第21話 逃亡
兵士がなだれ込んで来て、隊長と思われる者が俺に訪ねてきた。
「お前がやったのか?」
「俺はこの部屋の客で、こいつ等がいきなり襲って来たんだ!」
「ちっ、約立たずが!手間を増やしやがって!この無能者達を国家反逆罪でひっ捕らえろ!何が勇者だ!無能が!こいつを殺してもう1度召喚をするぞ!やれ!」
兵士達が一斉に襲い掛かって来たので、俺も剣で応対しながら入り口にファイヤーボールを放ち、兵士を蹴散らして行く。一瞬の隙に部屋を出て階段を駆け降りる。フランカが異変を察知し一緒に降りて来た。
「裏切られた!逃げるぞ!」
フランカは冒険者の服のままで帯剣をしており、直ぐにでも出られる。
ミザリアとゼツエイも異変に気が付き、俺の慌てように驚いていた。
「坊主、どうしたのじゃ?」
「国に裏切られて襲撃を受けたんだ!逃げるぞ!」
更に兵士達が食堂になだれ込んで来たので、急ぎ俺の収納に入れていた斧を取り出してゼツエイに渡す。
皆で兵士達を蹴散らし、宿の前に有った兵士達の馬車を奪い、ミザリアが馬車を発進させた。
俺は馬車の中で説明をした。俺のスキルスティールの事をだ。城で検査した時にはまだ何もスキルを得ていなくて、外れの者として再度勇者召喚を行うのに、俺を捕らえてあまつさえ殺そうとしたようだと。時間がないので襲われた理由を手短に話した。勿論詳しくはこの危機を乗り越えたら話すとしたが、今はそれで十分だった。
他の馬車は俺がファイヤーボールで燃やし、宿の入り口にファイヤーウォールを展開して注意を逸らす。宿が燃えてしまうだろうが仕方がない。騒ぎから宿泊客が目を覚まし、無事に避難する事を祈ろう。
先ずは町を強行突破して出る事とした。
暫くすると兵士達が馬で追ってくるのが見えた。
俺はファイヤーボールで牽制している。今の所兵士を誰も殺していないはずだ。
城門が閉ざされていたので、俺がファイヤーボールを放つ。御者をフランカに代わって貰い、フリーになったミザリアも魔法を放つ。
「森の守り人たるミザリアが命ずる。行く手を阻むかの門を破壊せよ!エーアーボール!」
かなりの魔力を込めたようだが、偶然俺のファイヤーボールと合体し、禍々しい威力のファイヤーボールになった。その為、城門に当たると一瞬で破壊したので、チャンスと見てそのまま突破した。意図せずに合成魔法になったようだが、実際はタイミングがシビアな高等魔法だ。城門を突破した後、俺はかなりの魔力を込めたファイヤーウォールを展開する。何故か大量の魔力を込める事が出来た。これで追手はあの城門を暫くの間は出られない筈だ。
俺達はひたすら走り、馬がバテる頃に休憩を入れたが水が無い。ミリアに頼んでウォーターボールを出し、馬に水を飲ませた。俺達の分迄は無いが、幸い誰も喉が乾いていない。
先ずは隣町を目指す事にした。
昼頃に町に着いたが、皆腹を空かせていた。念の為馬車を脇道に持って行き、フランカに食料調達をお願いした。フランカにちょっとした女装をお願いしたのだ。嫌がるかと思ったが意外と乗り気だった。
皆顔を見られているが、フランカだけは女装をすればバレない。町に入ったは良いが、その間に手配書が回りそうなので先ずはフランカのみ町に入り、女性用の服を買って着替えて貰う。元々中性的な顔立ちなので、女性の服を買うのも少し違和感がある程度で、男装の麗人と言えばそう思えなくはない。ただ武器は懐のナイフだけになってしまう。後はスカートの中にというか、脚にベルトでナイフ等を仕込むくらいか?
暫くして戻ってきたフランカは、馬の為に飼い葉と、皆の食料を多目に買ってきてくれた。馬に飼い葉を与えてから出発だ。幸いまだ兵士に追いつかれてはいない。
フランカは髪型も女性のそれに変えており、どう見ても見目麗しい女性だ。胸元にはミザリア達の着替えを入れて?超巨乳にしていた。流石に目立つのである程度にしていい感じにするが、どこからどう見ても女性だ。思わず告白しそうになる位の美貌だが、俺は首を振る。騙されるな!これは無理に?頼んだフランカの女装姿なのだと。
そうして必要物資を補給する為に立ち寄った町を出立し、取り敢えず国境を目指して進むのであった。
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