第114話 絶対絶命

 俺は煙が立ち込める村に到着する少し前に馬車を降り、全力で駆けて行く。村の外側にガラの悪い連中が大勢いて、何人かが剣を振りかざしながらフランカを攻めあぐねている感じだったからだ。


 よく見ると燃えているは、村の外周の柵などであって、村にある建物は燃えていない感じだ。


 ただ、建物に矢が刺さっているような感じてはある。不思議だった。

 ムネチカやカナロアがいれば散らす事ができただろうにと思っていたが、イリヤとミリア、村人達の事を思い出す。


 ひょっとすると今攻めてきたばかりで、まずは村人の避難を優先し、村人達も巻き添えになる事を恐れたのではないかと思っていた。俺は盗賊の只中に飛び込んで行き、一気に倒していく。どうやら50人位が攻めてきているようだった。


 フランか1人で奴らと対峙している状態だった。つまり他のメンツは避難させているか、最初に奴らが裏方に来て、皆が陽動に引っ掛かってしまったか、どちらかなのだろうと俺の考えがまとまった。


 エルザには馬車の護衛と、万が一逃げた奴らがいたら捕えて貰うようにお願いをし、基本的には戦いに加わるなと言ってある。


 俺は一気に踏み込み、急襲した。

 殴り飛ばしたり、腹パンで気絶させていく。

 剣は刃を潰したなまくらを敢えて使った。能力やメインの剣は切れ味が余りにも有り過ぎ、体を両断し兼ねないからだ。


 フランカは多勢に無勢であり、村への侵入を防ぐのが精一杯で、何とか1人で食い止めていたようだ。


 しかし、後方から俺が仕掛けたらあっと言う間に均衡が破れ、瞬く間に制圧していった。


 取り急ぎ賊を奴隷にし、フランカに後を託して裏手へ回る。


 すると裏手が見えてきたのだが、驚いた事にカナロアがタイマンで押されている姿だった。


 正確にはカナロアの方が圧倒的に強い。しかし、巻き添え必須の能力の為、真価を発揮できず剣で戦っていた。

 それでもかなり強いのだが、小傷を負い、負けそうな勢いだ。首が切られそうな一撃が入る所だったので、俺は咄嗟に割り込み、カナロアを蹴って吹き飛ばした。


「大将同士の一騎打ちと行こうか。悪いが選手交代だ」


 相手は歴戦の戦士のようで、ガタイもかなり良い。


 しかし、今度はこちらが押し始め、圧倒して行く。

 段々小傷を負わせ、誰が見ても結果が明らかだった。

 そして30合位で剣を弾いた。

 俺は勝った!と確信し、剣を喉元に突きつけようとした。

 しかし、奴は急に転げたり奇抜な行動に出た。


 バク転や宙返りしながらこちらに来て、急に殴り掛かって来たが、俺はあっさり躱す。しかし、その時に背中がゾクっとして寒気がした。


 それは、フェイントだった。

 奴が右肩に触れたのだが、剣を振る事が出来なくなった。奴を蹴飛ばすと、あっさりと吹き飛ぶ。だが、俺はまともに立てなかった。バランスがおかしいのだ。


 ふと右腕を見ると、なんと肩から先がなかったのだが、不思議な事に痛みがなく、更に血も出ていない。

 奴の力なのだろうが、どう見てもやばい。


「くくく、驚いたようだな。もう勝ち目がないぞ。久し振りに切り札を出したがな。家来にしてやるから降伏しろ!それと兄貴を出せ!」


 俺は魔力を込めたファイヤーボールを展開する。本当は村に被害がでるからやりたくはなかったが、やらねば殺られる。


 奴の顔が引きつっていたが、俺も殺られる恐怖から、村の被害を考えず奴に特大のファイヤーボールを投射してやった。怖かった。恐ろしさからへたりこみ、失禁しそうになった位だったので、魔法については一切手加減をする余裕がなかったのであった。

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