第92話 フランカとデート

 今からフランカと一緒に買い物に行く事になった・・・何が悲しくて男とデートをせにゃあならんのだ!と唸りたいが我慢だ。少し話があるからと、他の者がいない時に話をする事になったから、一緒に買い物をする事になったんだ。勿論フランカは良い奴だよ。俺より顔が良いのが悔しいが。唯一の難点は男と言う事だよ。もし女だったら気分爽快だ。


 俺を好いてくれる女性達が一緒に行きたいと言っているのを断って、男と出掛けるのだ。フランカとパーティーに必要な物を買い物する為とは言え、普通に男の格好をしているのなら問題なかった。たまには男同士で出掛け、女に聞かせられない話をするのも良いだろう。しかし、今のフランカの格好は完全に女のそれなんだよな。

 しかも美女ときたもんだ。悔しいが男の俺から見てもフランカは美形なんだよな。俺が異世界人ではなかったら皆俺ではなく、フランカを恋人にしているよな。それに周りから見たらどう見てもデートだけど、男とデートなんて・・・まあ、仲間の為だ。付き合おう!


 フランカから今は1人の女の子として見て欲しいと言われたので、驚いた。一瞬はあ?となったが、確かに見た目は完全に女なんだよな。あれだ!いつも女装して先入をしたりしているから、女の所作を完全にしたり、誰が見ても違和感のないカップルに見られるようにする修業だな。そうなら多少は協力してやらないとな。手を繋ぐのは微妙だが、弟の手を繋ぐ?位の感覚でなら大丈夫だ。うん。弟になら大丈夫だ。大事な事だから2度言おう。


「まあ、その格好なら確かにかわいい女性だな。フランカ、お前まさか同性同士で愛し合う奴じゃないよな?」


「ありがとうございます。私は同性で愛し合うような事はしませんから安心してくださいね。師匠もそうでしょう?それと、私はハーフのサキュバスなんですよ」


「ふーん。まあ、ヒューマンじゃないのはなんと無く分かっていたけど、それがどうかしたのか?」


 サキュバスって雌の悪魔で、夜にいかがわしい事をするイメージだったけど、この世界では男もいるんだな。俺って知らない事が多いなー。ふむふむ。


「あれ?それだけですか?サキュバスですよ?」


「うーん?それだけ?と言われてもなあ。なあフランカ、俺が異世界から来ている事を忘れてやしないか?サキュバスってどんな種族なのか知らんぞ。まあ、俺の周りでピュアなヒューマンはエルザ位か?既にエルフのミザリアを妻にし、猫耳族を娶ろうというんだぜ。今更種族の違いなんて気にしないさ。ただ、エルザとは、そろそろお別れかな?」


 フランカが何故か泣き出した。なんでもずっと迫害を受けていた種族で、初めての相手を死別するまで生涯の伴侶とする制約を負わされた種族だとか。世間一般的に忌み嫌われている種族だとか。具体的な数字は言わなかったが、伴侶を決めなければならない期限まで、余り時間が残っていないと。伴侶が生きている限り他の者と性交が出来ないのだとか。ふむふむ。浮気のやりようがないと。よく分からないな。


 そういえばフランカとまともに話をするのは最近なかったし、師匠と言ってくるのも久し振りだな。最近避けられているのかなと思ったが、気の所為だったようだ。

 何故か腕を組んで歩くが、時折当る胸の感触が妙にリアルだ。聞いてみよう。


「なあ、その胸ってどうやっているんだ?なんか感触が妙にリアルでさ、詰め物が当たっているって感じじゃないんだよな」


「あー、イリアちゃんにまたおっぱい星人って言われますよ!ふふふ。何故でしょうね!きっと私の胸が膨らんで大きくなったんですよ!揉んでみますか?」


 冗談で躱されてしまったが、まあ、確かに今の見た目は超かわいい系の少しきりっとした美人さんだ。

 日頃のお礼もあるし、男同士のキスとかは全力で逃げるが、まあ腕を組む位は良いかなと店を回る。尤も買う物には色気がない。飼い葉や食糧、不足品の買い物だからね。


 寝具が売っていたので布団や毛布を大量に買い込んだ。夜営を少しでも楽にする為だ。


 フランカは俺が渡した髪留めを着けていた。悔しいが似合っていて、惚れそうだ。だが残念ながら男には惚れんぞ。まあ、俺よりイケメンなのは認めよう。くう。取止めのない話をしながら歩いていたが、いつのまにやら何処かの公園に来ていた。


 思わず抱き締める。


「きゃっ」


 まるで女の子の悲鳴だった。


「いつも嫌な役とかばかりで悪いな。助かっているよ。ありがとう!」


 思わず良い雰囲気でキスしようとしたが、寸前で思い出した。相手は女装をしたフランカだったなと。

 おでこにキスをしてごまかした。

 周りに人がいるから恋人の振りができただろう。


 どうみても完璧に女性で、女装をしている相手だとすっかり忘れてしまったのだ。動きも自然で女だ。


「フランカ、本当に女にしか見えないな。女だったら俺の妻にしたいよ」


「ふふふ。今キス仕掛ませんでしたか?」


「ははは。うん、女が目の前にいるとしか思えなくてさ。フランカ、お前の事は人としては好きだよ。本当に女だったら、既にプロポーズをしているさ」


「その言葉で十分です。さあ帰りましょう!」


 フランカの頭を撫で、皆の所に戻る。今日の宿はダブルが3部屋しか空きがなく、残りはシングルの部屋になった。部屋割りは俺が決めたというか、これしかないという内容だ。俺とフランカ、ツインズ、ミザリアとムネチカ、カナロアとエルザはシングルとなった。


 俺がミザリアと一緒ではないのは、フランカが夜に大事な話をしたいと言っていたからだ。それとカナロアからはある意味危険なニオイがするから、奴はシングルが良いだろうと。フランカは以前から自分には秘密があり、それについて変異の後に話すとしていたが、ついに話す事になり、先ずは俺にしか話せられないと深刻そうに言っていた。一応警戒だけはしておくか。BLの展開になるのだけはゴメンだからね。

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