな世界だったかはあまり覚えていないというが、着ている服は向こうで別荘に有ったのを拝借した物だった。


 服をよく見させてもらうと、

 タグにはメイドインジャパンとあり、ジーンズは有名メーカーのだった。つまりあのゲートは日本に繋がっていたのだ。

 はっとなり回収した武器を出すが武器からは分からなかったが、奴らが持っていた端末等はPONAMONACで、双眼鏡はNIKOSOとあった。


 ゼツエイは最盛期の35歳頃の体だと言っていた。


 俺が知っているゼツエイはあれでもかつての半分以下の力だと言っていた。衰えとは恐ろしいとぼやいていたな。


 ミザリアが余りにもゼツエイにべったりだったので、俺は機嫌が悪かった。嫉妬したのだ。


 そんな俺を見てミザリアが嬉しそうに言う。


「トト様にまた会わせてくれて感謝しますわ。それと、私の男性への愛は友安様のみよ。心配しないで。嫉妬している友安様は可愛らしいわね。うふふ」


 こんな感じで、いつまで経っても俺はミザリアの手のひらの上だ。またミリアもやはり同じく泣きながら抱きついていた。ただ、この未来は予知できなかったらしい。


 ミリアの俺に対する感謝が半端なかったが、驚いた事にゼツエイはこの美少女がミリアだとすぐに分かっていた。


 俺はやはり嫉妬していたが、ミザリアがそっと教えてくれた。ドワーフはドワーフ以外の女性には欲情しないそうだ。体を触っても男を触るのも女を触るのも同じ感覚だそうだ。基本的に他種族とは交わらない。交わりハーフが生まれるのはドワーフの女性が他種族にレイプされる以外ないそうだ。または幻影や薬物の影響下からドワーフ相手と思わせて交わらせているか。


 道中模擬戦を行い、ゼツエイの今の実力を確かめた。近接戦闘はあり得ない位強かった。カナロアとは大人と子供位実力差が違った。あくまで近接戦闘のみだが。あのカロアナがあっさりと組伏せられていた。ムネチカとは中々決着がつかず、互角だった。

 近接戦闘のスペシャリストが現れたので俺は純粋に魔法担当になりそうだった。


 順調に旅を進め、時折逃げてきた難民から話を聞いていたりしたが、ゲートの向こうからは、たまにしか現れず、どうやら様子見になっていたようだった。但し、時折誰かを攫っていたようだった。

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