第55話 蘇生

 俺はとにもかくにも回復と死者蘇生をしまくっていた。


 死体が並べられているので順次行う。途中から感覚が麻痺し、死体の酷さを見てもなんとも思わなくなっていた。かなり酷い死体に最初は吐いたもんだ。


 先ずは体を治さないとだ。体を治す前に生き返らせても、すぐに死んでしまう。可哀想な事をしてしまった。1人目の死者蘇生は生き返ったとはいえ、実験台になってしまったのだ。てっきり蘇生を使うと体が治るものと思い込んでいたのだ。


 戦いの最中、祐輔さんのパーティーの1人が死んでしまい、先ずは彼からだった。冒険者を優先する。それは不測の事態が起こった時に戦える者を優先するからだ。


 彼を生き返らせたが、その途端にギャーと叫び、もう一度死ぬところだった。慌てて俺達は回復魔法を使い体を治したが、その後彼は2度目となる死の恐怖と痛みに震えており、ひょうきんな奴との事だったが、しばらくの間トラウマになったらしい。この後、苦しむ者はいなかった。セーフだよね?何がって?なんだろうね。


 その時、血塗れの状態で暴れた為、かなりスプラッターな状態となり、それを見てしまったミリアが狼狽えていたな。ケアが必要だ。ナデナデ。


 その後皆、ある意味俺に対して呆れており、祐輔も魔力量が明らかに異常だと唸っていた。


 ドラゴンの死体はかなり早く解体され、別の場所に移された。それはその辺りの瓦礫から死体を出す為で、無事に死体を出す事が出来ていた。死体を無事出すというのもおかしな話だが、生き返らせるからね。


 夕方には全ての死体が救出され、全ての死者を蘇らせた。その周辺に住んでいる者達からどこそこには何人住んでいる等を、皆が手分けして確認を行い、行方不明者の発生を防いでいた。冒険者は登録している筈なので、密航者を除く全員の所在が確認取れた。ただ、実際は不法滞在者の何人かが死んでいたようだ。


 流石に魔力の使い過ぎでくらくらしており、ミザリアに肩を貸して貰っていた。


 で、問題は最後の奴だ。 つまり黒髪の元凶者についてだ。


「なあ、こいつどうする?」


 祐輔が即答する。


「そうだな、生き返らせて奴隷にして町の復興にこき使ってやり、罪を償わそうぜ」


「まあ、生き返らせてやる筋合いがないとは思うがのう。もし生き返らせてやるなら、奴隷にするのは当たり前じゃて」


 ゼツエイからも同様な意見が出て、取り敢えず生き返らせる事にした。この町の復興には人手が必要だ。自らが招いた事態の責任を取るべきだと判断した。死んで楽にさせてたまるかよ!苦しんで生きろ!この町の責任者にこいつの身を委ねよう。


 そして傷の治療や欠損部位の修復をし、奴隷にしてから死者蘇生を行った。


「うわー!な、何が!?うへ?えっ?」


「おい、気が付いたか?お前を生き返らせてやったが、お前の罪は大き過ぎる。奴隷として罪を償いながら生きろ。祐輔さん、申し訳ないですが、俺もそろそろ限界で歩くのも辛いので、後をお願いします。死者がまだいたら叩き起こしてください」


 祐輔が頷いたので俺はふらつきつつも宿に戻って行く。幸い宿の有るエリアは無傷だった。


 宿に着いてから、イリア、ミリア、ミザリアに装備を外され、風呂に入れられていた。3人共裸だったのか、何かを着ていたのか覚えていない。

 宿に着いた時点で意識が朦朧としていて、なすがままだったからだ。

 ただ、3人に身体を洗われ、綺麗にして貰った事は何となく覚えている。


 彼女達はある意味安心したようだ。俺にも限界がある人間なのだと。


 身体を拭いて貰い、寝巻きも着せてくれた。

 ただ、大事な所も直接拭かれていた筈なので、物凄く恥ずかしかったが、お陰で清潔な状態で眠る事が出来た。感謝!


 実は奴から奪った能力が収納の上位で、中に入っていた物も奪っていた。

 後日、収納の中に入っていた物の内容が判明し、驚く事になる。


 部屋へ戻り、横になると直ぐ意識が無くなったが、寒さに震えていた事だけは覚えていたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る