第83話 回復
俺はイリアが持ってきてくれたパン等をガツガツと食べ、無理矢理喉に押し込んでいた。2人はパンを細かくちぎり、パンをスープに浸してくれていた。それを交互に俺の口に運んでくれた。
そして食べ終わった頃、扉が勢いよく開き、ミザリアが文字通り俺の方へ飛び込んで来た。
そして泣きながら俺の頭をその豊かな胸に抱き寄せ、更に泣いている。
胸の感触がたまらないはずで、いつもなら我が息子さんがおっきするのだが、しかしながら俺の息子さんはピクリともせずに寝たままだった。
頭もそうだ。
いつもだと胸の感触で頭の中がいっぱいなのだが、ミザリアが心配してくれていたんだ!位にしか思わなかった。
そして、さすがに苦しくなってきたのでミザリアを引き離しに掛かるが、いつもならばそこはどさくさに紛れ、肩を掴みそこねた振りをして胸を掴んで引き離し、その絶妙な柔らかさに今迄であれば顔が歪み、涎が出ていても奇怪しくはなかった。だが、一切興奮をしていないし、胸を触ろうとすら思わない。本当に苦しいから、ただ単にミザリアを退けた!そんな感じでしかしなかったのである。なのでわざとらしく手が滑って胸をお触りするラッキースケベも発生する事もなく、肩を優しく掴み引き離した。そしてミザリアは意外そうにしていた。
そしてミザリアを引き離すと、ゼツエイ、フランカ、ムネチカ、カナロア、そしてエルザも現れ、現パーティーメンバー全員集合となった。
ただし違和感があった。皆変異に対処する為に、変異が発生している場所に行っているはずなのだ。だが、ここは屋敷の中か王宮や城か何かの客間の1室としか思えない。そんな雰囲気の部屋である。調度品もこれみよがしな感じの絵画が飾ってあったり、高級感ある物で揃えられている。布団もそうだ。俺が目覚めてから30分しか経っていない。
そうして俺が部屋の中をキョロキョロと見渡しているのを察したエルサが、説明をしてくれた。
ここは城の中の客間だと言う。俺はまあそんなところだろうなと頷く。城の中の客間の1室を病室としていた。俺の症状が悪化した為と、常駐している城務めをしている薬師まで距離があり、薬師が来ても薬等を持って来る量にも限界がある。その為、俺を城の中に運ぶ決断をしたのだと言う。薬師はメイド達同様に住み込みだそうだ。
そして驚いた事に、変異が発生している場所はこの城の中、それも俺が召喚された謁見の間だと言う。思わず「へっ?」っと唸った。
現在変異により開いた穴は、車のハンドルより少し大きい直径のゲートが開いるという。軽装なら大人が通れなくもない。その為這いつくばって大人が通って来たし、ゲートから砲弾か魔法のような何かが撃ち込んで来たのだ。それにより多くの死傷者が出ていると言う。
今日のところは時間切れで穴は閉じたが、次は明日の今頃開き、次回もしくはその次がおそらくゲートが開き切るタイミングであろうと言うのだ。
次に他の勇者の事を聞いた。スキルを奪ってやったあいつと、島で会ったあのお兄さん、ようすけさん、確か裕介?雄輔がいるのだ。彼らの動向を聞いた。
ゆうすけさんの漢字は何だったっけ?忘れたよ。
(注54話参照:祐輔)
罰を与えた奴は名前を聞いた記憶すらない。あいつで十分だ。
しかし、回答に真っ白になった。
2人共亡くなったという。俺は唸った!なぜ亡くなったのかと。疑う訳ではない。嘘を言う意味や必要性がないからだ。変異への対処の最中に殺られたか?しかし、意外な事に亡くなった原因は俺と一緒だという。あの病気だ。 俺はミザリアが生き返らせてくれたが、あの2人は生き残る事が出来なかったという。4日前と3日前だそうだ。残念ながら死者を蘇生できる期限を超えていた。
落ち込む暇はない。それはつまり、現在勇者は俺1人しかいないという事だ。そしてエルザが深刻そうな顔をしていたのであるが 、この時は他の勇者が病気で死んだという事を聞いたショックから、深刻な顔をしている意味を考えなかった。
その時にちゃんと考えていたとしても、どうにかなった訳ではないのだが。
また、今の俺は性的に何故か興奮しないという事と、お腹が減っている事を除けば快調!そういうような体調になっていた。物凄くお腹が減っているので、まずは食事の続きをし、明日に備えて休ませて貰う事にしたのであった。
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