第5話 魔法少女の恩恵、そして禍堕ちとの戦い(中編)
楽しくケーキを食べ続け、
その場で紅茶を淹れてくれるのもポイントが高い。
なんてすばらしいお店なのかと非常に満足している
突然、
『仕事がうまく行かない!上司から怒られてばかりだ!納期に間に合わない!!!』
「うるさっ!三戸森さん、何か言ってな……じゃないよね」
「私じゃないわ。何が聞こえたの?」
「なんだか、『仕事がうまく行かない。上司から怒られてばかりだ』って感じの声が大音量で聞こえた」
「ちっ、こんな時に来るかなぁ、有り得ないんだけどー……というか、凄いね、魔法無しで聞こえるって」
「凄い?才能あるのかな」
「うん、ちょっと有り過ぎてヤバイよ」
「お久し振りね、今は東区のアークレイムホテルの35階よ、たぶん1時間以内に
「
「この間の
「じゃあ逃げないと!」
「私達は最後、もうホテル内には連絡入れてるから、うまく行けばホテルは無事で済むけど、結局、別のどこかで問題が起こる事になるわ、きっとビルが崩壊するよりマシね」
それは冗談ではなく、現実に起こるとなれば気を引き締めなくてはならない。
これが本当の初陣となる
「僕は何をしたらいい?」
「まずは変身の仕方を覚えて頂戴、できたらポーズ付きで。ヘアピンが魔法のステッキになるのは説明したよね」
「へぇ、そうなんだ」
「な、ん、で、し、ら、な、い、の!」
「ご、ごめん~」
「いざとなったら変身して戦って欲しいの。呪文みたいな物はないから、ヘアピンにキスするだけよ」
「なるほど、簡単でいいね」
周りを見渡しても店内には誰も残ってい無さそうだった。
VIP席は若干隔離された空間になっていて、二人は取り残された状態だ。
『え~ん、え~ん、ママー』
「三戸森さん、また何か言った?小さな女の子が泣いてるような声だったけど」
「えー?逃げ遅れ?仕方がないなぁ、『マジカルサーチ!』────居た!39階の非常階段付近!」
「魔法って変身してなくてもつかえるんだ」
「うん、兎に角急ごう!」
階段を上るなんてまどろっこしいとはしないでジャンプで1回で折り返しまで登る。
そんな勢いで39階なんて一瞬でたどり着きそうだった。
だが、疲れる事もなくぴょんぴょんと飛べるのは存外楽しく、もっともっと思いっきり動きたいと思った。そんな感覚が湧きおこれば、当然、強敵が欲しくなる。すると
39階にたどり着いてすぐに周りを探した。
案の定、小さな女の子がウサギの縫いぐるみを抱いてうずくまって泣いていた。
「一人で良くがんばったな、お母さんはどうした?」
「クロくてヘンなのにつかまってね、ぐにゅーっとされちゃったの」
「それってもしかして──」
「──
子供の指す方向に
それを追いかける様に
子供の手前、変身するのはどうかと思った
すると、ほんの一瞬裸になったかと思えば、
「おねーちゃん、まほーしょーじょなの?カッコいいね!」
「あはは、危ないからちょっと下がっててね」
「うん!」
「マジカルブレード!」
──何も起こらない?
(うわ、カッコ悪!)
「何で何もおきないんだ!?」
「何してるの!あなたの武器はマジカルアサルトライフルでしょ!説明聞いてなかったの!?」
「え、え、え、そうだっけ、えーとっ、よ、よーし、『マジカルアサルトライフル!』」
ステッキは七色に光り、形状を変えた。
「これ20式5.56mm小銃じゃないか!」
ステッキが変化した物は自衛隊で採用された自動小銃その物だった!
狙いをつけて、引き金を引いたその瞬間!
カチッ
しっかりと射撃モードの切り替えレバーが「ア」※に入っていた!
そこまでの再現って要るのかと、憤慨しながらレバーを「タ」※に切り替える。
※この銃の射撃モードは3つあり、「ア」「タ」「レ」と語呂合わせの様になっていて「ア」ガ安全、「タ」が単発、「レ」が連射を意味している。
改めて狙いを定め、引き金を引いた。
『ターーーン』という耳に来る音と同時に
それを聞いた子供が怯えだすが今は構ってっれない。
「なーにやってるの!!ちゃんと
「やってみる!」
ゲームでしか見た事のない銃なのに、
だが、赤い部位が見えない。これでは同じ事の繰り返しだ。
「昨日みたいに赤黒いのが見えないんだけど!」
「ああっもうっ、じゃあいい、私がやるわ!」
だが、
そして、
やっぱり三戸森さんの剣筋はカッコいいと思う
「
「わかった」
アサルトライフルをステッキにもどし、天井についた
舌の上で転がす様に舐めると対象の感情が僕の中に入って来る。
『私なんて要らない子なんだ、お母さんが私を見捨てたのだって、いじめるのだって暴力を振るうのだって全部、全部──』
自身の目がとろんとなるのが分かる。
内容は兎も角、多幸感というか、気持ちのいい温泉に浸かってるみたいだ。
このまま湯舟に浮いていたいと思う
「ってちがーう!
「と言う事は、また別物!?」
「そう、誰かは分からないけど、最初のは男の人の声だった!」
そんなタイミングで、ドーンと激しい地響きがしてホテル全体が揺れた感じがした。
「その子のお母さんを回収したわ」
「ママー!」
「一旦1階まで逃げよう、エレベータは…、こういう時、使っちゃダメだよね、じゃあ非常階段!」
「そんな事言ってられない、窓から飛び降りるわよ!東側の窓から降りれば大丈夫、構造的に下に誰もいないから!」
「えええええええええ!?」
地上39階、そこからの紐なしバンジーが今ここに!
子供には目をつぶっててもらい、
激しい速度で落下していく中、お互い声を掛け合った。
「いくよ」
「うん」
『『マジカルウイング!』』
すると二人の体からとても大きく純白の翼が広がった。地上の人々からはまるで天使が舞い降りてきた様に見えた事だろう。
体にもう一組の腕が生えたような感覚。
そこから羽ばたくと、空中で自由な飛行が出来る。
肩甲骨のあたりがむき出しになっていたのはどうやら、この魔法の為だったらしい。
そんな状況で子供は瞑っていた筈の目を開けてキャッキャと大喜びしていたが、突然、甲高い叫び声を上げた。
「きゃああああ、おねーちゃん!みてあれ!ビルがクロくなってるよ!」
とても大きなビルだったのに、真っ黒で巨大な
それを見た
「あれが、
とてもじゃないが、魔法少女でも太刀打ちできる相手ではないと思う
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