第31話 日常の再建、からの長い二日間⑤

 優々菜ゆゆなひかりにべったりと寄り添っていた。

 心乃葉このはからすれば、それはまるで付き合い始めた頃の自分を見ている様だった。

 そして、優々菜ゆゆなが居る以上、ひかりに近寄れない心乃葉このはは少し苛立ちを感じていた。

 その様子を見ていた愛理らぶりが素朴な疑問をぶつける。


「どうした?嫉妬か?」

「そうじゃないけど、ちょっとムカつくかな……」

「珍しい。比較的、私に近い性質の持ち主だと思っていたが、最愛の者を取られると辛いか」

「そりゃあ………ね」

「しかし、それはひかりも同じであっただろうな、お主をあかり君に取られさぞ辛かったであろう」

「──分かってるわよ、だからこそ、その分を取り返そうとしてるんじゃない」

「他国の基準で言うが、魔法少女に対する精神攻撃は基本戦略だ。それであの時、どれだけの者が倒れたか、話は聞いておろう?この状況、精神を鍛えるのに丁度良いのではないか?」

「………」


 心乃葉このはは黙り込んでいたが、愛理らぶりから見れば眉間に皺を寄せてる様じゃまだまだだといった感じになっている。

 当のひかりがまんざらでもない様子なのは後輩ができたという事が少なからず嬉しいらしい。

 その表情がまた心乃葉このはをじらしているのだと愛理らぶりは気づいていたが、あえて言う事は無かった。

 ただ、そいうのを見たお陰で、あかりに惑わされていた事に目が覚めた、まさに「人の振り見て我が振り直せ」である。


優々菜ゆゆなひかりに随分と熱狂的な様だが、何が切っ掛けだったのだろうか?」

「ふふん、それ聞いちゃう?私の情報収集した所によるとね、ひかり様は魔法少女を助けた功績で断トツなのよ。しかも自らピンチになった時だって、誰の助けを受けずに自力で脱出したのよ!まさに天使、いいえ、神なの!もし私がピンチになった時、助けてくださいますよね??ひかり様ぁ」

「──それはたまたまだからね、助けれるとは限らないよ」

「またまたぁ~。まぁ、期待していますよ~」


 この時、ひかりは漠然とした不安を感じていたが、心乃葉このはの形相に危険を察知し、場の雰囲気を変える事を考えた。


「えーと、そろそろ、食材の買い物行きますね」

「付いていきます!」

「私もついてゆく!!」

「仕方ないわね、私も行くわ」

「ふふ、みんなで買い物もいいよね」


 あの三人が夕飯をどうするかと考えながら、献立を考えていた。

 実の所、魔法少女の胃袋は無限に消化してしまうので、人数が多く無くても十人分くらいを作っていた。

 多く食べれば過剰分は幸福値に加算されるし、絶食したとしても少しばかり幸福値が減るだけで空腹でお腹が鳴ると言う事も無い。

 つまり、あの三人が来れば普通の食事量を食べ、来なければその分の量を食べきっている。

 それ故に、残ったおかずをタッパーに入れて渡す事も特に苦ではなかったのだ。

 それは結局、ひかりが料理好きが故の結果であった。


 スーパーに入ると、愛理らぶりが我先にお菓子コーナーへ駆けつけるところを見て、全員がほっこりしてた。

 普段の口調に戻りつつある愛理らぶりがこういう時に外見と近い行動を見せるあたりがほっこりポイントの様だ。

 愛理らぶりがその事に気付き、おずおずと戻って来た。


「一つだけ、買っていい?」


 誰もが『可愛い!』と叫んでしまいそうになるのを飲み込み、許可を与えてしまうあたりは外見効果なのだろう。何故か親目線で許可を与えるのは甘やかしすぎだろうかなんて考えてしまうひかりだった。

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