第6章

第38話 殺意、からの警告

 優々菜ゆゆなはストレスが溜まっていた。

 ひかりと二人きりになる時間がないのだ。

 すべての時間に心乃葉このはが絡んでくる。

 本当であれば二人きりで会いたいというのにそれが叶わない事に我慢の限界を感じていた。


心乃葉このは、邪魔だわ……」

「どうしたの?優々菜ゆゆなちゃん」

「なんでもないんです!そうだ今日は二人っきりで買い物に行きましょう!」

「何買うの?ゲーム?」


 まさに男子の発想である。


「アクセとかコスメとか、服もいいですね、あっ、下着を買いに行きましょう!」

「それは心乃葉このはちゃんが手配してくれたのがあるから大丈夫」

「まさか、ひかり様の服って全部……」

「うん?殆どが麻月まつきさんの部下の人のチョイスだよ?」

「それならいいんです」


 少しばかり不満そうにする優々菜ゆゆなは次の手を考えた。

 どうにもひかりはファッションに無頓着だ、だからと言ってゲームは優々菜ゆゆなが付いてゆけない。

 買い物が駄目なら、一緒に遊べば良い。

 それならば──


「遊びに行きましょう!」

「どこいくの?ゲーセン?」

「猫カフェとかフクロウカフェとかどうですか?」

「フクロウカフェ!?そんなのあるの?」


 優々菜ゆゆなの思惑はドハマりだった。女子なら可愛いものが好きなはずで、この家にはペットがいない。ならば、絶対に乗ってくるはずだと思い、まさにその通りになった。

 ひかりは目を輝かせて話に乗ってきた。そこには男子心が垣間見えた、そう、フクロウはカッコイイ!の観点で行きたくて仕方がないのだ。だが、実物のフクロウは可愛いのも居ると言う事を、この時のひかりはまだ知らない。


「ありますよ?この近所にも」


 その言葉を聞いた瞬間、ひかりは二階の自室に居る心乃葉このはに向かって大声を上げた。


心乃葉このはちゃん!フクロウカフェいこー!!」

「わかったー」

「そんなぁ……」


 そうして三人で出かける事になったのだが、心乃葉このははどうにも乗り気ではない。

 ちなみに、愛理らぶりは家でお留守番をしていいる。どうやらクロウには興味がないそうだ。

 フクロウカフェへの道中を歩いている最中に、優々菜ゆゆな心乃葉このはを気に掛けていた。

 どうにか排除できないか、できれば永久に。

 だが、そうこう考えている内に、フクロウカフェに到着してしまった。


心乃葉このは……先輩、少しお話があるのですが、あ、ひかり様は先に入っててください」

「そう、じゃあそうするね」


 ひかりが店に入るのを確認した優々菜ゆゆなは路地に入る。

 そこに誰もいない事を確認して『マジカル・トゥーハンドソード』と唱え魔法武器を召還した。

 そして武器を構え心乃葉このはに向けて警告する。


「アナタ邪魔なの。消えてくれない?私達の前からね」

「言ってる事は無茶苦茶ね。何様なの?」

「ただの天才魔法少女ですけど?」

「そう、ただの天災なのね」


 ブチっと切れた音がしたと思えば優々菜ゆゆなが無言で斬りかかろうとしていた。

 だが、不意に頬に冷たい感触が優々菜ゆゆなの行動を制止した。


「つめたっ、なっなに!?」

「何してるの?」


 背後にはハンドガンを優々菜ゆゆなの頬に当てて冷たい目線を送るひかりがいた。

 その眼光には明らかな殺意が感じられる。

 優々菜ゆゆなはそれ恐怖し、思わず武器を解除する。


「なにもしてません、ちょっとじゃれてただけです!」

「そう?それならよかった」


 優々菜ゆゆなは安堵する。

 ひかりがこれほどの殺意を抱くなんて想定外だった。

 そして、もっと秘密裏に心乃葉このはを排除しなくてはならないと考えた。


「次、心乃葉このはちゃんに危害を加える様としたら次は容赦しないからね」


 その言葉を話した時、口元は微笑んで見えたが目は全く笑っていなかった。

 あまりにも冷たい、だがその冷酷さに優々菜ゆゆなはカッコイイ!と惚れ直したのだ。


 ひかりは南区担当の愛織いおりから優々菜ゆゆなを預かる時に言われていた。

 それは思い詰めた感じに『どうしようもないなら殺さないといけなくなる、正直そうなると思う』と言った時の表情は既に諦めていると言う表情をしていた。本来であれば自分の蒔いた種であれば自分で始末するのが筋だとひかりは思ったが、好きな人の手で殺されるのもまた情けだとも思った。さらには先日の援助交際の三人組の死亡に関わっている事も愛織いおりから聞いていた。


 魔法少女は法律は裁けない。

 それは、それだけ魔法少女が強い力を持っているという事だが、それだけに魔法少女の始末は魔法少女がつけるのがこの町のルールだ。その事はひかりも説明されていた。“人”にとって害悪だと判断された場合、他の魔法少女によって始末されると言う事を。そして、魔法少女が死んだ時に起こる災害も同時に説明される。それは業泥ごうでいに取り込まれて死ぬよりも大変な事になると釘を刺され、その内容にゾっとした事を思い出す。


 それだけに魔法少女を殺す場合には他の魔法少女にも伝達しておく必要があった。

 その災害に対する警戒を勧告する言葉がHOTLINEの魔法少女グループに送られた。

 ひかりの手によって。


 そう、次は無いのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る