第78話 流石に

 俺は寝台で横になって揺られていたが、眠れないままひたすら呟いていた。


「胸が!ぽっちが!柔けー」


 押し当てられている胸の感触を全身で感じてしまい、悶々としていた。


 そして今は明け方の休憩及び馬の入れ換え中だ。


 そして俺は2人を正座させた。

 誰をかって?ミザリアとエルザだよ。2人のおっぱいのせいで寝れねえじゃねえか!今晩は寝かさないわよ!じゃないんだよ!俺は寝たいんだ!女と寝るの意味じゃなくて、睡眠、スリープの意味だ!でも胸の感触が堪らんから寝れねえんだよ!寝不足からイライラが止まらない。流石に美女2人相手でも・・・だ。ちゃんと言おう。


「この格好でくっつかれると、君らの胸の感触で寝られないから、せめて下着を着けるか、おれの腕に胸を押し当てないで欲しい」


 エルザが逆ギレ気味だった。


「わ、私の胸ではご満足しませんでしたか?友安様は特に胸がお好きだから、胸を押し当てて寝るように双子ちゃんから言われたのですが?それが添い寝の決まりだと。違うのですか?やはり私みたいな筋肉質な女じゃ嫌なのですか!?」


 俺はため息を付き、シャツから見える突起を衝いた。するとビクンとなる。


「この突起の感触で寝られなかったんだよ。俺も男だ!胸は好きだし、エルザの胸を揉まない為に理性を総動員したんだぞ!好きか嫌いと聞かれたら、そりゃ大好きだよ!君は自分の魅力を分かっていないのか?俺の理性が飛んだらエルザを犯して陵辱していたかもなんだぞ!ミザリアもだ。初めての時はロマンチックにと、雰囲気を大事に2人きりと決めているんだ。こんな強行軍の中、しかも周りに兵士だらけの殺伐とした所じゃ嫌なんだ。もう俺も理性を保てそうにないから、これ以上刺激をしないで!」


 ついつい本音を言ってしまった。 

 格好付けて言ったが、内容はおっぱいが好きだとカミングアウトしただけだ。もし周りで俺の声を聞いた者がいたとしたならば、きっと呆れていただろう。但し当人達は慌てていた。


「友安様、ご、ごめんなさい。私の事を嫌いにならないでくださいまし。不安だったのです。他の女性に友安様を取られやしないかと。ごめ」


 先を言わせなかった。キスをエルザにこれみよがしに見せたのだ。しかも胸をタッチして見せた。


 これで少しは警戒するだろうと思ったのだが、逆だった。ミザリアはトロンとなるし・・・

 どうやらイリア辺りに仕込まれたようで、俺の手はエルザの服の中に引き込まれていた。その見事な感触に本気で理性が飛び掛け、たまらず俺は小便をするとして馬車を出る。

 エルザはミザリアと競っているかのように大胆な行動に出ていた。大方勇者の子を身籠れとでも命令されたのだろう。そんな女、今は抱けねえよ!・・・強がってみた。強がりだ。本音は抱きてぇだ。


「友安様、これで許してください。勿論、そのままお抱きになられても構いません。未経験ですから病気の心配はあ」


 ゴチン!

 俺の拳がエルザの頭を軽く小突く。


「これ以上やるなら追い出すぞ!頼むから寝かせてくれ!俺は眠いんだ!」


 エルザは引き下がってくれた。俺のイライラが分かったようだ。俺は寝不足から口調もいつものそれではなかった。


 女性陣も小用だ。そのまま出ようとしたので、カーディガンを出して胸を隠すように伝えて逃げ出した。シャツなので、突起がはっきり見えるからだ。アホな事を言っているが2人はパッと明るくなる。


 今は小さな村にいるようで、公共のトイレに行っていた。その後軽く食事だ。俺達のは弁当で、収納に入れてあるから勿論温かい。


 先々に兵と馬を用意して休憩ポイントで馬を交換だ。

 ペースはかなり無理をさせていると言う。その為の換え馬で、1度無理をさせると数日は休ませなければ成らないだろう。乗り潰す直前まで無理をさせている。一体どれ位の人数で出撃したのだろうか?


 伝令も沢山いて、エルザが率いていた半分は先々の街に残して待機させるリレー要員だったらしい。予測より俺達が早く島を引き上げたので、合流するのが計画より2日早かったらしい。


 先触れを出し、夜通し走った面々は休憩後通常のペースで城に戻る命令を出している。


 俺は小便から戻るとまたもや後悔した。

 2人をモノに出来たのにと。welcomeだったのにと。相変わらずのへたれだ。ただ、変異への不安からか、俺自身少し情緒不安定になっており、正直女を抱きたい気持ちで溢れており理性が止めていた。多分生存というか、種保存の本能だろう。昔、戦に行く前の男は女を抱き、子を残そうとしたと聞いた事が有る。己が死したとしても子孫を、忘れ形見を残そうと。遠征から帰ったら妻や恋人が子を抱いていたってやつだ。ミザリアはそうなのだろうか?焦っているのは俺に何かあった時にせめて子を欲しいと思ったのか。それもあるのか正式な妻にこだわっているのが分かる。


 又は俺の知らないこの世界のルールがあるのだろうか。エルザはやはり国王の命令か?いかん。モテたのだと勘違いしてしまった。俺が勇者だからなんだよな・・・俺を、友安としてじゃないよな。はぁ・・・やはり今は心が沈んでおり、起伏が激しい。ネガティブな方につい考えが行ってしまう。今もハッとなった。やはり寝て落ち着けよう。


 馬車に戻ると、俺への添い寝はイリアとミリアに変わっていた。


「なあ、怒らないから正直に言おうな。エルザをけしかけたのは誰だ?添い寝のルールが胸を押し当てるって?夜伽じゃないんだからさ」


 イリアが正直に手を上げた。


「正直で宜しい。ちゃんと寝ていないから、挑発しないで寝かせてね。眠いんだ」


 彼女達は頷くが、目を瞑っている。仕方がないのでおやすみのキスだ。キスのお陰かその後は挑発も無く、俺もようやく寝られた。


 昼には城に着きそうだと言っていたが、願わくば城に着くまでの間、そっと寝かせて欲しい。お願いします。今は性欲よりも睡眠欲が勝っているから。

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