第8話アンデッド




横浜の元町中華街が壊滅かいめつ状態だった。

火の出火しゅっかもあって、焦げくさいにおいが今も漂っている。


「う、これは凄いにおいだわ」


「右側は、見ないほうがいいよ」


佐々木さんは、言われるまま左側を見ていた。


「あ、人魂ひとだまが浮いている」


俺も見た。


「人魂でなく精霊のシルフだ。鑑定結果だから間違いない」


シルフ (精霊)


レベル 2


HP30/30

MP30/30


スキル

敏捷


魔法

風精霊魔法



そして火の玉を放った。


青白く燃えるそれは、火の玉によって消滅。

かたわら居たダークが走り出して、魔石をくわえて戻って来た。

俺は受け取りながら「えらい、えらい」とほめてやる。


しっぽを大きく振って、喜びを表していた。



『なんだよ、おれが取ってこようと思ていたのに・・・』


なにやらブラックがすねている。


「ブラックは、わたしを守っていれば良いのよ。分かった」


『わかったよ。女主おんなあるじ


「又、言った。リカで良いって言ったでしょう」


『ふん』とそっぽを向くブラックであった。



夜空ではキラとレッドと、カータと相棒のシュートが大ガラスと空中戦の最中だった。

シュートはフクロに似た召喚獣で、羽音をたてない夜型の召喚獣。

こんな夜空が得意であった。



そのシュートが、俺の前まで来て『魔石だよ、主』と言って魔石11個を放した。

差出した両手から2個がこぼれ落ちた。


しかし、Boxに収納と念じるだけで、魔石は消えて収納されていた。

本当に便利なBoxだ。


それを見ていたシュートは、『ホーホー』と鳴きながら夜空へ舞い戻って行く。




「シルフが大勢で向かってくるわ」


そう言いながら手をかざして、黒く燃える玉を幾度も放っている。

その玉は、逃げ惑うシルフを追求して命中。黒く燃やし尽くしていた。


物陰に隠れ込んだシルフも、逃げる事は出来なかった。



俺も負けないように、火の玉を放ち続けた。


「コアの周りには、もう居ないわ」


「ダークとブラックは、回収を頼む」


バックを放り投げた。空中で受取ったダークは走り出した。


『バカか、おれをおいてゆくな』


ブラックも走り出した。


そして俺達は、コアに向かって歩き出した。




目の前にコアが光ながら浮いている。


「このコアは、わたしにゆずって」


「ああ、良いよ」


魔石を渡すと、いつ出現するか分からない怪物に警戒する。

そんな俺のかたわらで、意を決した佐々木さんが走りだした。

そしてコアに魔石を叩き、くだけて散ってしまった。



「大変だわ。アンデッドの1体が死霊魔術を使うリッチに進化したみたいだわ。たしか1時間前の出来事よ。だから間に合うかもしれない」


「すると死体をアンデッドにして増やし続けるのか・・・」


佐々木さんが走り出したので、俺も後を追った。




「なんだよ、もう500体以上のアンデッド居るぞ」


変色した肌が痛々しくて、そんな人間だった者が死体を引きずっている。

多分だが、リッチの所へ持ってゆくのだろう。


「ぼやぼやしないで魔石召喚してよ」


我を忘れていた。

舌打ちしながら、戦闘モードに切り替えて魔石召喚をする。


佐々木さんは、汗を浮かべながら黒玉を放ち続けていた。


猪ノ丸が召喚された。その瞬間に状況を判断して、走り出した。

猪ノ丸が凄い勢いでアンデットにぶつかった。

数十のアンデットが空中高くに舞い上がっている。

それでも、猪ノ丸に飛びつくアンデットは、振り落とされている。

そして足で踏み付けられていた。


ブブカも同じように、アンデットを舞い上げて踏み付けていた。


リザードマンのザザは、呪文を唱えていた。

すると空中に水球が8つも出現させて、回転を加えてから放った。

その水球はアンデットは破壊して、次々にアンデットを襲い続けている。


丁度、シュートが戻って来たので「シュート、急いで俺を運べ」


魔石を手放した足に掴まって、夜空に舞った。


「シュート、あの中央だ」


『あそこだね』


リッチは死体の山に向かって、呪文を唱えている。

その作業で、俺には気付いていない。


俺はタイミングを計って手を放した。

右手のこぶしに火をまといながら、リッチの頭に叩き付けた。


もろく頭や胴体まで破壊して、地面まで叩いていた。

「バコーン、バリバリー」と地面に亀裂きれつが入った。


5メートル内は火におおわれて、火が消えた時には燃えカスしかなかった。


「終わった」



『主、魔石を持って来たよ』


ダークとブラックが戻って来た。



キラとレッドとカータも戻って来た。


『なんかあった』


『主、魔石が詰まった袋だよ』



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