第93話 フランカとのキス

 カナロアが宿に戻ってきたので、皆で宿の食堂で夕食を食べる事にした。

 カナロアは1口か2口つまむように食べただけで歌いに行った。吟遊詩人等が歌うような、そういうスペースがあるのだ。カナロアのパフォーマンスというか、歌はウケが良く、食堂全体が中々に盛り上がっていた。いつの間にか俺が教えたボビーコードウェルの歌を何曲か披露していたが、驚いた事に英語で歌っていた。


 そして映画トップガンで、トム・クルーズが教官を口説こうとした時の歌があるが、俺は引っ張られていき、一緒に歌わされた。何故かターゲットはフランカとエルザだ。カナロアに教えたのは誰だ?ムネチカか?何故お前が知っている?


 大いに盛り上がり、イリア達もフランカを女扱いしており楽しんでいた。フランカが酒を飲んでいる姿は初めて見たかも。まあ許そう。フランカは男とはいえ、今は女扱いだから。


 俺も機嫌が良かった。ふと誰かに押し倒され、俺の体は拘束されております。こら、どさくさに紛れてそんな所を触るな!ぶちゅーと強制的にキスをさせられていますが、相手は・・・ムネチカなのです。彼女も拘束されているが、嫌なら振り解く事はどうという事はないだろうに、酔っ払ったか?まあ、俺も嫌じゃない、むしろウエルカムだ。


 楽しい時間というのはあっという間に過ぎてしまい、半数以上が酔い潰れていたのもありお開きになった。俺はというと、フランカと肩を組みながら部屋に戻る。うん、楽しかった。


 俺は先に風呂に入った。

 サウナみたいなのがあり、魔力を注入するとスチームが吹き出し、風呂場は急速に真っ白となった。


 体を洗い終わって、湯船に入ろうとした時に扉が開いた。


「友安様失礼します。お背中を流しに来ました」


 珍しくというより、初めての事だ。普段男女問わず背中を流しあっていたが、フランカだけは誰とも一緒に風呂に入らなかったのだ。


 湯気ではっきり分からないが、どうやらちゃんと裸の付き合いをする気になったようだ。急にどうしたのだろうか?


 俺は皆としているように背中を洗い合う事にした。


「よし、背中を向いてくれ。俺から洗うよ」


 フランカは背中を俺に向けつつ、自分の前を洗っている。フランカの背中は華奢で、まるで女のそれだった。

 しかも肌が滑らかで肩も細い。

 それはともかく、ある意味嬉しくて丁寧に力強く洗い、お湯を掛けて石鹸を洗い流す。


「友安様ありがとうございます。では今度はわたくしが洗いますわ」


 そうして洗って貰ったが、ふと、あれっ?と思う。

 洗いますわと女言葉だったからだ。


 フランカが背中を流しており、2杯目を掛けようと湯船から湯を汲もうとした時に短く「きゃっ」と悲鳴が聞こえた。どうやら足を滑らせたようで、俺の背中に抱きつく形でフランカが倒れ込んできた。


「ご、ごめんなさい。足が滑りましたわ」


「大丈夫か?」


 違和感があった。ぷにっとしたのと、それとやはり女言葉だ。 まだ胸に変装道具を着けているのかな?


「はい。友安様がいらっしゃったので、わたくしは大丈夫ですが痛くなかったでしょうか?」


「俺は大丈夫だ」


 俺はフランカの方に向き合って、お湯を頭から掛け流してやる。


 するとフランカが急に俺にキスをして来たのだ。しかも舌を絡めての濃厚のだった。俺はまさかの出来事に固まってしまい、なすがままになっていた。物凄く心地良かったのだ。そして大事な所に手が当たり、俺はお尻の穴の危機を感じた。更に額から汗を感じ、一歩後ろに下がった。まずいまずいまずい!酔っているな?男にキスされたよ。ううう。


 後から聞いたが、これがサキュバスの儀式の1つで、サキュバスが忌み嫌われる所以であった。サキュバスが魅力の虜にする為だと言われているからであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る