第2章

第91話 新たな旅立ち

 俺達は王都をそっと抜け出す事に成功し、その後も順調に進んでいた。ただ、気になるのはフランカの様子が明らかにおかしいという事だ。


 出発して直ぐにフランカの体調不良に気が付いたのだが、それからは御者当番から外し、馬車の中で寝かせていた。顔が赤かったので額を触ると、かなりの熱が出ていたんだ。


 フランカに聞くと、ついに成人になったと言う。種族の特性で、成人になったその日にのみ熱が出るが、聞かされている事からは、昼過ぎには回復するだろうという。


 ただ、夕方になってその日に泊まる町に入ったら話があるので、少し時間をくれと言われた。珍しい事もあるが、取り敢えず一緒に買い物をしに行く事にした。


 てっきりヒューマンだと思っていたが、話し振りから違うらしい。種族に関して、特に誰も聞かなかったのだ。まあ、あなたはヒューマンですか?と聞くのも変だよね。ヒューマンに見えるヒューマン以外ってなんだろう?


 時折頭を冷やす為に手拭いを冷やしたのと替え、頭を冷やしている。


 何故か熱で苦しむフランカが艶めかしく、魅力的に感じた。変だと感じてはいた。実は双子の妹と入れ替わっているのか?と。俺は首を振った。単に女装をしているから女に見えるだけだ!と。まあ、フランカが女だったら妻の1人にしたいと思った事もある。既にミザリアとは事実婚だし、お子ちゃま2人も俺が成人と判断したら妻にする事を了承している。勿論ミザリアが仕切っている。


 しかし、純粋なヒューマンが何故か俺の周りにはいない。ムネチカとカナロアは微妙だ。俺が死んだら死ぬらしい。俺の魂に紐付いているからだと聞いたが、少なくともカナロアとムネチカ、この2人の命が俺に連動している。だから俺は簡単には死ねない。


 馬車は順調に進んでおり、昼過ぎにはフランカの熱も無事に下がり、座る事が可能になるまで回復していた。


 昼からはミリアのケアだった。

 ゼツエイの事で人1倍塞ぎ込んでいたのだ。


 何でも聞いても良いと伝えていたのだが、ミリアに俺の女性遍歴を聞かれたので正直に答え、ミザリアが初めての相手とまでしゃべっていた。どうやったらその発言に繋がったかよく分からなかったが、ついつい質問されるがままに答えてしまった。


「そんなに触りたかったのですね?」


 ミリアは俺の手を自らの胸に当て、手を重ねてきた。


「ミリアはずっと友安様だけを見ていますから。お気遣いありがとうございます」


 しかし、デリカシーの無い俺は失言をする。


「あれ?少し胸が大きくなったか?」


 そんな事を聞いてしまったのだ。今までと違い、ミリアの胸は少し弾力がある。ミリアをまじまじと見ると、顔つきが少しシャープに、体の曲線が幼児体型から高校生位になっている感じだ。そしてイリアに責められる。


「まあ、相変わらず胸がお好きだ事」


「まあ、好きだけどさ、イリアも少し大きくなったようだな?」


「ふふふ!流石はおっぱい星人ね。触り心地は?きゃいー」


 調子に乗るのでデコピンの刑に処した。


 イリアは暫くぶーたれていたが、お腹周りをくすぐってやると直ぐに白旗を上げた。まだまだおこちゃまだな。体は少し成長したようだが。


 俺は努めて明るく振る舞った。それは気分を高める為にだ。日本での学校の事とか、科学の事とかを話していて、皆興味津々で、食い入るように話を聞いていた。


 夕方にはまだ少し早かったが予定よりかなり早く、今日の目的地である町に着いた。城から失敬した馬が中々頑張ってくれたんだよね。ありがとう!


 先ずは宿を決め、ミザリア達は部屋で休む事にし、カナロアは夜には戻ると言って何処かに消えていく。

 まあ、いつもの事だ。


 俺はフランカに言われた通りに、2人して出掛けていく。飼い葉や食糧が必要だから、買い物に行くのを兼ねるのだ。

 そう言えばずっと御者をしていた所為か、町に入るまで気が付かなかったが、エルザがちゃっかり俺達の馬車に紛れ込んでいたのだが、国に帰るまで同行するのかな?としか思っていなかったのである。

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