第2話 男子に絡まれる、そして助けられる
アスファルトに転がる小さな石が足の裏を傷だらけにし、血が滲み出ている。
靴は手で持っていた。急いで家を出る時に靴のサイズがあまりにも合わなかったからだ。
街灯の明かりの元で靴を履き、サイズ調整用のボタンを押し込むと、徐々に靴がしっくりくるサイズに縮む。
あまりにも小さくなった靴を見るて、女になった事を実感する。
ここで悲観すればまたドロップアウトに逆戻りとなる、そうならない様に
まだ4月半ばで深夜という事もあり、そこそこ肌寒い。
急いで家を出たせいで上着はシャツ一枚。それもボタンがはちきれそうになっている。
見る角度によっては、隙間から肌が見えるのは致し方がない事だと諦めた。
明らかにサイズが合っていないのは萌え袖気味になっている事から分かるが、シャツの裾を外に出していると出っ張った胸のせいで太って見えるのが気に食わなかった。
裾をズボンの中に入れ、ベルトを締めあげると、多少はマシになったかと思える様になった。
背は縮んだというのにズボンの裾上げが必要のない事に、若干の憤りを感じる。
ふと、
鏡を見る為に家に帰る事を考えたが、
次点で思いついたのはコンビニのトイレだ。今居る場所から程良く近いから向かう事にした。
今なら店員と話し込んでも罪にはならないし、時間を潰すのに都合がいい。もし
それにこの二週間、誰とも話していなかったせいで会話に飢えているというのもある。あんな押しかけてきたヤツの事は会話の内には入らない。流石に不可抗力だ。
コンビニにたどり着くとガラス写る自分の姿に少し見惚れてしまう。
ただ、その巨乳というのは走ってるときは邪魔だった、胸の先っぽがスレて変な気分になるのも勘弁してほしい。
総じて見た目は胸さえ無ければ小学生にも見られかねないと言った感じだ。
自己評価を吟味にしてると、3人の男子が声をかけてきた。
「ねぇねぇ、君ぃ可愛いね、どこ中よ?このあたりじゃ見かけないね、名前なんていうの?」
「プロポーションいいよね、大胆な服、メッチャいいね!」
「(ヒュ~)いいじゃん、ちょっとカラオケとか行こうぜ?」
駐車場でたむろしていた彼らの制服は
その内1人から肩に手を回され、逃げれない様に三方向から囲まれた。
別の男子はさりげなく
幸福値は0から99.9までは
よくある話、こんな夜中にぶらついてる子は
そんな子に関わる事で自分も
さらに
ノーブラのせいか頂点が目立っていた。乳首当てゲームをすれば完敗だろう。それに男の時の癖で胸元を開いていたから谷間がしっかり見えている。ただ、これ以上閉めようとするとボタンが弾けそうだから諦めるしかない。救いは多少厚手の生地だって事くらいだろうか。
だがノーブラなのは言わなきゃバレないだろうから、胸元のせいで大胆と言われているんだろう。それくらいのサービスは仕方がない。
どうせ行くあてもないし、カラオケくらい付き合っても良いだろうと考えた。
今帰れば
「それってオゴリ?」
「ああ、いいぜ、じゃあ決定だな!」
そう言うと肩を抱いていた男は肩を一気に引寄せ、その手は胸に伸びてきた。
ビクっと体が反応したが変な声が出そうになるのは抑えた。
「変なトコ、触るな!」
「ああ、ごめんよ、幸福値下がっちゃった?大丈夫?」
確認すると『135.2』になっていた。家を出る前は『105.9』だったから有り得ないくらい上がっている。
この男子たちと会ってから上がったのかは判断つかない。
さすがに今のスケベタッチで上がったとは思えないし、普通はそんな急激に変動する物でもないハズだ。
「なんだ、触られて上がってるじゃん」
「期待しちゃってるんだね、いいじゃんいいじゃん、早くカラオケ行こうぜ!」
流石に気分を害された行動を幸福値が上がった理由にされるのは癪が触るが、寒さには勝てず、ついて行った。
カラオケがどのあたりにあるのか記憶になかったが男子達は公園を抜ければ近道だと言う。
公園と聞いて
あの事を忘れようと努力しながら歩いてると、突然彼らは道を外れて草むらに入り込もうとする。
二人から手を引っ張られ、残る一人が背中を思いっきり押して地べたに倒れ込んだ。
「何するんだよっ!カラオケ行くんじゃないのか!?」
「いいじゃん、ここでヤるのも変わらないって」
「そうそう、ここなら朝まで時間制限ないしな、そういう期待しんだろ?」
「破かれたくなかったら、素直に脱ごうな!」
両手を掴まれ、折り畳みナイフを向けられた。
ここまで来てようやく
服を引き裂かれるか、自分で脱ぐか選択肢なんて有って無い様な物だった。
三人もの上級生に対して、女になった自分が勝てるとは到底思えない。早々に諦め、付いてきた自分が浅はかだったと悔いた。
「わかった──」
そう言うと同時に唐突に白い霧が立ち込めた。
男子が動揺する中、
「助かったのか……?」
そう呟いた時、背後から耳元で
「なになに?御影ちゃん、早速男漁りしてるの?ウケる~」
「ち、違うよ!」
「マジカルーブレード!」
魔法のステッキが七色に光り、日本刀に変化した。
刀の
その刀を横に一閃、男子の三人を真っ二つにした様に見えたがそもそも間合いが足りていない。これでは斬れる筈もないと思った。
だが、男子たちは苦しみだして口からドロリと黒い何かがあふれ出す。
それが集まり一塊になると、
「いい?よく見ておくことね、これが
「能書きは良いから助けてよ!」
その
やがて、
「人型になるのはコレが強い
体の大半が黒い粘着物に包み込まれ口にまで入ろうとする。
必死で抵抗しているのに、全身に変な刺激が走り口が緩む。
黒い物が口に入って来ると思った瞬間、魔法少女のさらなる一閃で
切れ目から血しぶきが頭上に噴出した。
魔法少女は、刀から血を落とすかの様に素早く振り、形状をステッキに戻した。
「気持ち悪いだろうけど、この血みたいなのをちょっと舐めなさい」
茫然としながら、
誰かの記憶が中に入って来るのを感じる。
家族の期待から来るストレス、野球で勝てないストレス、テストや進学のストレスが彼らに強く圧し掛かり、救われないでいた辛い感情が流れてくる。彼らも何処か孤独だった。仲間がいる様に見えて、お互いに傷を舐め合うしかない状況を嘆いていた。
そんな、ストレスを一度に体験したが全く嫌悪感を抱かなかった。それどころか積極的に受け入れたいと思ってしまう。
そして
「それは
魔法少女の姿をしていたのは、やはり
それだけは分かればいいと思った。
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