第18話討伐要員育成プログラム




俺達を監視していた、本部長補佐官ゲイツと海兵隊2人を部屋に招き入れた。


「君達は、まだ怪物を討伐した経験が無いようだ。君達も知っているようだが、今後の状況は厳しいものと為るだろう。君達にも対処出来る力を、与えるチャンスをあげよう」


「なんか物々しい話ですね。そのチャンスとは、何ですか」


「怪物を討伐する手助けをしよう。そしてレベルを上げて、怪物に負けない力を掴むチャンスを与えたい。どうかな、良い提案だと思うのだが」


「どうしてわたしに、補佐官で事務職のわたしには無理だと思いますが、この2人は訓練された海兵隊員なので大丈夫だと思います」


「怪物は手強い、重火器でも対処出来ない怪物が出てくるだろう。あのレッドドラゴンがいい例だ。その為にも対処出来る人材を育ててゆく機関が必要だ」


「それなら、すでに幾つかの機関が発足いてやってますよ」


補佐官ゲイツは、幾つかの機関の名を上げながら説明をしてきた。


「それで成果は上がっているのか、俺と彼女のように活躍出来ているのか?」


「まだ発足して間もないので、今後に期待出来るかと・・・」


「それだと遅いと思わないのか? 経験豊かな俺と彼女が協力しようと言っているのだ」


「分かりました。私はイエスです。わたしのような人間が活躍出来るなら、今後の参考になるでしょう。君達はどうする」


「俺と相棒は勿論イエスだ、なあ相棒」


「OK」


「じゃあ今から行こう」




ニューヨーク地下鉄の東西中心地の壁に大きな穴が開いていた。

今回のアントを出現させた、コアの地下ダンジョンだ。


天井からカサカサと音が聞こえる。

やっぱり現れたのは、1メートル弱のアントだ。

ダークが天井に跳び付き、アントを下に掻き落とすとブラックが前足で押さえた。


「あのアントを容易たやすく押さえ込むなんて・・・凄い! 3人で押さえつけても、押さえ切れないのに・・・そして、どれだけの仲間が死んだことか・・・」


「あのアントのアゴの強さは、鉄でもみ切ってしまう凶器で、電車内でも容易く進入して被害が多く出したのに・・・わたしは信じられない光景を見てしまった」


俺がバールを取り出して渡した。


「首筋を狙って突き刺して、1回でダメなら何度でも突いて仕留めるんだ」


補佐官ゲイツは、バールを首筋に突き立てた。

何度も突き刺した。最初はジタバタするアントも次第に弱まりだした。


10回程突き立てて、ようやく力尽きて消えていった。

緊張と初めての経験で額から、汗が滴り落ちていた。

そして、自身のステータスを確認していた。レベルが1上がり風魔法も2に為ったらしい。


海兵隊の2人は5回で討伐できた、体の鍛え方が違っていた結果だろう。


順調にレベルを上げていく3人は、互いのきずなを深めあった。

休憩中に互いの生い立ちを話し合っていた。

多分、未知なる怪物に対抗する為の仲間意識を高めあっている。

もしかして、深層心理の防衛本能がさせているのかも知れない。


それは互いの不安を消し去る為の手段でもあったようだ。



討伐開始から3時間経過しただろう、アントも50体以上討伐した。


次に現れたのが岩ガメで、若干じゃっかんアントより強いタイプだ。

風魔法の攻撃もものともしない防御力を持っている。


ドクロの行動は速かった。岩ガメの足が一瞬で4本が切断されていた。

大剣を地面に突き刺して、頭を無理やり引張り出しては、両手で口を大きく開き待っている。


この頃は、口で命令しなくても俺の気持ちを指してくれるようになった。


首筋や頭は固いから、口からの直接攻撃ならなんとかなるだろう。


「さあ、3人で口から脳に向けて突き刺して仕留めるんだ」


3人に攻撃をうながすと、3人はバールで口に突き立てた。


アントより頑丈だ。


それは作業で有って、苦行でも有った。

ようやく討伐出来た。



あれから10体の岩ガメを討伐して、コアにたどり着いた。

ここまでで3人は、鉄壁のスキルと土魔法を取得した。

俺も3体を単独で倒したが、土魔法を取得出来なかった。

何か制限でもあるのか・・・



「コア討伐で職業を取得できる、それは強い力だ。職業は何になるか分からない、誰が討伐するか3人で決めてくれ」


互いに見詰め合い、海兵隊員がうなずく。


補佐官ゲイツがコアに向かっていき、魔石を大きく振り下ろす。

コアが消滅して動きが一旦止まるが、振り返り親指を上げていた。



地上に戻った俺は、補佐官ゲイツに本部長マリリンに連絡するよう頼んだ。


補佐官ゲイツと海兵隊2人も同行しての面会を行なった。

内容は討伐要員育成プログラム。


明日の面会が決まり、俺達はホテルに戻った。



ホテルに戻るなり、彼女はノートパソコンで調べだした。

俺はシャワーで体を洗い、浅い湯船に浸かってのんびりしていた。


テレビを付けるが歌番組で我慢だ。


彼女が「警察関係者5人と大物政治家2人、辞任したみたい。これって素早い対応だと思うけど・・・」


「それは簡単だ。係わった政治家はもっといただろう。身の危険を感じたら、切りやすい人ならすぐに責任を負わすのは当り前だよ」


「そう言う物かしら」



「そしてようやく日本も、討伐ギルドに向けて審議中だって」


「そうなのか大変そうだな」人ごとのように言ってしまった。



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