第45話 魔法少女の死体、からの連戦(中編)

 心乃葉このは優々菜ゆゆなだった物と衣千香いちかを守る為、魔法防御結界マジカル・リジェクションを張った。

 それを見届けたひかりは少しほほ笑むと、麻月まつきから言われたマジカル・スペルを順に発動させる。


『マジカル・アサルトライフル・パッケージングセット!』


 ※説明しよう、マジカル・アサルトライフル・パッケージングセットとは、アサルトライフルで撃ち抜いた業血ごうけつを球体にパッケージングし、呼び寄せる事ができるぞ。これで回収も楽々だ!だが、一発当たりの幸福値消費が多くなるから要注意だ。


『マジカル・アサルトライフル・マルチプル!』


 ※説明しよう、マジカル・アサルトライフル・マルチプルはアサルトライフルを詠唱者の限界まで多重展開するぞ。いわば●ットや●ァンネルのようにアサルトライフルが浮いて攻撃できるぞ。ひかりの場合はどうやら10丁の様だが、これにより幸福値の消費は時間当たりで減るから要注意だ。かなり消費は激しいぞ。


『マジカル・インストール!』


 ※説明しよう、これはなんだ!?わからん!


 最後のマジカル・スペルを唱えた瞬間、胸元にこっそり付けていたペンダントが淡い青色の光を発し始める。

 それと同時に、まるで幽体離脱をしているかの様に、第三者視点に切り替わる。

 自分の体を俯瞰的に認識し、自身は裸の状態となっているが、どうやら誰にも見られていない様だ。


 このペンダント(※6話参照)は、麻月まつきからプレゼントされた物で常時着けていて欲しいと言われ、その通りにしていたのだ。


 だが、自身の体はひかりの自由には動かせないでいた。

 その代わりというか、別の人格が乗っ取っている様だ。


 だが、そんな事態は業泥ごうでいには関係の無い事だった。

 業泥ごうでいが飛翔し、心乃葉このは魔法防御結界マジカル・リジェクションに向かって突進してくる。

 ようやく一匹目のお出ましだ、という所で、ひかりの視界に入った業泥ごうでいに、四角い枠が映し出された!

 まるで戦闘機のロックオンみたいだと思った瞬間、マジカル・アサルトライフルが火を噴いた。

 そして、血が入った小さな球体がふよふよと飛んできて、ひかりの口に収まる。


 その瞬間、幽体化した方のひかりにその反動がやって来た。

 どこぞの誰かも分からない相手の記憶がひかりに襲い掛かるが、これが何体くるのか想像もつかないと考えると冷や汗が出てくる。幽体なのにだ。


 そうして始まったタワーディフェンス戦。

 後の世には『依々木塾の死闘』と呼ばれるこの戦いに、勝者など居なかったのだ。


 幽体のひかりは次々と現れる業泥ごうでいを目視で破壊指示を与え、それをマルチプルで増えたアサルトライフルが射撃する。最初は単発で凌いでいたのだが、次第に浄化が苦痛になってきた頃、指示漏れが出てくる。

 それに反応したのはひかりの本体だ。

 ひかりの本体の射撃の腕は正確無比でまるで機械の様に次々と撃ち抜くのだが、何故か時々、幽体のひかりに向いてウィンクをする。そしてその行動にどこか見覚えがあるひかりだったが、それを深く考える余裕なんて無かったのだ。


 そうこうしている内に時間は20分を経過した頃、撃ち漏らしが深刻になるレベルになっていた。

 ひかりの本体はマジカル・ハンドガンを召還して、両手に銃をもって応戦する。

 魔法防御結界マジカル・リジェクションにへばりついた業泥ごうでいや、足元に来たのはマジカル・ハンドガンで応戦し始めたのだ。


 だが、業泥ごうでいは飛翔し、魔法防御結界マジカル・リジェクションに向かってくるのを撃ち抜いているのだから、パッケージングされなかった業血ごうけつの残りが、ひかりを襲い続けていた。

 まさに血まみれという状況で、時々足元が覚束なくなり、踏ん張れない事態に陥っている。

 もう、本体も限界だと言う状況で、連続的に浄化し続けている幽体も限界に達し始めていた。


 その時、魔法少女の掛け声が声高々に響き通った。


『マジカル・デスサイズ・マルチプル!』


衣千香いちかちゃん!』


 ひかりは浄化しすぎで意識が飛びそうになりながらも名前を呼んだが、幽体では声が届かない様だった。

 よく見れば、傷口が塞がり復活した衣千香いちかがそこに居た。

 そして、衣千香いちかのマジカル・デスサイズは強力だった。4のデスサイズがグルグルと自律的に回転し、近くの業泥ごうでいを次々撃破していく。


ひかりお姉さま!お待たせしました!衣千香いちか、復活でうッ(か、噛んだ)」

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