第20話討伐要員育成プログラムⅢ




そこはニューヨーク郊外で、人が立ち入らない山のふもと


目の前では、育成者候補ビルとスコットが進化前の大トカゲと戦闘中だ。


「噛み付きだけに注意を向けるな!尻尾が急に襲ってくるぞ」


2人はすでに進化した怪物を5体を討伐している。

大トカゲに対しても充分なレベルである、只経験が少ないだけ。


大トカゲが噛み付こうと口を開けた瞬間に、偶然に風斬りが命中した。

とっさに放ったことは、見ていて丸分かりだ。


「風斬りを放つ場合は、狙いを定めてから放て、ムダに使って疲れるだけだ」


ビルは当たったからいいじゃん、みたいな顔でにらみ付けて来た。

口から出血して苦しむ大トカゲに、走り寄りったビルが大剣を叩き付ける。


左前足の根本から切断され、のた打ち回る大トカゲの腹に、もう1度風斬りを放ち当たった。

大きく腹を引き裂かれて内臓のようなものが出てきた。

しばらく足を痙攣けいれんさせていたが体ごと消えていった。


「何処が間違っていたか、何処が良かったか2人で話し合うように」


「20分、休憩しなさい」


後32体居るのだから、2人には頑張ってもらわないと。

ココから10キロ先に地下迷路があるが、地上の怪物を殲滅せんめつする方が先だ。


補佐官ゲイツは、先の戦闘内容をノートパソコンに打ち込んでいる。

それと無線機での定時報告もしている。



ニューヨークのダンジョンは、怪物の数が増えるのを待って、次回のプログラムに使う予定だ。


佐々木「休憩は終わりよ、さあ立って、この方向8キロにサラマンダーが居るわ」


育成者候補ビルとスコットは、重い腰を上げて駆け出した。




スコットが風斬りの有効距離から、風斬りで攻撃を仕掛けた。

頭部を狙った攻撃だったが、着弾前にサラマンダーが振向き肩に当たり、肩を斬り裂いた。

中々上手くいかない。


素早く体勢をこちらに向けて、体から炎が立ち上がった。

それは体全体をおおい尽くしている。あたかも怒りを表しているようだ。

あ、肩の傷が回復している。それが奴の特殊能力だった。


そして口から炎の球が発射されたが、2メートル先に着弾して燃え上がっている。

その燃える炎は、スコットの足元に及んだ。

後ろにジャンプして回避していたスコットが、再度風斬りで攻撃する。

又も肩に当たり今度は左前足を切断した。

思うように動けないサラマンダーに、更なる風斬りが襲う。


次々と風斬りの攻撃に晒されて、空に向かって弱い炎の球を発射してから消えていった。


スコットも連続使用で疲れているようだ。


「休憩するか?」


「いえ、大丈夫です」


佐々木「次はこの方向、4キロにハイオークよ」




ハイオークは凄い勢いで向かってくる、鼻が良いから嗅ぎ付けられたらしい。


ビルは大剣を構えたまま走り出していた。


ハイオークにぶつかる瞬間に、サイドステップしてかわしながら横に大剣を振り抜く。


ハイオークは斬られたヶ所から血を噴出しながら、3メートル移動して倒れこんだ。

首の傷から大量に出血していて、そして消えた。

本人は首を切断する積もりだったが、結果ヨシだ。




サラマンダー討伐で別れたゲイツは、車へ戻った。

ココから近い道路で待ち合わせをしている。

その待ち合わせポイントへ向かっていると、自然に内輪話なった。


ビルの父親は、母をかばい怪物に殺された。

連絡を受け急ぎ帰ったが、その怪物はすでに討伐されていた。

やるせない気持ちから、怪物討伐隊に参加したがコアは発見出来なかった。

なので、今回のプログラムには期待を込めて参加した。


ケントの連絡で、即参加を決めたそうだ。



スコットはオタクだった。

自身の風魔法に歓喜した、廃墟はいきょの壁相手に風斬りを試して喜び。

何度も何度も練習したが、一向に一定以上強くならなかった。

ケントの話を人づてに聞き、居ても経っても居られなくなり。

ケントへ直談判、1時間近く熱い思いを話したらしい。


母親は反対したが、父親が「お前が決めた事だ、行って来い」

それは初めてスコットを大人と認めた言葉だったので、泣いたそうだ。

そんな息子の姿を見た母親も、賛成してくれたらしい。




ホテルに戻ると、補佐官ゲイツの同僚が尋ねていた。

書類を渡して、少し話をして帰っていった。

ニューヨークの廃墟ビルを取得した書類と、討伐要員宿泊施設の取得書類。

そこで働く人の書類を確認している。

なんでも30人が宿泊出来る施設で、少し古いが問題無さそうだ。

明日からでも使用可能で、明日からそこが拠点に為るみたいだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る