第40話 夏期講習からの罠①

 依々木塾の夏期講習──

 如何にもひかりと無縁と思われるこのイベントに三人の魔法少女が集まっていた。

 それはこの夏期講習で禍堕まがおちが発生する可能性が高いとの観測結果から彼女達に浄化依頼が来たのだ。


 ひかり心乃葉このは優々菜ゆゆなはそれぞれそれなりの変装をしたつもりで潜入しているのだが有名人化したひかりは塾に入った瞬間から取り囲まれるという事態に陥っていた。魔法少女にとってそれは活動がし辛い状況となる為、あまり好ましくないぞ。


「なにこれ、なんなのこれー!」


 実の所、市長との結婚騒動は報道規制で字幕が流れただけで名前や姿までは公開されていなかった。


 なのになぜ有名人化したのか。

 それは1学期の中間、期末の1位を奪われ妬んだ者による犯行──ではなく、無自覚な行動が原因だった。

 その者は狩野かりのほとり※といい、1年の頃は常に1位を保持していたのだが、それを奪われた事で、まるで呪いの様に「御影みかげひかり、今に見ていろ」「御影みかげひかりを絶対倒す!」なんて呟き続けていたのだ。

 ※ちなみに、初登場は11話でひかりのクラスメイトだ。あれからずっと業伽ごうかを吐きつつ、どうにか持ちこたえていたぞ。

 狩野かりのほとりは塾内では成績優秀者として有名であったのだが、それを打ち負かしたというだけで塾内では噂が広まり始めたのだ。


 実際、名前を永遠と呟かれれば、周りとしてはどんな人物なのか気になるのは当然だ。

 さらには何故か写真をネットに上げるとネットも端末からも消されるという不思議な現象から「流石天使」「神に守られている」と噂され、印刷物やフイルムから現像した写真が主体で御姿情報が流通したのだ。


 そうして、いつしか塾生のほぼ全員にひかりの写真が行き渡った訳だが、それをどう使ったかは人それぞれだ。

 神棚に飾る者、フィギュアを作成し販売する者、枕の下に写真を入れる者と言った感じだ。

 殆どの生徒はやましい気持ちではなく、勉強の神様、菅原道真の様に崇めていたのだが、一部の塾生はフィギュアを販売した結果、闇ルートで100万超えの値段がついたという噂もある。


 ひかりが当てにできない状況で心乃葉このは優々菜ゆゆなは強力して業伽ごうかを探すのだが、どうにも見つからなかった。

 狩野かりのほとりは呪いの様にひかりの名前を繰り返すが、少量の業伽ごうかを出すにとどまっていた事で、二人の当てがはずれた訳だ。

 こうなると業泥ごうでいが出るまで待つか、ひかりを解放して探してもらうか、当てずっぽうに一人ずつ無理矢理業核ごうかくを吐かすかといった選択になった。


ひかりちゃんなら視えるから解放しに行くべきよね」

「あの人混みをですか?私は嫌です。一人で勝手にやってください」

「あなたね、ちょっとは協力しなさいよ!」

「無理ですよ、塾生全員を敵に回しますか?」

「──難しそうね…」


 その時、心乃葉このはのHOTLINEにメッセージが届く。

 送り主はひかりからで内容は『地下の大講義室に大きな反応あり』だった。

 そう、ひかりはもみくちゃにされながら視ていたのだ。


 二人がひかりの方を向くと、人混みに埋もれる中、ひかりは手を高く上げ親指を立てるサインを見届け二人は地下に向かった。

 だが、案の定とでも言うべきか、地下に通ずる階段は既に業泥ごうでいで埋もれていたのだ。


「これ、もしかすると禍堕まがおち化しようとしてない??」

「不味いわね、建物内部からの発生となると駆除が一段とむずしくなるわ」


 心乃葉このはの一言に優々菜ゆゆなが口角を上げた。


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▼今回4話構成で続けて3話構成が殆ど繋がっています。

 完全に余談ですが今回の写真流通の件ですが過去にコンビニ前で撮られた写真が混じっていたりします。

 それをフィギュア化した物が写真付きで100万の値が付いたそうです。

 ただ、アングル的に下半身は写っていなかったのでそこは想像で補ったとか。

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