第31話 完了

 領主の屋敷にて討伐の報告を行った。


 キング種を討伐したと告げると、領主が慌ててもう一度聞いてきたのでキングの死体を見せたのだが、キングだと確認すると項垂れていた。状況がかなり悪く、領主は俺達に驚きを隠せられなかった。40代後半から50代前半位の紳士だ。


 キングが居たので倒したとはいえ、複数のコロニーが有る筈だと狼狽えていたのだ。

 ジェネラルが5体いたから、少なく共後4つは小~中規模の集落がある可能性が高い。

 ただ、ジェネラルが不在なので、指導者がいないと烏合の衆の筈なのが幸い?だ。

 一応領主も潰したコロニーを見に行く事になり、領主とその護衛とでコロニー跡を見に行った。やはりその規模とオークの多さに狼狽えていた。


 そして一緒に王都に行く事になった。理由は国に正式なオークの討伐依頼を出す事になったからだ。

 ジェネラルより上の上位種がいた場合は、国が討伐隊を派兵する事になっているという。基本は騎士団が任務を担うのだと。


 俺達にも城へ一緒に行くように言われた。キングの討伐について報告をする為だという。

 今から直ぐに行くと。護衛依頼として別途依頼を出すと言うので、了承した。

 馬車は脚の早い馬を連れてきて、2頭立てで、馬車が3台の構成だ。


 俺とミザリアが領主の馬車だ。ゼツエイ、フランカ、イリア、ミリアが後続の馬車。最後尾は町の兵士数名と騎馬の兵士数名が付き従う感じだ。


 おおよそ2日間だが、コロニーの発見があまりにも早く、かつ戦闘時間も極めて短かったお陰で、恐らく暗くなる前に隣町に到着するだろうと。

 出発したのは16時を少し回った位だ。本来はこの町に1泊して明日の朝出発するのだが、事態は急を要した。たかだか2時間だが、王都へは夕方少し前に到着できるが、この町を翌朝出発するのでは登城が1日遅くなるとの事で、急ぐと言うのだ。


 俺は領主と向き合う形で座っている。何故か俺達が進行方向を向いている。俺達の方が目上扱いだと知るのは後の事だ。ミザリアがずっと俺の手を握って離さない。まるで離したら何処かに行ってしまう子供のような扱いだ。まあ、先程は暴走したから仕方がない。手綱を離さない感じかな。俺の手綱は既にミザリアにしっかりと握られている。


 彼女の手は俺より一回り小さく白く滑らかだ。そして温かだった。

 俺はミザリアの手を握り返している。心臓の鼓動が伝わっていなければ良いと思うが、密着していて彼女の心臓の鼓動が感じ取れた。彼女の鼓動は俺よりも少し早かった。彼女もドキドキしているのかな?


 ミザリアは虫も殺さぬ位の優しく穏やかな顔で、普段はゼツエイに対して饒舌になる以外はとてもおっとりとしている。時折怒らせると一気に冷たい怖い顔の修羅になるが、麗人の怒った顔もまた男心をそそるものがあったりする。


 イリアとミリアには悪いけど、今はミザリアさんが一番好きだ。

 彼女を抱きたいが、もしもキスを求めて拒絶されたらどうしよう?という思いからキスをするのを躊躇し、その先へ、つまり体の関係に進む事が出来ずにいた。ボディータッチも出来ないのだ。


 なんだかミザリアに手を出すのは、穢してしまうようでしてはいけないとブレーキが掛かっている。ただ、来たるべく変異が終わったらプロポーズするんだと己の心に誓ってはいる。


 奪ったスキルを使えば恐らく口説き落とし、体の関係に持ち込むのはそんなに難しくはないと思っている。しかし、スキルに頼らずちゃんとプロポーズを受け入れてくれるよう頑張ろうと思っているが、なんの事はない、単なるヘタレだ。


 ミザリアの俺への想いは、例えば体を求めて迫り、肩を抱き寄せれば自らベッドに倒れ身を任せる、そんな状態なのだが、勿論俺はその事を知らない。


彼女はいつまでも手を出して来ない友安に何故?と思っている。自分の魅力が足りないのか、大事にしてくれているのか、はたまた今は転移したばかりで余裕がないのか!?等々色々と考えてしまう。


彼女もまた受け身で、友安が唇を奪うのを待っているのだ。勿論彼女から誘うような真似は出来ないが、既に相思相愛なのだ。


ミザリアはというと友安の事は、紳士的な行動を取っており、自分に対して女性として物凄く優しくしてくれるし、そして先の戦闘で己が如何に狼狽え、己の心がどれ程捕われているのか認識したのだ。初めての恋心に彼女もまた友安への対処について、どうすればよいのか分からずにいた。自分からキスを求めるなんてとてもではないが出来ない。そのようなはしたない女は嫌われるだろうし、寵愛を貰えない!そんな感じだ。


 友安が一言、君を愛している、君が欲しいといえば彼女は友安に抱かれている筈なのだが、2人共手を繋ぐのが精一杯で、深い関係に踏み込めずにいた。2人共にうぶだったのだ。


 道中領主に俺の事を根掘り葉掘り聞かれたが、正直に話した。召喚者だと知ると大いに驚いていた。修行の一環で今回の依頼を受けたが、実りのある依頼となったと伝えると、胸を撫で下ろしていた。


 本来SSSランクの者が対処するような相手だとの認識だからだ。

 そうして予定通りに隣町に到着し、今晩の宿に向かうのだと思っていたが、この町の領主が弟だとかで、その屋敷に押し掛ける事になった。そうして領主の屋敷に1泊する事になったのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る