第44話 魔法少女の死体、からの連戦(前編)

 魔法少女の死体──

 それは業泥ごうでいを引寄せる餌とも言える。

 業泥ごうでいの嗅覚は一つの町位の範囲を網羅するほどに魔法少女の死体を嗅ぎ付ける。

 実際は魔法少女が死ぬときの魔力の散布を感じ取っているのだが、それが明らかになるのはまだ後の話だ。

 今の認識では魔法少女の死体が業伽ごうかを呼び寄せ、その結果、それが集まり業泥ごうでい化を経て禍堕まがおちとなり、魔法少女の死体を吸収して禍母まがははへと進化するのだ。


 その状況は壮絶で無数の黒い流星のごとき業泥ごうでいが空を駆け巡り魔法少女の死体に集まるのだ。

 空3割に黒7割と言った比率で、ちょっとした天体ショーにも見えるが、生きている魔法少女にとってはたまったものではない。

 さながら終盤局面のタワーディフェンスの様にいつまでも続く業泥ごうでい禍堕まがおちの群れとの戦いになるのだ。


 この町で魔法少女が最後に死んだのは最終魔力兵器暴走の余波が来る少し前の事だ。

 あの時、最初に死んだのは潜伏していたテロリストに洗脳された魔法少女だった。その魔法少女が他の魔法少女に戦いを仕掛け死んだのだ、すると町中の業泥ごうでいが集まりだした、それを魔法少女達が死力を尽くして全てを退治したのだ。だが、そのタイミングで最終魔力兵器暴走の衝撃波が街を襲った。魔法少女達は戦いに疲れた体に鞭打って街に防御結界を張ったが一人、また一人と倒れてしまった。その時点での業泥ごうでいは先の魔法少女の死亡時に一掃出来ていた為、さらなる被害はなかったという話だ。


 今の大人にすれば、その無数の業泥ごうでいが空を駆け巡る光景は最終魔力兵器暴走のトラウマが蘇るトリガーになり、少なからずそれが影響して更なる業泥ごうでいが多く生み出されてしまった。

 結局、当時よりは人口は減ったものの、当時よりも多い業泥ごうでいが集まるという事態になる。


 そして優々菜ゆゆなの死は他の魔法少女全員が感知していた。

 誰が死んだかが直感的に分かるのだ。

 実際は魔力の散布を受ける事で分かるのだが、先に述べた通りそこまで研究は進んでいない。


 各地に散らばった魔法少女達にも役割はある。

 死体に引き寄せられそうになった業泥ごうでいは近くの業泥ごうでいと呼応し、禍堕まがおちに進化しようとする。

 それに対応すべく各個撃破して行かなくてはならない。

 先のひかりがHOTLINEで連絡したのは、各地域の担当を決める為であった。

 尚、北区も現地以外にその役割が必要となる。


 現地担当──

 ・御影みかげひかり(マジカル・ホワイト)

 ・三戸森みともり心乃葉このは(マジカル・リーフ)

 ・五街道ごかいどう衣千香いちか(マジカル・ノアール)※ただし戦闘不能


 北区担当──

 ・時雲ときぐも愛理らぶり(マジカル・ユリ)


 南区担当──

 ・宿根やどりね愛織いおり(マジカル・カスミ)


 東区担当──

 ・西表いりおもてみちる(マジカル・アイリス) ※先代北区担当(妊婦さん)


 西区担当──

 ・?? ※先代西区担当


 中央区担当──

 ・?? ※先代南区担当


 このメンバーを見て、不安に思った麻月まつきひかりに連絡を入れた。


「今こそ、アレを発動させるんだ!」


──────────────────────────────────

▼タワーディフェンスとは?

 ゲームシステムの一種。敵が通るルート付近に迎撃ユニットを配置し、倒し切れば勝利。

 進行ルートを突っ切られたら負け。所持金に限りがあり迎撃ユニットの配置に制限がある。

 クリア毎に所持金が増えて、更に強い迎撃ユニットを買える、と言ったゲーム。

 有名なので多分ご存じな方が多いかと思いましたが念のため簡単に説明してみました。

 尚、今回、前中後編の三話分割です。

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