第84話 戦闘開始

 翌朝ミザリアに起こされ、体の調子等を確かめてみたが、十分に体力の回復が出来ており、ほぼ本調子だ。

 起きてから直ぐに朝食を食べに食堂へ行ったのだが、そこにいる者達の俺を見る目が普通ではなかった。


 兵士達は焦燥しきった沈んだ目をしていたが、俺を見ると目を輝かしていた。


 因みに死んだ2人の蘇生は出来なかった。昨夜頼んで死体を城まで運んでもらい、無駄だと頭では分かってはいたが蘇生を試みた。正確には蘇生を試みて欲しいと頼まれ、死体がいると伝えたから、城まで運んで貰ったのだ。


 時間に制限があり、死亡後の時間が経ち過ぎていて出来なかったのだ。俺が意識を取り戻した時点で既に手遅れだった。


 俺も死に掛けたが、俺と違いあの2人は逝ってしまったのだ。

 しかも勇者が死んだ後、1週間経過しないと再召喚が出来ず、彼らは3日前と4日前に亡くなったそうだから、後3日は召喚するのは無理だ。もう1人は4日しないとだ。今現れているゲートへの対処は、これから召喚する者では対処が厳しい上に待てない。これが俺へ蘇生を試みて欲しいと頼んできた理由だ。


 そして兵達の使命は俺を守る事らしい。それは俺がいないと開いたゲートを閉められないからだ。肉の盾となり死ぬのも彼らの役目だ。勿論そうやって死した場合、家族に対して相応のお金が送られるそうだ。だから俺は食堂で兵士達の顔を見られなかったし、口を聞けなかった。知己を得てしまうと非情になれないからだ。


 食事をしている最中にかなりの衝撃と共に爆発音が聞こえてきた。更に城自体が揺れている。

 もうゲートが開いたのだ。後1時間は開かないと予測されていたが、どうやら予測が外れてしまった。


 兵達は食べ掛けのまま、急ぎ謁見の間に向かった。時間稼ぎをする為にだ。


 俺も部屋着のまま謁見の間に向かおうとしたが、兵士達に止められた。


「勇者様!勇者様が装備を整え、少しでも生存率を整えてくれないと自分達は無駄死にします。気持ちは有り難いのですが、勇者様に死なれてしまえば私の妻子も間違いなく死んでしまいます。我らが時間を稼ぎます。ですからどうか着替えて貰えませんか?」


 俺は目を見てしまった。20歳位の若い兵士だ。俺は正論に目を逸らすしかなかった。


「分かった。急いで着替えるから命大事でいけよ。絶対に無駄死になんかするなよ」


 俺は逃げるように隣の部屋に行き、急ぎ装備を整える。そして俺達はお互いの装備を確認し、戦闘準備が整ってから謁見の間に向かう。


 そして謁見の間の扉を開けようとしたが、突然扉が吹き飛んだ。


 そこから何か特殊なスーツを着た黒い奴らが出て来て、俺達に銃を向けてきたが、幸い俺にはそれが銃だと分かった。また、このスーツはパワードスーツの一種だ。


 咄嗟に銃に向けてアイスボールを放つと、見事に銃に当たった。そのお蔭で俺に向いていた銃口が別の方に向き、その直後に何かが発射された。銃口から放たれたのは、どうやらレーザービームのようだ。俺は慌てて転移し、そいつの首を刎ねると武器を回収し、謁見の間へ入る。しかし、そこはかなり凄惨な状況で、まさに地獄絵図だった。


 俺を着替えに送り出した兵士達は多分全滅している。酷い状態に吐き気を催す。

 そしてエルザは捕まり、服を剥ぎ取られており裸にされ跨った奴に犯され始めていた。

 正に今純潔が散らされんとする直前で、俺は転移してそいつの一物を切り取り、更に火魔法で頭を吹き飛ばした。


 エルザの怪我も酷かった。

 エルザをマントで覆うと外へ転移しつつ、応急的な治療をしてミザリアへ預けた。

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