第27話 看病 其の七

「……」


「……」


 瑞希と雪音の二人は、だらーっと先程まで観ていた映画の余韻に浸っていた。

 二人して、床に寝っ転がりながら、ただ無言でゆったりと、過ごしていた。


「んー、みずきぃ夜ご飯なにがいいー?」


 だいぶとろけた様子で雪音が瑞希に問う。

時間的には、まだ3時を過ぎた頃ではあるが、仮に作るとするならば、決めるには丁度いい時間なのだ。


「だいぶ、ふにゃけてるけど大丈夫か雪音?」


「んー、だいじょぶ、だいじょぶ。それで?なに食べたい?キミは。場合によっては買いに行くかもしれないけど。とりあえず言ってみて。」


「……お前、また作る気なのか?別に弁当買ってくるとか、出前か何かでもいいんだけど……」


 流石にこう何度も作らせるのは申し訳ないと思っている。だいぶ体調も良くなってきたし、自身が作ると言いたいところではあるが、彼女が許可しないことは目に見えているので流石にそのことを言うことはなかった。だから妥協案として、弁当を買って食べるだとか、出前を呼ぶだとかを提案した。


「別にボクがやりたくてやってるだけだし、気にしなくてもいいんだよ?んー、なに?ボクの作る料理嫌だったりする?」


 嫌なわけがない。自身のことを思って作ってもらったものが嫌になる筈もない。それに彼女の料理は、現状そんなに食べたことがあるわけではないが美味しかった。だから雪音にそう聞かれても嫌なわけないと言うが、その聞き方は卑怯ではないだろうか?


「嫌なわけがない……というかその聞き方は卑怯なのでは?」


「嫌じゃないんならボクが作っても問題ないよね?」


「んー、でもあれだぞ。夜ご飯なんて一から作っていたらまた帰る時間が遅くなるぞ、この前みたいに。」


「別に早く作れば問題ないでしょ?

……そもそもボクは夜ご飯食べ終わった後もしばらくはいるつもりなんだよ?」


「はい?」


「だから、元々帰る時間なんて遅いものだと思ってるし、いざとなったら、泊まる用意もできてあるんだよ?」


「はぁ?お前何を言って……」


 何か聞き捨てならないことが聞こえた気がする。


「いや、だからね?いざとなればキミの家に泊まることも辞さないよって、まぁキミの許可を取るっていう最大の難所があるけど……」


「えっと、ひとまず泊まる云々は置いといと、そもそも泊まるにしても、女用の服なんてないし、そのままでいるつもりか?その時点でダメだろ?」


「ん?服とか泊まるのに必要なものは全部持ってきてるよ?」


「はっ?そんなのあるわけが……」


 まさか!!っと思い、瑞希の視線が雪音の持ってきた大きな荷物へと移される。


「分かった?念のためにと持ってきといて良かったかもね?万が一泊まるなんてことになった時用の為に、お泊まりセット一式持っておいてきたからさ。」


「うっそだろ……」


 雪音の準備が良過ぎる行動に、その大胆過ぎる行動に、思わず瑞希は天を仰いだ。

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