第29話月がきれいですね
少しワインを飲まされたせいか、予知夢の話をしてしっま。
彼女は大いに驚き、そして大いに喜んだ。
その夜、アメリカの株価の話をしてきた。
どこそこの株が上がった。あそこの株は怪しいとか、そんな話ばかりだ。
「株の予知ってできそう」
「予知は取得して日が浅いから分からないよ」
「頑張って見てね、お休み」
彼女の期待の眼差しが、恐怖を覚えるぐらいにぎらぎらとしていた。
朝日が差込んで、嫌でも眼が覚めた。彼女がカーテンを全開したからだ。
そして彼女が
「どう株価、見えた!」
「ああ見えたよ」
気だるい思いでそう言ってしまった。
どうも予知夢を見ると、体がだるくなるようだ。
株価の変動が激しかった物を、メモに書き留めて。
彼女はいそいそと部屋から出ていった。
昔の夢で鮮明に覚えているのが、河童に追いかけられた夢だった。
小学生の頃で何日も続いてその夢を見た。怖かった事をよく覚えている。
今では夢を覚える事は無くなった。いや覚えようともしたかった。
それが予知夢取得で鮮明に覚えている。なので予知夢の記憶が再現されると驚いてしまう。
そして、今ではようやく慣れた気がする。
今日は庭先で、火魔法と風魔法の複合魔法を試している。
広範囲の攻撃魔法に出来ないかと考えている。
その一つが火災旋風を魔法で再現できないか、再現できればコントロールする。
それが目標で、目の前で小型竜巻を再現している。
今は3つの竜巻が思うように動かせるようになった。
しかし竜巻の中に火をイメージして点けると、すぐに消えてしまう。
中々の難問だ。再度、集中しながら考えている。
何処がいけないのか、何処がよかったのか・・・
そうこうしていると夕日が見えてきた。結構長い時間やっていたようだ。
そして彼女も帰宅したようだ。昨日より早い帰宅だ。
彼女は俺に会うなり「凄かったは、今日の株価」
「今日は私の全財産と借金をして注ぎ込んで大儲けよ。手に汗をかくって本当ね」
「もし間違いだったら如何するつもりなんだ」
「スキルに間違いは無いは、私達が証明してきたじゃないかしら」
「君の仕事はどうなんだ」
「順調よ、その為のお金なの」
彼女は何か思惑が有るようだ。ギルドマスター以上に何かを望んでいる気がする。
少し彼女が心配だ。
彼女と共にギルド本部にやって来た。
ギルド幹部による始めての合同会議で、俺は相談役として参加。
幹部は俺達が育てた育成者20人と政府関係者2人。
幾つかあった育成プログラムは
彼女の話が始まった。
育成者達の顔付も勇ましくなって、議論を交わし合っている。
そして俺の話題になった。怪物のデータ化を進める為のデーターの構築が必要だった。
俺に多くの怪物を鑑定して欲しいが、それが結論だった。
国内の育成拠点以外をメインに怪物を鑑定する。
弱点を早急に鑑定してほしいのが本音のようだ。
そんな内容だったので、俺は了承した。
次の議題は、国際ギルドに加盟した各国の育成者派遣を誰にするかだ。
幹部達は子飼いの育成候補者を
派遣される国が多い為に、次々と早く決まっていく。
そしてようやく合同会議は終わった。
久し振りに会う育成者達は、俺に握手を求めて短い会話をしてきた。
中には泣きだす者も居た。昔の苦労が報われる思いだ。
彼女の自宅で、しばらく溜まっていた報告書を作成し終わった。
全文は日本語だが、誰かが英語に書き換えてくれるらしい。
「ああ、疲れた」なんだか肩がこった。
彼女は21時過ぎに帰宅。
「株の話はしないのか」
「株は毎日、大儲けすると怪しまれるでしょ。程々がいいのよ」
「分かったよ」
「・・・・・・」
「今夜は月がきれいですね」
「なにを言い出すの、恥ずかしいでしょ」
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