第96話 手直し

 フランカが俺の腕の中、つまり腕枕で安らかな寝息を立てている。知り合ってから初めて女性だと知られまいと緊張せずに済んだ夜だったのだ。腕が痺れているが、人生初の腕枕だぜ!リア充爆発しろと唸っていたのに、リア充じゃないか!ぐははは。


 恐らく普段は睡眠が浅く、何かあれば直ぐに目を覚ます寝方をしていたはずだ。


 それと以前俺が寝ている時にキスをしたり、寝ぼけて抱き付いていたのは、やはりフランカで間違いなかった。


 今は恐らく久し振りに熟睡している感じだ。


 頬をつついても寝ているのだが、とても可愛い。

 腕が痺れてきたので腕を抜いても寝返りを打つだけだった。余程安心したのだろう。


 トイレに行き布団に潜ろうとしたがふと思い出し、机に座る。

 まだ朝食には少し早かったからだ。

 収納から女性用の服を、ムネチカとエルザ用に買ったのを手直しして、フランカが着られるように直している。


 親がオーダースーツの店を経営していて、裁縫は仕込まれていた!なんて事は無く、修行の島で手に入れたスキルに服作成系があり、難なくいけるだけだ。そのスキルからか、肌を重ねたフランカのサイズは靴から、スリーサイズ、服のサイズまで判る。


 きのうフランカにムネチカとエルザにプレゼントする服を選んで貰っていた。こちらの世界どころか、服のセンスが分からないから、フランカのセンス頼りだった。2人が新たな仲間になったが、特にエルザは半ば城から逃げ出すように離れたから、大事な物しか持っていない。幸い下着と肌着はガチャ用で買っていた物の中に、サイズが合うのが有ったが服が無かった。普段着と冒険者用を各々2着買ったから、1着ずつフランカ用に回す。昨日着ていた服や下着は面倒くさいので洗わずにそのまま袋へ入れ、フランカの処女服と記載してから収納にしまった。


 なので、フランカへ用意出来る服は2着と最低限の服になる。途中で買い足さないと。


 俺が服を直していると、いつの間にかフランカが斜め後ろからじっと見ていた。


 ふとフランカがどうしているか?と気になり、振り向いたらフランカの唇に唇が重なった。


 俺はビックリして椅子から転げ落ちた。


「申し訳ありません。驚かせてしまい」


 先を言わさずキスをした。


「駄目だぞ!そんな畏まったのじゃ。直ぐには無理だろうけど、もう俺達は夫婦なんだよ。起こしてしまったようだね。おはよう!奥様」


 フランカがくねくねしている。


「お、おはようございます。おししょ、じゃなく、旦那様!それより何をなさっておいでなのですか?」


 俺はフランカに下着を着せ、先程まで直していた服を着せた。あっ、自分で着て貰ったよ。


「うんうん似合っているし、ぴったりだね!」


「えっと、その、これは?」


「ほら、昨日一緒に買った服だよ。フランカの服はないじゃないか。だから手直しをしたんだ。今日の目的地で改めて買い足すし、彼女らのは取り敢えず1着ずつ有れば何とかなるからね。あと、悪いけど、昨日着ていたのは下着を含め、例のガチャの為に回収させて貰ったから」


 フランカは頷いたが、事態が分かり、泣いていた。


 今日は旅だ。だから冒険者の服に着替えないとだから、普段着を脱がせた。まだ時間が有ったから、もう1度布団に入り、いちゃいちゃしていた。流石にきのうの今日だから、抱き締めてまったりと胸を堪能する位だ。ち、違うんだ!再建した胸を触診し、異常がないか、張りが本来の状態か途中までは真面目にやっていたんだ。途中までは・・・


 コホン。ドアをノックされ、急いで冒険者用の服を着てドアを開ける。


 ミザリアが入ってきて、フランカにいくつか質問をしていた。


「友安様おはようございます。フランカさんの呪縛はちゃんと除去できたようですわね。今いるのはサキュバスの呪いから解放された、ただの女ですわ。まあ、生まれる子は女ならサキュバス、男ならヒューマンですけれども、少なくとも昨日のような状態にはもうならないはずですわ。それとフランカさん、第1夫人として、妻の1人となる事を歓迎しますわ。宜しくね。そしておめでとう!」


 そんな話の後、身支度をして食堂で朝食だ。既にミザリアが皆に顛末を説明をしてくれていたからか、誰も驚かなかった。実はフランカはエルザにだけは話しをしていた。旅の途中で彼女には隠せないと判断し、生理とかの相談をしていたそうだ。用を足す時の見張りが常にエルザで、妙に大をするなとは思っていた。イリア達がフランカを女扱いしていたのは、エルザから聞かされていたからだ。俺のみがその事実を知らなかったのだが、フランカ本人が話す迄は秘密事項となっており、その範囲で女として受け入れていたのだ。


 そして食事が終わり、本日の旅がスタートしたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る