第46話終わりか始まりか



サハラ砂漠の中央近くに、俺は立って居た。


緊急依頼で、半強制的に連れてこられたのも無理はない事件だった。

遠く1キロ先に、赤い絨毯が広がっていたのだ。

俺が召喚した飛行部隊が、ちょうど戦闘の火蓋ひぶたを切た。

遠くで土煙とかすかな爆音が聞こえだした。



敵との距離半分まで地上部隊が迫っている。

そのまま前線を維持していければ、俺は勝つと思っていた。

ドラゴンなど強い召喚獣は、まだ召喚していない。


あいつらは使い過ぎた。あいつらだと1日で終わるので面白みがない。

今までためて使わなかった魔石を、召喚して戦わせる事で面白くなっている。




俺の上空には、2機のヘリコプターが旋回しながら俺を撮っている。

遠い1キロ先にも、1機のヘリコプターが同じく旋回して、確か軍用ヘリにも見える。


少数の1万程が迂回したのだろう。俺の方に向かっている。


俺はその方向に、レイザー光線を幾重にも放つと数秒でサラマンダーは全滅ぜんめつした。


別方向からも現れたので、その方向にもレイザー光線を放つ。

そこには、1万程の死骸が散乱する事になった。

魔石回収に数百のバードを召喚して向かわせる。


このレイザー光線も、火魔法と光魔法がマックスになった時に、新たに手に入れたものだった。



バードが戻って来た。

回収されたサラマンダーの魔石を3割を召喚。

残った魔石をサラマンダーに食べさせレベルアップをはかる。

その数6千体のサラマンダーを戦闘へ向かわせた。


しばらくすると傷ついた怪物が、戻ってきた。

魔石に戻し収納しておくと、5時間位で傷はいえるだろう。

そうすれば、再度前線に投入する予定だ。

敵の数が多すぎる。少しずつだが後退しているみたいな気がする。

それでも俺の召喚獣は、倒されていない。

更にレベルアップをして強くなっているだろう。

時間を掛ける程、俺らが有利になるはずだ。




どうやら、日が傾きだした。

上空のヘリも、いつの間にかいなくなっていた。

後方の砂漠でキラキラと光っているから、地上の撮影部隊が撮り続けているのかもしれない。

そうだな、少し寒くなってきたな。


防寒服を取り出し、着込む事にしよう。

ついでにサンドイッチと缶コーヒーを取り出し、がぶりと食べながら戦闘風景を見続けた。



もう周りは真っ暗だが、遠くでは爆音と火柱が見えている。

ポケットからベルが鳴り出した。


「俺だ・・・ああまだ戦っているよ・・・そうだな分からないな・・・それでどうしろと言うんだ・・・俺の責任か」


長い間、話してしまった。

どうやら早い段階で、終わらせて欲しかったみたいだが、そんなに上手くいかせてたまるか俺の好きなようにさせてもらう。

そして、一夜が明けたが戦いはまだ終わらない。



サラマンダーは、戦いの場を大きく広げ始めた。

それで挽回できると思っているのか、俺はすでに遊撃隊を配備していのに気付いていない。

サラマンダーの必死な戦いは、分からないではないがもうすでに詰んでいる。

俺の指令の従う召喚獣達は、力をつけ始め1対複数でも対応できるようになっていたのだ。

どう足掻あがいても挽回はない。



どうやら最終場面を迎えたみたいだ。

サラマンダーの大群が減り始めて、俺は追加部隊を送り込んだ。

更に減り方が激しくなった。

俺は召喚獣達に、げきを飛ばすとサラマンダーは一掃される場面になった。


残るはダンジョンのみ、入口付近で戦闘は続いている。

俺はそれを目の前にしている。


「お前達、最後の戦いだー。ダンジョンコアを壊してこい」


怒涛どとうのように入口に流れ込んで行く。サラマンダー達は踏みつけられている。


刻々と俺の脳に、サラマンダーが倒される場面が見えていた。

そろそろ、コアとの戦いは終わりそうだな、いま砕け散った瞬間を見た。


コアを壊した召喚獣が、俺に話しかけてきた。


『ご主人さま、コアを壊しました。どうかわたしに名を下さい』


「そうか、お前の名はバーミアだ皆を引き連れて戻ってこい」


『ありがとうございます。仰せのとおりいたします』


魔石召喚師がレベルアップして、新たな能力が開花した。

名が付いた召喚獣に新たな名を魔力を込めて付けてやると、更なる知能アップが出来るようになった。

それは、人間に等しい知能だった。



戻って来た召喚獣達を、魔石に戻し収納していると遠くから音がする。


迎えのヘリが、ようやくやって来たようだ。

乗り込んでこれで帰れるんだ。

そう思いながら深く座り、物思いにふけって目をつぶった。

数分もしない間に寝てしまった。




世界では、今回の戦いを24時間リアルタイムで流されていた。

最初は興味か好奇心で見ていたが、次第にそれは驚愕きょうがくに変わった。

怪物の恐さを実感して、俺に対しても恐怖を覚えだした。


いつしか俺は、魔王と2つ名で呼ばれるようになった。

その動画は、すでに拡散して見ていない者がいない程だ。

そして俺の話題は尽きない。


何処で手に入れたのか、小中高の卒業アルバムも流出。

俺の同級生と名乗る人物が、多くインタビューに答えていた。





5年後、世界のダンジョンは攻略されクエストも終わった。

その80パーセントが、青木優あおきゆうによって攻略されたものだ。

佐々木理華子ささきりかこは、アメリカ大統領に立候補している。

今、米大統領選挙の投票が行われている最中である。

全米では、すでに佐々木理華子が大統領確定だと報道されていた。




そんな世界の今は、力ある者と弱い者と明確に分類されるようになった。


俺のような人間が、政治や経済を回すようになっていた。

しかしトップ俺が、スローライフをしている為、世界の平和が続いている。



同じ能力者でも、俺には適わない。

しかし、そのトップが居なくなった時は、どうなるのか誰も知らない・・・




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

現代ダンジョンへ挑む魔石召喚師 @katuniro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ