第30話 日常の再建、からの長い二日間④

 実伶みさと耀人あきとの家に来ていた。

 耀人あきととしてはあまり新たな恋にという気持ちではなかったのだが、ノリか勢いか、それとも実は好意を抱いていたのか、自分の気持ちが分からずに付き合う事になった。

 そこでまた嘘の感情で付き合うのかと自分に問いかけていたのだ。


「まさか本当に付き合う事になるなんてね~、いやぁ~言ってみるものだったよぉ」

実伶みさとはそれでよかったの?」

「うん、どうして?」

「いや、いいんだけどさ」


 そうして家に上げた訳だが、実伶みさとは以前にも来た事のある部屋をまじまじと見て回る。

 耀人あきとにすれば、何をいまさら見て回っているのかが分からず聞いてみた。


「この前来た時と変わっていないだろ?」

「んーん、なんだか彼氏の家だと思うと、見るところがちがくてさ~」

「そういうものか?」


 実伶みさとは鼻歌交じりに部屋をジロジロ見て回りながらベッドまで歩いてゆき、前触れもなく服を脱ぎ始めた。


「なにしてるんだよ!」

「なにって、付き合ったらするでしょ?普通」

「しないよ!」

「ははぁ~ん、キミィDTですかぁ?いいよ?リードしてあげる」

「だからしないって!」

「う~ん?もしかしてあんなにあったゴム使いきっちゃった!?」

「使ってないよ!一個たりともね!」


 耀人あきとが焦っているのか目をつぶって言うのに対し、実伶みさとは余裕な表情で、しかも既に上半身は下着姿になっていた。そもそも露出の肌面積が多かった彼女は脱いだところでさして変わらないという感覚でしかない。性行為だって相性を確かめる大事な行為だという認識だ。

 耀人あきとは背を向けて行為を否定したが、実伶みさと耀人あきとの背中に抱き着いて耳元で囁いた。


ひかりちゃんも初夜はいっぱいやったんじゃない?それとも他の誰かに操立ててるの?彼女相手ならいいじゃん?拒否る理由なくない?」


 耀人あきとはそう言われたのが気に食わないのか黙って実伶みさとを押し倒した。

 実伶みさとはその時点で全てを脱いでおり、舌なめずりをして耀人あきとを受け入れた。


 ***


「馬鹿!馬鹿!馬鹿!馬鹿!馬鹿!」


 実伶みさとは涙目で耀人あきとを足蹴にして罵声を浴びせる。


「ゴムあるのにどーして生でしかも、中に出すのよ!有り得ないんですけど!?」

「ごめん、なんだか余裕なくって」

「それでも中は駄目でしょ!あーもう!アフターピル、いくらするか知ってるの??1万超えだよ?払ってくれる訳!?」


 耀人あきとの財布の中身は五千円程度しかなく、今月、無理してゲーム機を買った為に貯金も底をついていた。

 そこで親に謝って借りるか悩んでいると実伶みさとは怒りながらもスマホを操作し始めた。


「ごめん、今、手持ちが無くて」

「お金はいいよ、自分で稼ぐから、でも今回だけだからねっ」

「……」

「ん、連絡ついた。じゃあちょっと行ってくるね」

「今からって何するんだ?もしかして……」

「エンコーだけど?もしかして、そう言うの束縛するの~?」

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