第29話 コロニー
オークに道案内をさせる事約10分、何故か他のオークに遭遇する事もなく、難なくコロニーへ辿り着いた。
そして俺達は林の中にいてコロニーの入り口を見張っていた。
コロニーは洞窟があると思われる崖の麓に、木造の入り口を付けた感じだ。普通に考えればこれが入り口だろう。
俺は捕らえたオークに最後の命令を出した。あの入り口から中に入り、中にいる魔物を殺しまくって来いと。
先ほど倒したオーク共が持っていた剣を渡して送り出したのだ。
ミザリアが疑問を口にした。
「あのう、友安様?一体何をなさっているので!?私達が攻め入れば良いと思いますが?どうされたのですか?」
「ああすまない。確かにそうなんだけど、スキルの検証なんだ。俺はあいつを操っている筈だけど、本当に仲間を殺す事が出来るのかを確かめたくてね」
暫くすると大騒ぎが起こり、奴が仕事をした事が分かる。血まみれの奴が運び出されたのと、他にも数体が外に運び出されて来たからだ。
「おお!出来た出来た!俺にやった事をそのまま返された気分はどうだあ!?うははははは!勿論倍返しじゃああああ!」
イリアが呆れていた。
「ちょっと友安様?根に持っていたの!?これって結構えげつないわよ!」
「そりゃあそうだろう。痛かったんだぞ!10倍にして返さんと俺の心は鎮まらんぞ!さあて、ボスはいるかな?皆行くよー!ヒャッハー!」
皆からの返事を待たずに俺が単独で飛び出していったものだから、ゼツエイが唸った。
「待たぬかこの阿呆タレが!闇雲に行くんじゃない!全く。ミザリア、守ってやれ。今はまださっきの怒りが収まっとらんな。全くガキだな。とはいえ、坊主は戦闘経験がほぼ無いと言うとったから無理もないか。って早いのう」
「ふふふ。まるで昔のトト様のようではありませんか?皆でフォローして行きましょうね!」
「昔の儂に似とるから心配なんじゃわい。それに成長を待っておる時間はあまり無いからのう。失敗から学ぶしか無いのかもしれぬしな。皆行くぞ。死なすな!」
そう言いゼツエイが駆け出し、皆も向かってくれている足音が辛うじて聞こえた。俺はひたすらアイスボールを撃っていた。騒ぎを聞きつけたからだろうが、まあ、出るわ出るわで討ち漏らしの奴らに俺はいつの間にか囲まれてしまった。そう、ジリ貧になっていた。
俺は前方にばかり注意が向いていて、囲まれた事に気が付くのが遅れた。俺が単独で突進したものだから、格好の餌食になったんだ。馬鹿だった。怒りに身を任せた結果がこれだ。もう少し戦い易い場所で複数を相手にするつもりが、予定の倍の数に囲まれてしまったのだ。
剣を片手に斬り結びながらアイスボールを放ち、オークを吹き飛ばしていたが、俺は棍棒を何発か喰らってしまい、遂に跪いてしまった。なんとか剣で防いでいたが、10体位に囲まれて俺は予定外の事にパニックとなり、ひたすらファイヤーボールを出したり、とにかく必死で戦っていたのだ。それに剣もスキル任せだ。
背後から棍棒で背中を打たれ俺はうつ伏せに倒れると、即、体を回転させた。頭があった位置に棍棒が振り下ろされた。これはなんとか回避したが、2体が同時に剣を振りかぶっていて避けられる場所が最早無かった。詰んだ・・・最早これまでか!?と思ったが、1体はゼツエイが薙ぎ払い、もう1体はミザリアの風魔法で切り裂き、各々胴体を両断された。
ゼツエイが傍らに来てくれた。
「このバカタレが。死に急ぐでない。ちゃんと作戦を立てないからこうなるのだ。立てるか?」
「ゼエ、ゼエ、ハァ、ハァ、くそう、くそう、くそがああ!痛い!痛い!。ヒールだヒールゥゥ」
ゼツエイが俺を殴ってきた。
「しっかりせんか!まだ戦闘中じゃぞ!」
「あ!?あれ?あっ!そうだった。よし俺の剣技じゃやっぱり囲まれると駄目か。魔法もあまり当たらなかったな。改善しないとな」
「まさかお主わざと囲まれておったのか!?」
「うん。何とか1分持ち堪えれば皆が駆け付けてくれるから、自分の実力を確かめて置きたかったんだ。この後、手遅れになる前にね。思っていたより近接戦闘は駄目だったな。それに考えが甘かった。それに予定より数が多かった」
「2度とするでない!儂らがあと数秒遅れておったらお主は死んどったかもなんじゃぞ。頭が良いのか阿呆なのかよく分からん奴じゃ。全くミザリアも大変な奴に惚れたもんじゃのう」
「えっと、さっきの矢のお返しという事で良いですよね?」
「まあ良いじゃろう。反省しておるならばな。貸し借りなしとは律儀な奴じゃな。さて粗方片付いたが、ボスはまだおらぬな。中か?で、どうするのだ!?」
「えっと、危なくなるまで一騎打ちをさせてください。ボス以外は任せます。後、中へは炙り出しで行こうと思います。それとイリアとミリアは外から戻ってくる奴に対して警戒を。ミザリアとフランカも中から出てくるボス以外を頼むよ。って待って!やっぱミザリアはこっちに来て、炙り出しを手伝って!」
俺はミザリアと一旦藪に行き、木の枝を何本か持ってきて入り口の前に置いた。
「じゃあ火を着けるから、ミザリアは風で洞窟の中に煙を送り込んでね」
そう言うと俺は、弱目のファイヤーボールを大量に作り、枝にぶつけて燃やしていく。生技なので煙が凄い量だった。そして不自然な風の力でコロニーの入り口からどんどん中に煙が入っていく。まあ、やられた方はたまったもんじゃないだろうな。
「あら?凄い煙ですわね。友安様、よく思い付かれましたね。てっきりファイヤーボールを撃ち込まれる物と思っておりましたわ」
「内部の構造が分からないからさ。ファイヤーボールだと壁があればそれで終わるから、奥に届かないんだよね?それに別の出口があったとしても、煙で見つかるかもだし。ほらあそこのように!」
コロニーの入り口にいる俺達からは見えない方から、煙が立ち込めているのが見えた。
「ちっ!やっぱり有ったか!?フランカ、ミザリアは一緒に来てくれ。ゼツエイはこっちから出る奴を頼む。来たら大声でお互い叫ぼう!」
そうして3人は煙が漏れ出た方に向かって駆け出すのであった。
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