第32話火の鳥




前回の戦いが終わってすぐのことだった。

スウェーデンからジェット機に乗って、イタリアまでやって来たのは昨日の夜だった。

飛行場では、報道関係者に取囲まれて偉い目にあった。


「なにか一言をお願いします」

「どのように対処するお積りですか?」


俺も、まだ詳しい情報は聞いてないのに、ひつこく食い下がってきた。

誰かが俺の事を報道関係者に洩らしたに違いない。

どうにかギルド職員や飛行場の関係者の手によって、守られるように車に乗り込んだ。


誰だ、髪の毛を抜いた奴は・・・




イタリアのエオリア諸島に属するヴルカーノ島。


そこに俺は居た。

そして約21キロメートルの火山島を見上げていた。


あの噴火口ふんかこうに、火の鳥がみついているらしい。


なんでも噴火口の中に入り込んでいるらしい。

そして遠くの街を襲い、たらふく食って帰ってくる。



ここに住んでいた島民は、すでに避難している。


イタリア軍は下手に攻撃して、火山が噴火でもすると困ると考えている。

噴火すれば被害が出ていない島が壊滅かいめつしてしまう。

そしてどんな二時災害が起きるか分からない。

なので火の鳥が出て来るまで待機していた。


出て来た火の鳥は、強かった。全ての戦闘機を墜落させていた。


海からのミサイル攻撃も、振り切る速度で飛ぶ火の鳥であった。

軍隊はお手上げ状態だった。

そして反撃を食らって、艦隊も全滅させていた。




俺は、レッドドラゴンだったドラ丸を召喚。

赤銅色しゃくどういろのボデーが神々しく輝いていた。


『ご無沙汰ぶさたしているな主殿』


「ああ分かっているよ。召喚しなくて悪かった。今度はあの火山に棲みついた火の鳥をやっつけてくれ」


鳥如とりごときに、何の事はない』


「そうだろう、お前なら楽勝だからな」



そんな会話をしていると、火山から火の鳥が急に飛び出してきた。


ドラ丸の頭上を凄いスピードで旋回して、「キィーーィ」と鳴き去っていった。


『ふん、小癪こしゃくな奴だな。覚えていろ』



ドラ丸はうなずく、ふわりと舞い上がった。


あっという間に小さくなっている。

戦っている事は分かるのだが・・・

しかし、どっちがドラ丸なのか全然分からない。

そして、何度もぶつかり合っている。


そして、互いの火の攻撃を避けていた。



追加のドラゴンを出そうかと考えていたら・・・


『余計なことはしないでくれ』と念話ねんわしてきた。

プライドの高い奴だ。

それにしてもあなに離れているのに、俺の考えが分かるのか・・・



ああ、空高い所で大爆発が起きていた。

ドラ丸は死んでいない。召喚獣とのつながりで生きていることは分かっていた。



『待たせて申しわけない。その代わりにお土産です』


そう言って魔石を放り投げてきた。

その魔石は、案外大きかった。


『まだ居るようなので、待っててもらえますか?』


そう言って飛び立った。


え!まだ居るって・・・

そして噴火口に、黒魔法の攻撃を放っていた。

これでもかと再度、黒魔法攻撃を放った。


居たたまれなくなったのか、飛び出してきた。


5羽の火の鳥だ。最初の火の鳥より半分の大きさだ。

多分、火の鳥の子供だろう。

1羽が黒球に命中して、木っ端微塵こっぱみじんになっていた。


又もや空中戦なっている。


ほとんど見分けがつかない。

そして大爆発だ起きた。これに2羽が退治された。

残りは3羽だ。



そして1羽がきりもみ状に落下して来た。

海面に大きな水飛沫みずしぶきがたっていた。


あ、死んだなっと思った。そして魔石がムダになった。


残りは2羽だ。



そしてドラ丸が戻って来た。


片手には2羽の火の鳥の首が掴まれていた。

1羽は死ぬ寸前で、もう1羽は元気に暴れていた。


きのいいのは1羽だがどうする』


「好きなようにすればいい」


その途端に2羽の頭をかぶり付いていた。

なんてことをするのだ。そんなことを目の前でするな・・・

あっという間に、2羽を食っていた。

多分、魔石も食っていたはずだ。仕方ないなーー。



ああ疲れた。

あまり睡眠が取れなかったので、イタリアで2日間のんびりと過ごした。

ウフィツィ美術館でメディチ家収蔵のイタリア・ルネサンス絵画を見てきた。

戦い続きだったせいか、なにやら癒された。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る