第28話 魔法の検証
回復した俺を見て、ミザリアが抱き着いて泣いている。そういえば付き合う事になったが、まだ結婚するような約束はしていないし、そこまで深い間柄にはなっていない。
なりたいが・・・
おまけに俺は最強になるなんて何時言ったかな?等とふと思ったが、今はそれどころではないと思い出した。ヒールの便利な所は失われた血も魔力により回復する事だ。本来はそれはないのだが、どうやら俺のは特別らしい。
「心配を掛けたね。もう大丈夫だから。死体を確認しよう」
そっとハンカチを出してミザリアの涙を拭いてあげた。操られていたと思われる3人の死体からスキルを回収しようとしたが、出来なかった。そういえば先程既に1人は確認したなと思い出し、次にオークを1匹ずつ確認するも殆どスキルがなかった。しかし目的である本来有る筈のスキルが無かった。
「まだ奴等は近くにいるぞ!」
そう叫ぶと矢がゼツエイに向かって飛んで行く。咄嗟にファイヤーボールを展開し、顔に当たる直前で弾いた。というか焼いたのかな!?
顔の直ぐ前をファイヤーボールが飛び去ったので、ゼツエイが驚いていたが、幸い矢が飛んできた方向は分かった。
奴が逃げ出し始めた事が分かり、いちいち指示を出してからでは逃げられるからと、俺はそこに向かって突進し、追い掛けながら叫んだ。
「悪いが魔石の取り出し等を頼む!俺は奴を追う!逃がすかよ!」
馬鹿者が!と聞こえたが、迷う事なく追いかけた。後から考えると軽率だった。痛い思いをしたので頭に血が上っていたのかも分からない。
俺の方が足が速かったようで、3分位で追い付いた。
その事をオークも悟ったようで、最早逃げられないと理解したようで、こちらに向き直った。ローブを纏っており手には杖を握っている。呪文を唱え始めたのでナイフを投擲したが、見事に胸に刺さった。呪文を唱えるのを諦めたようで再び逃げ出したが、背後からファイヤーボールをお見舞いし、倒れたのでそのまま首を刎ねる。
そしてすかさずスキルを奪ったが、取得したスキルは弓術、ネンクロマンサー(えっ?)、水魔法初級だった。そう、ビンゴだった。魔石を抜き取ろうかと思ったが早速ネンクロマンサーを試した。
死体の操作だった。
死後1日しか操れないが、簡単な命令を出せる。但し著しく知能が落ちるので明確な命令が必要。また、操る対象は自我を持たず、言葉も発する事が出来ない。
こんな感じだった。
それとつい突っ込んでいた。
「何だよスキル名!?ネクロマンサーじゃなくて、ネンクロマンサーって舐めとるんかい!」
因みにこいつは上位種であるオークメイジの筈だったが、スキルを奪ったので、今は単なるオークだ。但し着衣はメイジらしくボロいがローブだ。
そしてこいつには次に命令するまで俺を守れと命じ、仲間の所へ合流すると伝え、俺についてこさせた。因みに首はヒールでくっついた。
ミザリア達と合流する時に一瞬戦闘態勢になったが、俺が手で制した。そしてミザリアが俺の体をペタペタ触りながら、大丈夫なのかとしきりに聞いてきた。
そして取得したスキルの事を説明する。
俺は次に水魔法を試した。ウォーターボールとアイスボールを放つ事が出来たが、ウォーターボールは威力を弱めればテニスボール位の大きさで、コップ等にぶつけると飲水が確保できた。強目に魔力を込めると直径50cm位になったので、顔に纏わり付かせる事が出来そうだ。これで窒息死を狙える。
アイスボールの方は握りこぶし大の大きさの氷の塊を生成し、それを投射できた。尖った形も生成できたが、こちらはアイスアローとして使えそうだ。但しイメージする必要があり、その分余分に時間が掛かる。
だが、実戦で役に立てるには、アイスアローとして発動できるように訓練が必要そうだ。
奇襲を掛ける場合は予め時間を掛けて展開できるが、乱戦時は無理そうだ。アイスボールの威力は時速200km位で投射できるので、相当な破壊力が期待できる。
そして試しにファイヤーボールとウォーターを同時に使うと合成魔法が出来た。コップに熱湯を注ぐ事ができたのだ。細かい制御は訓練が必要そうだが、ファイヤーボールの威力を上げると温度が上がり、熱湯も出せる。つまり風呂のお湯がこれで作れるのだ。取り急ぎ検証したが、後日もう少し突っ込んで練習と研鑽をしてみたい。今は熱湯を攻撃に使える事が分かった。火魔法は延焼の恐れがあるから使い所を考えなければならないので、熱湯は戦いの幅を広げる事が出来るのだと思う。
俺が水魔法を使え、更に即興で合成魔法を行ったものだからフランカが気絶し掛かっていた。魔法を合成するという発想が無いのだと。俺を見る目がやばかった。俺はお尻の穴をキュッと締め、そちら方面の趣味はないぞと警戒したくなるレベルでだ。
そもそも2属性持ちの者が極端に少なく、ましてや3属性となると10年に1人現れるかの希少さだという。
一通り魔石の抜き取りが終わったので、操っているオークにコロニーへと案内させるのであった。
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