第90話 事後処理

 朝の目覚めは爽やかだった。何せ俺の隣にはミザリアが寝ているのだ。何とお互い裸だ。


 昨夜俺達は熱烈に愛しあっ・・・ていない。単に裸で添い寝だ。

 復活したのは性的にではなく、単に戦闘の興奮による一時的なものだった。ぐふっ。


 しかし、ミザリアには隠した。愛し合おうとしていたが、途中で止めたのだ。いや、止めた事になっている。肝心な時に元に戻ったんだよ・・・泣きたい。その瞬間たるや、それこそ奈落の底に突き落とされた位の絶望感だったよ。

 悔しいが最後まで出来ず、童貞を卒業できなかったんだ。


 ミザリアにはゼツエイの事があるから後日にと告げ、ただただ抱き合って2人で泣きあった。そう、愛し合って良い状況じゃなかったねとミザリアが俺の配慮に感謝していた。

 俺が泣いたのは、ミザリアへの想いではなく、最後まで出来なかった事による、この生殺しの事実について泣いたんだよ・・・


 などという事はなく、ちゃんと愛し合っていた。そんな感じで男になりそびれた夢を見ており、一瞬焦ったが、目覚めた時に昨夜の事が思い出された。ミザリアとの魔力パスが感じられた事から、昨夜繋がった事が夢ではないのと、今も朝の生理現象から、ちゃんと男性機能が復活している事実を理解できた。ほっ。


 寝起きにおはようのキスをし、お互い昨夜の勢いは何処にやら、恥ずかしさで一杯だった。


 朝食には少し早かったので、暫くまったりしていた。

 幸せだった。これ程の幸せを感じたのは俺の人生の中で初めての事だ。

 ミザリアの温もりを感じられ、人肌が心地良い。


 ミザリアもゼツエイの事は受け入れていた。

 

 もう一度夢ではないのかと確認するが、やはり魔力パスが繋がっており、常にお互いの存在を感じられるようになっていた。だから先程のような夢の中での出来事ではないのだ。変な夢を見たから、逆にミザリアと愛し合った事が夢では?と疑っていたが、ようやく実感できた。


 そう、ちゃんと昨夜童貞を卒業しました!にしし!


 魔力パスを繋ぎたいと思いながら愛し合った結果、いつでもお互いの存在を感じられる相手になったが、存在を感じられるようになるのは稀だそうだ。


 男はそうではないが、女性は初めて肌を重ねた相手にのみパスが繋がる。しかも死別以外、魔力パスを解除する事が出来ない。その為、魔力を持っている女性にとって、初めての相手というのは特別なのである。


 着替えてから食事に向かったが、ミザリアは昨夜の情事の影響から、まだ少し歩きにくそうにしていたので、お姫様抱っこをしようとしたが、恥ずかしいからと拒否されてしまった。


 食堂に行くと全員揃っていた。いや2人足らないな。1人は言わずと知れたゼツエイ。後はフランカがいない。もう食べ終わったのかな?

 食堂にはエルザや各国の王、この国の貴婦人もいるし、気の所為かフランカの姉妹にしか見えない女性もいた。


 フランカよ、お前はどこに行った?それともこの場に女装で来たのか?そう思うとこの女性がフランカだと言われたならば納得するが、新たな疑問が!何故女装で来たんだ?

 あの女性がフランカではない場合、フランカが体調不良やトラブルによりこの場にいない事になるが、その場合は誰かが俺に知らせてくるだろう。

  

 そのように思っていると、問題の女性が意味ありげにウインクをしてきたので、彼女がフランカだと分かった。しかし、相変わらず女にしか見えない!でもこの場に何故女の格好で現れたのかは謎だ。うん。まあ良いか。今は気分が良い!


 以前フランカに、御前は男の娘じゃないよな?と確認した時は否定していたしな。


 ミザリアはイリアとミリアに頷いていた。2人には昨夜、俺とミザリアが愛し合ったという事が分かったようだ。


 俺の隣は何処かの国の国王とエルザで、ミザリアはイリアとミリアに挟まれており、彼女は2人から質問責めにあっていた。


 この後俺達を加え、国王達との会議だ。議題はこの国をどうするかだ。

 そう、すっかり荒れ果ててしまったのだ。変異の初期にかなりの敵が町に現れ、やりたい放題だったらしい。変異の初期は何処にゲートが現れるのかについて、事前に分からないので、町等が襲われて初めて場所が判明するのだ。


 まあ俺達には関係のない隣国の話だ。俺はホームタウンについては、この国にとっての隣国と既に決めていたのと、やらねばならない事があるし、何より俺は政治に疎い。


 やらねばならない事の1つは、あの勇者達を葬る事だ。

 召喚したこの世界の者達には任せたくはなかった。せめて同郷の者として日本風に葬り、時折墓参りをしてやりたい。


 また、イリアとミリアの親について対処する。可能なら死体を確保して墓を建てる。不可ならせめて遺品や形見を回収したい。そんな感じだ。


 途中で会議を抜け出したが、俺達はまず王都を出た後、イリア達がかつて住んでいた町に行く事にした。また、勇者達の死体は一旦俺の収納に入れていた。

 葬儀や埋葬についてどのようにするのかが決まる迄に時間が掛かりそうで、死体が腐らないようにするのに俺の収納に入れるように要請されていたのだ。お陰で死体安置所に忍び込み、盗む必要がなくなった。


 会議は不毛で、途中の休憩時にエルザから、叔父上から時間を稼ぐから今のうちにばっくれろとの旨を言われたと告げられた。そして俺達はそっと城を抜け出し、そのまま町を離れた。第1の目的地は馬車で2日の日程だ。カモフラージュをしているのか?という事があった。そう、フランカが女性の服を着ており、髪型も完全に女性のそれだ。いつもの事で今更感があるが、いつもに増して胸が自然でたわわだから、何か魔道具やマジックアイテムを使っているのかな?と思う程の自然さなのだ。それとわざとらしく強調された胸元から見える谷間は、どう見ても本物のお胸だ。何かを着けているにしろ、繋目が分からない。魔法か?それとも特殊な魔道具?俺はずっとその答えが分からず、モヤモヤしているのであった。

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