第71話 その夜僕達は
朝目覚めるとミザリアが隣りにいて寝息を立てていた。
勿論2人は服は着ていない。
昨夜ミザリアとの婚姻前の儀式は終わらせた。ただ、初体験には至らなかった。
結婚前の儀式とは
(1)風呂場にてお互いの体を見つめ会い、性的に興奮しない所まで時間を掛けて落ち着くのを待つ。
(2)(1)をクリアした後、お互いの体を心を込めて洗いあう。
ここでも性的に興奮しない努力をする。もし興奮してしまったら・・・(1)からやり直す。
洗い方も作法が有り、先ずは胸(心臓の所)、次にお腹、肺、左腕、右脚、左脚、右腕、背中、胸部、首、口(歯磨き)髪、顔、お尻、陰部となり、1度でも興奮すると(1)からやり直しだ。それも2人共だ。
俺は酒が入っていた為か2度失敗した。それも1番最期にだ。女性の陰部なんてミリアの治療をした時を別にし、まじまじと見る事は勿論無かった。そこはなんとか耐えきったのだが、その、ミザリアに洗われている時にね、刺激で失敗してしまった。
ミザリアは恥ずかしそうにしていたが、真面目にしているから、余計ね。くすぐったかった。いや、昇天した・・・
これは自分を律する事で相手に対する誠意と、ちゃんと己の心と体を制御できる事を証明し、心身共に健康体だとアピールする為なのだとか。婚姻前の女性の体を見て触る事が出来るといえば羨ましいだろうが、はっきりいうと、賢者モードで挑まなければならず苦行以外の何物でもなかった。
この世界に日本のような人権や平等性は無い。
基本的に男尊女卑であり、一夫多妻制で、一妻多夫は禁止されている。一夫多妻とはいえ、他人の妻との姦淫は姦淫罪となる。訴えられたならば、一旦神官の奴隷にし、嘘を禁じてから事実関係を確認する。もしも事実ならばその場で去勢される。
但し、無罪の場合は訴えた者が女ならば片胸を除去し、男ならば去勢されるので、おいそれと訴える事は出来ない。
また、生まれつき障害を持つ者は国に捕えられて抹殺される。もしも隠匿した場合、その家族は社会の不適合者にされたうえで、町を追放され危険な生物が住まう壁の外で生きねばならなくなる。酷い世界だ。今やっている儀式?はそんな厳しい世界にある謎儀式の1つだ。
興奮しないようにするのは、出来なければ精神が未発達で結婚の資格が無いと見なされるからだ。
これはエルフの仕来たりだった。
初婚の時の仕来たりだそうだ。
チャンスは5回といい、失敗すると半年待たないと次のチャレンジが許されない。尤もエルフの仕来たりなので、例えヒューマンの俺が失敗したとしても、関係なく結婚すると言っていた。
しかし、3度目で成功だ。
これでいつでも正式な夫妻になれるらしい。
ミザリアは俺にいずれミリアとイリアも娶るようにと約束させてきた。
強い男は多くの妻を娶り、より強い子孫を残す義務があるそうで、最初の妻がハーレム入りする相手を選ぶそうだ。男に決定権はない。
魔物との戦いにおいて、多くの男が死に、男女比が悪過ぎる為、一夫多妻制度を推奨せざるを得ないのだという。但し、一部の例外を除き、貴族以外は高ランクの冒険者以外ハーレムを作る事は認められない。例外の中に勇者も含まれていたりする。
第1夫人と折り合いが悪ければ、ハーレムには加える事を認められずに別れる事になると。それに異を唱えた場合、ハーレムの全員が袂を分かつ。
なので、ハーレム入りを希望する女性は、第1夫人に結婚を申し込み、夫の意思とは関係なく決定される。
下手をすると、妻が連れて来た初対面の女性を今から娶るとかも有るらしい。
男性が惚れて、第1夫人に紹介し、ハーレム入りを申告しても、第1夫人が許可を出さなければ無理矢理別れさせられるのだ。
なんとも不思議な制度だ。つまり、第1夫人は慎重に選ぶ必要があるという事だ。
昨夜ベッドでお互いの愛をくさい言葉で確かめ合い、婚姻の義を!となった。つまり合体をする事だ。合体すれば正式に夫婦だ。
いよいよという段で、俺は酔っていてふらふらなのと、まさかのミザリアが寝てしまったのだ。彼女も酔っていた。
まさか寝ているのに行為をする訳にもいかず、お預けとなった。
なのでお互いの初体験はまだだった。
ただ、俺は当初決めた事を守る事にした。昨夜は酔っ払っており、酒の勢いで当初決めた事が頭から完全に飛んでしまっていたが、ミザリアが寝てしまった時に思い出したのだ。
それは変異が終わってから結婚をする事だ。万が一変異が無かったとか、他の勇者が終わらせたという事も有るだろうから、半年か変異の早い方を設定した。
そして朝ベッドの上でミザリアと話し込んでいた。
「なあ、ミザリア。昨夜は酔った勢いで最初の誓いを破る所だった。正式な結婚、つまり体の関係を持つのは変異を経験するか、半年後の早い方にするよ。今は万が一ミザリアが身籠る事になれば、ミザリアが変異を生き残れないと思うんだ」
「はい、ミザリアはその時をお待ちしております。ただ、キスは毎日してくださいませ。それとキスはイリアちゃんとミリアちゃんにもしてあげて欲しいのです」
俺は頷き、おはようのキスをするのであった。
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