第46話 魔法少女の死体、からの連戦(後編)

 幽体のひかりも負けてられないと、気力を振り絞り意識を集中させた。

 そこからのひかりの活躍は語るまでもないであろう。

 衣千香いちかも負けじと戦果を上げる。


 そうこうしている間に南区を担当していた愛織いおりと、中央区を担当していた見知らぬ魔法少女が助っ人として参戦する。

 それに反応できたのは衣千香いちかだけだった。

 ひかりの本体は謎の人格が入っており一切喋れないでいたのと、心乃葉このはも限界間近となっていた。


 そんな状況で愛織いおりひかりを指差し、「これは誰だ?」と衣千香いちかに聞いた。

 それもそのはず、ひかりの本体は業血ごうけつを浴びすぎて、全身が真っ赤で誰なのか判別は不可能なのだ。


愛織いおりさん!それ、ひかりお姉さまですよ!」

「うお、マジか!一体何体やっつけたんだよ」

「多分4桁中盤くらいじゃないかな」

「もういい、ひかり!休んでいろ!もう、見えてる範囲で終わりだからよ」


 そうして、役目を終えたひかりは幽体側が『マジカル・アンインストール』を唱え、俯瞰視点は解除された。

 まだ戦っているが、明らか業泥ごうでいの数は減っていた。

 視界が血で染まって見づらいと思いながら見知らぬ魔法少女を見ていると、の詠唱を始めた。


「暴れ狂え!『マジカル・ファイアメテオ・マルチプル!』行けー!」


 2つの巨大な隕石が召還されたかと思えば発火しながら業泥ごうでいを縦横無尽に体当たりしていく。

 その魔法にひかりは見惚れてしまっていた。

 カッコイイ!自分も使いたい!という気持ちが高ぶり、いつか自分も使える様になるのかと期待に胸が膨らんだ。


「これを使ってみたいのかい?」

「はい!」

「これは10年くらい魔法少女を続ければ使える様になるさ」

「頑張ります!」


 後輩らしく可愛く言ったつもりだが、全身真っ赤である。


「がんばれよ!」


 そういってひかりの肩に手を置いた、業血ごうけつがねっちょりと付く肩にだ。


「あ、業血ごうけつで汚れ──」

「汚れてなんてないさ、『マイジカル・クリーンアップ』、ほらね」


 瞬時に綺麗になったひかりはその魔法も欲しくなった。

 よくよく見ればショートヘアの同年代っぽい女性なのだが、雰囲気が大人びている。

 まさにお姉さまと言った感じの優雅な立ち振る舞いに、ひかりは顔が赤くなり思考も鈍り始めていた。


 『まさか、これは恋!?』


 あえて言おう、勘違いであると!

 だが、彼女はひかりが倒れそうになる所を寸前で受け止める。

 それはまるで演劇の舞台の様な支え方で、そのせいかはわからないが何かパチパチとした閃光が至る所に見え始めた。それは相手の魅力、魂の輝きだと信じ、目が離せなくなったのだ。


ひかり!どうした顔が赤いぞ、ま、まさか!」


 ひかりは目線を合わせるだけで動機が止まらなくなってしまった。


「病気になってしまったか!早く横になるがいい!」

「あ、病気じゃないと思う……」


 ひかりのその言葉に彼女は真剣な顔で答えた。


「病気だよ!魔法少女が唯一かかる病気、魔力過剰循環症だ!」

「え?」


 ※説明しよう!魔力過剰循環症とは、短時間に保有魔力分以上を使用した場合に起こる一見風邪の様な症状だ。魔力と幸福値は密接な関係にあり、魔力は幸福値から、幸福値は業血ごうけつの浄化で回復するぞ。今回のひかりは浄化しながら魔力を多量に消費した為、実に保有魔力5回分は使用した事になるぞ。魔力の使い過ぎには気を付けるんだ。


「うぅ……そう言われると急に目が回りはじめましたぁ……(ばたっ)」

ひかりひかりいいい!!」

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