第25話 看病 其の六

 雪音に連れられて、瑞希はリビングまでやってきた。


「そういえば、キミの箸がどんなやつだか分からなかったから、割り箸にしたけどよかった?」


「別にそんくらい構わないが。というか自由に使っていいって言ったのは俺の方だしな。」


「ならいいんだけど。」


 互いに、正面の位置に座る。

そして、瑞希が卓上に寄せられたうどんを見て一言。


「あれ?暖かいうどんなんだ。てっきり冷たい方だと思ってたわ。」


「あー、もしかして、冷たい方がよかった?風邪引いた時は、冷たい方より温かい方がいいらしいからそっちにしたんだけど。」


「あぁー別にそうじゃなくて、ほら今日は暑いだろ?だからてっきり冷たい方だと思ってたって話。だって雪音のだって冷たい方じゃなくて、暖かい方なんだろ?それでいいのかなって。わざわざ俺に合わせなくてもよかったんだけど。というか、俺の場合は作ってくれたことに感謝こそすれ文句を言うなんてとんでもない。こっちは作ってもらった立場だからな。」


「そう?ならいいんだけど。それに、まぁ一緒に作った方が早いし、色々楽だしね。まぁ暑いって言っても、多分昼間の内は外に出ないし、別にいいかなぁって。」


 感謝こそすれ文句を言うなんてとんでもない。瑞希は作ってもらった立場なのだ。文句があるなら自分で作れっていう話である。


「じゃあさっさと食べよ?冷めないうちにさ。」


 二人で同時に、いただきますと手を合わせて食べ始める。

 麺を啜る音。


「うん、美味い。」


「そう?なら良かったけど。でもまぁこれといって難しい作業してないからね。麺を茹でて、つゆを作っただけだし。」


「まぁそれでも、つゆは一から作ったんだろ?」


「あれ?何でわかったの?」


 瑞希はつゆを作っていたところを見ていなかったはずだ。何でわかったのだろうか?


「ん?ほらちょこっと見たときにさ、つゆが作り終わった後があったし、あとは味?」


 雪音に問われたものの、返答はなんだか凄く料理できる人みたいな見分け方をしている。


「なんなのその味の違いで分かります‼︎見たいなものは。」


「いや、だってな……俺が作った時よりも断然美味いし。」


「そんだけの理由で?」


「そうだけど。俺がつゆを作る時は思いっきり市販のやつ使ってるからさ、ほら冷蔵庫の中にあったろ?その時とは味が違かっただけだよ。そういえば、何で一から作ったんだ?別に市販のやつ使えば良かったのに。」


「ん?まぁ、瑞希には美味しいものを食べて貰いたかったしね。まぁ後は単純に早く作り過ぎてもなぁって思ってたからね。」


 一から作った理由、それは瑞希に美味しいものを食べてもらいたいという思いと、早く作ってもね、という思いからである。

作っていた最中、彼はぐっすりと寝ていたし、それを起こすのも忍びなかった。

せっかくゆったりと休んでくれているのに邪魔するわけにはいかなかったのだ。


 その後は雑談しながら食べ終えた。


「ご馳走様、美味しかったよ。ありがとう。」


「ん、お粗末さまでした。片付けはボクがやっとく。」


「えっ、いや、俺がやっとくよ?このくらいはね。」


「いや、ボクがやる。ほら、この前、ご馳走になったでしょ?その時のお礼としてね。」


「お礼というならこれを作ってくれたので十分だしな。お前には今日、世話になりっぱなしだし。」


「世話になりっぱなしだし?だってお世話しにきたんだから当たり前でしょ?元はといえばキミが風邪を引いたのだって、昨日のことが発端なんだから。」


「うーん、でもなぁ。」


「ほら、キミは連絡を返したりするんでしょ?ここはボクに任せてさ、ね?」


「んー?そう?」


「そうそう。じゃ、ボクは片付けに入るからさ。」


 そう言って雪音は食べ終わったものを運んでいく。


「……じゃあ、よろしく頼む。ありがとな。」


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