第30話 そこにいたのは

 そこにいたのは煙で炙りだされた一際大きなオークだった。それと取り巻き?が5体程いる。


 敵は地面に手を付いてゼイゼイと喘いでいる。

 オークの上位種のオークジェネラルというのだろうか!?と俺は思っていた。

 先に到着した俺は、皆を待たずに魔法で先制攻撃を開始した。

 ファイヤーボールをバレーボール玉位の大きさと、魔力をかなり込めたのを6発展開し、全員に投げた。


 そして俺は叫んだ!


 「こっちに上位種がいるぞ!」


 咄嗟の事で驚いていたオーク共の注意が俺に向き、見事に魔法が当たる。ジェネラルと思う奴に取り巻きが覆い被さり守っていた。

 今の魔法で2匹を仕留めたが、2匹は回避した。また、1匹は片手を犠牲にして耐え抜いていた。そして取り巻きに庇われた為、片腕が使い物にならない状況ではあるが、ジェネラルは健在だった。


「ジェネラルがいるぞ!こいつらのリーダーは俺がやるから他を頼む!」


 俺はそう叫びつつ斬り結ぶ。

 そいつ、つまりジェネラルと思われる奴は立派な剣を握りしめている。背丈は160cm少しで、オークとしては異様にでかい。

 片手で俺と対等に打ち合う。

 フランカとミザリアが追い付いて残りの3匹の相手をしてくれているので、俺は1vs1の戦いに集中できた。


「ウホーお前強いな!そらそらいくぞ!」


 俺はチャンバラに夢中だった。

 驚いた事に奴はいきなり消えたと思ったら、次の瞬間俺の後にいたのだ。俺は剣が空振りした為だろうか、前のめりに倒れ掛かったが、俺の後ろに回った奴が俺の首があった所に剣を振り抜いていた。


 どうやったのか分からないが、偶々バランスを崩していなかったら、俺の首が飛んでいたかもだった。


 ミザリアが慌てて叫んだ。


「駄目です友安様!それはジェネラルではありません!逃げて!」


 何やら逃げろと騒いでいるが、こんなスリルのある戦いから逃げるなんて出来ない。全身がある意味痺れ、高揚し、興奮さえしていて、ギンギンだ。アドレナリンが大量に出ているので大興奮だ。


「うひょう!危ねえ!お前やるな。それ厄介だな!まず没収だ!」


 俺は突進してタックルを喰らわせる。意表を突かれたのか、もろに当たった。こっちも腕を少し切られたが、構わず捕まえ大内刈りを決め込んだ。奴は受け身を取れずもろに打ち付け、その隙に顔を殴りつけた。


 「頂きます!」


 そう、俺は怒鳴って根こそぎスキルを奪った。すると振られた剣が脚を捉え、少し斬られた。俺は咄嗟に奴から奪ったスキルを使った。


 スキル名

【空間転移】

見えている所に己自身又は触れている対象を移転させる。最後に使ってから10秒以内であれば連続使用可能(6回が限度)。インターバルは1分。


 そして奴が俺に対してしたのと同じ事をして後ろに回り、一気に首を刎ねた。奴は警戒しておらず、スキルを奪ってからはあっさりと行けたのだ。そう、奴の背後に転移したが、その時俺は既に剣を振っている最中で、正に転移直後に勢いが付いた剣が首筋に有ったのだ。


 俺は痛みに唸りながら、ヒールを掛けた。

 そして周りを見ると戦闘は終わっていて、駆け付けたゼツエイがフランカと共に内部に突入して行った。

 俺も行こうと思ったが、脚の怪我が思ったより酷く、バランスを崩してしまった。

 先ずは脚を治療し、他の怪我も治療を始めた。


 ミザリアが俺の所に来た。


「何を考えていたのですか!あれは私やゼツエイでも対処出来ない強者ですよ!倒せたとはいえ無謀ですよ!貴方にもしもの事があったらどうするのですか!?」


「大袈裟だな。確かに強かったけど、ジェネラル種は想定内じゃないか!?」


「何を言っているのですか!?ジェネラルはあの取り巻きの5匹ですよ!」


 「えっ!?あいつら普通のオークに上等な装備を着けた奴だと思ったんだけど?」


「えっ!まさかあの取り巻きをジェネラル種と思わずに戦っていたのですか!?」


「そうだけど、違ったの!?」 


「えええ!あれはジェネラルで、友安様がジェネラルだと思っていたのがオークキングですよ!変異が近付くと出没すると聞いた事が有るので驚かないですが、S級指定の魔物ですよ。倒す事が出来て良かった!友安様が死ぬかと思ったのですよ。心配だったのですよ!ううう」


 ミザリアが泣いてしまったので、そっと抱きしめ、おでこにキスをした。


「ごめんよ。俺、興奮していて相手の強さを測れなかったみたいだね。奇襲的にファイヤーボールが当っていなかったらやばかったんだね」


「絶対に無理をしないって約束してください!私は貴方が傷付き苦しむ姿を見たくないのです」


「分かったよ。心配してくれて有難うな。もう少し自制して気を付けるね。それよりゼツエイさんが戻ってきたよ」


「もう中は誰もおらなんだな。金目の物と装備品や宝石類が少々といったところじゃな。中を見てくるといい。フランカ、案内してやれ。ミザリアも付いていくといい。それと猫耳の嬢ちゃん達は儂と魔石の抜き取りじゃ」


 2人は嫌そうな顔をしたが、黙ってゼツエイの指示に従った。


 そうして俺は内部に入っていく。   

 長さ50m位の洞窟で、途中で分岐がありそこの先に30畳程の大きさの空間が空いていた。そこに寝床を作っている最中のようだった。

 中にある棚に少々のお宝があった。宝石が10個程と、オークキング用の装備品と剣が数振りだったので金目の物だけ収納に入れた。


 後は出る時に特大のファイヤーボールを展開し、中を燃やしていった。

 外に出ると3人が魔石を抜き取っている最中で、俺はジェネラルのスキルを奪い尽くした。


 収納は余り余裕がない筈なので、キングの死体だけ入れて他は放置した。

 そして町に戻り、討伐の報告を行うのであった。

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