閑話 プール回①
8月に入ろうかというある日、
「
「ふふふふ、
「夏ですね」
「夏と言えば?」
「宿題?」
「ちがーう!プールでしょ!」
「あー、そうだね、ってまさか」
「そのまさかよ!」
そう言われて、連れられたのはとある高級ホテルのプール。
人の少ない時間を狙ったとかで、かなり空いている。
その時点なってようやく
「あ!水着もってないんだけど?」
「大丈夫、ここ、一通り揃ってるから!」
更に連れて行かれた部屋の壁一面には全て水着で埋まっていた。
カチッ
「ここのレンタル水着の部屋は貸し切りでね、好きなだけ試着できるのよ。予約制で事前にサイズを連絡しているから、ここにある物全て、
「へ、へぇ、凄いシステムだねぇ」
「という訳でぇ、ぜんぶ脱いでー!!どんどん着替えさせるからね!ここなら下着なしで試着できるよ!」
「いやああああああ!」
***
ちゃぷちゃぷとプールに浮かぶ
レンタル水着のシステムは続きがあって、気に入った物は新品を購入できる。
結局、買ったのは10着にもなった。一体、この夏に何回プールに行くつもりなのかと聞きたくなる程だ。
「このおっきな浮袋、破裂しないかな」
「何言ってるの!」
「それより、泳ぎの練習でしょ」
「そうだったね」
「本当にゆっくり泳ぎなさいよ、全力で泳いだら50mプールなんて一瞬でたどり着いて破壊しちゃうんだから」
「怖ッ!」
しばらくゆっくり泳ぐ練習をしてどうにか慣れたかなって所になって声をかけてくる人達が居た。
こんがり小麦色に焼けた肌に程々についた筋肉に細身の肉体、いかにもモテますよーと言ってるような顔立ち。そしてこのホテルに来ている事から、かなりのお金持ちである事が分かる。大学生くらいだから遊びたい盛りなのだろう。
「ねぇねぇ、君達、一緒に泳ごうよ、こっちも二人だしさ、泳ぎだったら優しく教えるよ」
「知らない人とあそんじゃいけませんってパパから言われてるから、無理」
「じゃあ遊びじゃなくて、本気じゃどう?そうだな、50m一本勝負、負けた方がここの食事を奢るって事で」
まったく奢られる気はありませーんと言う感じの言い方だ。
結局、食事を一緒にする事が目的なので、勝ち負けは彼らにとってどうおでもいい事なのだ。
「いいわよ、
「まって!今日お金、殆ど持ってきてないよ」
「じゃあさあ、そっちが負けた時、体で払うってのはどうかな」
「ちょ!」
「いいわよ、それでいきましょ。その時は食事は奢ってよね?」
「いいぜ、好きなだけ食べればいいさ」
彼らは
しかも食事の先まで予約が出来た様な物だから上機嫌だ。
勝っても負けても食事をおごる事になるが、そんな事は些細な事だと思った。
という訳で50m一本勝負が始まった。
飛び込む少し前に
「相手が飛び込んで20秒は待ちなさい、あとは絶対勝つのよ私を護ると思ってね」
ウインク付きの発言なのに、悪意しか感じない。
そもそも体で支払うのは
その言葉の意味は結局最後まで分からない
もう一人の男の掛け声で、レースは始まった。
それなのに20秒待てと言う無茶ぶり、
「あらぁ、
「どうしましょうこのままじゃあ負けちゃいます、いっそレート上げませんか?」
「ん?何賭けるんだ?」
「そうね、こちらは体での支払いを私も付き合うわ、そちらは、あなたの父のスキャンダルネタを一つ頂戴」
「ははは、いいぜいいぜ……って俺を誰か知ってるのか!?」
「知らない訳がないでしょ、有名人さん」
「はは、まぁいいさ、お、やっと飛び込んだか。今更泳ぎ初めても間に合うハズがないのにね」
その後、ビキニのトップどころかボトムまで脱げるハプニングがあったものの
更にその後のレストランで彼らの所持金が無くなる程食べ続け、土下座されたのは言うまでもない。
もし、これを読んでる方にも魔法少女をナンパする事があるかもしれない、そんな時は食事を奢る・折半なんて言わないように気を付けると良いだろう。
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