第72話 強がり

 俺がミザリアの部屋を出ると、直ぐにミリアに捕まり、彼女の部屋に引きずり込まれた。


「と、友安、そ、そにょ、お姉さまと仲良しさんになったのですか?」


「エッチをしたかって事か?それならしていないし、彼女はまだ処女のままだよ。本当は名実共に妻にしたいし、プロポーズも受けてくれたんだ。でも今はエッチをしている場合じゃないんだ。変異がすぐ間近なんだよ。もし今身籠ったらミザリアは生き残れないと思うんだ。だから変異を経験するか、半年後の早い方まで待つ事にしたんだ」


 ミリアは真っ赤である。

 仲良しさんと言葉を濁しているのに、俺が濁さずにズバリで言ったからだ。

 ミザリアの忠告通りに俺はミリアにキスをしたが、固まってしまった上にぶっ倒れた。そして、まだ寝ていたイリアにごちんこだ。


 イリアが唸っていた。


 俺はイリアを撫でながらおはようのキスをすると、妙にしおらしくなった。うん。俺好みの淑女に見えたくらいだ。いつもこうならな。でもツンデレは貴重だ。うん。貴重だ。大事な事だから2度言おう。


 ハッとなりトイレに逃げるように駆けていったイリアが戻ると、イリアとミリアが話をしていたが、唐突に変な事を言われた。


「と、友安は不能なの?女の私から見てもお姉さまは絶世の美女なのよ!なのにエッチしないって、馬鹿じゃないの?お姉さまは受け入れているのでしょ?抱いてあげなきゃ可哀想よ!」


 俺は驚いた。まさか責められるとは思わなかったからだ。


「違うみたいよ。姉様がご懐妊する可能性があって、その場合変異にて死んでしまう恐れが高くなるからだそうよ。だから変異が終わってから結婚するみたいなのよ。本当は抱きたかったって言うのよ」


「へーちゃんと考えているんだ。いいなあ姉様は愛されてるな」


 俺は2人をぎゅっと力一杯抱きしめていた。


「ミザリアを愛しているが、イリアとミリアの事も負けず劣らず愛しているよ!ミザリアが先だが、俺の妻になってくれ!君達がいないと俺は生きていけないよ」


 ついつい2人にもプロポーズしてしまった。


 そして2人が泣きながら抱き付いて離さない。もちろん頷いている。



 少ししてミザリアが食事にしようねと言いに来たので、着替えて部屋を出た。


 今日は夕方に向こうに着く船で帰るが、それまでは観光だ。


 俺達は古い建物を見て回っていた。


 しゃちほこが有ったのには驚いた。


 たまには息抜きも良いものだ。民芸品を見たり皆で回っていた。


 珍しいのは、今迄こういう時に一緒に来た事の無いゼツエイが来ている事だ。


 カナロアは1人で何処かに行っていた。

 まあ、歌を歌っているのだろう。


 そして船の時間が近づいて来るに従って、イリアとミリアの表情が雲って来て口を利かない。


 多分船酔いが嫌なのだろう。しかし、時間とは無情に過ぎるものである。


 そうして島での修行を終えて、沈んだ双子の手を引きながら船乗り場に向かうのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る