第19話 看病

「帰れ……」


「い〜や〜で〜す〜。」


「嫌じゃなくてだな……というか、学校は?もう授業始まってる頃だろ。」


 今の時間帯は、もうとっくに授業の始まっている頃なのだ。なので学校を抜け出してきたとかしか考えられない。


「早退してきたけど?先生に言って許可もらったし、問題ないでしょ?」


「大ありだ。全く、あの先生もなんで許可をだしちゃうかなぁ……」


「なんでも、瑞希一人だと大変だろうからだってさ、そしたら快く送り出してくれたけど。」


(送り出してどうする。仮にも教師だろうにあの人は……)


 担任の自由すぎる行動?に思わず天を仰ぐ。


「で、開けてくれない?」


「嫌です。帰りなさい。俺一人でも大丈夫だから。」


「帰らない。キミが風邪引いたのだって多分昨日の雨のせいでしょ?ならボクにだって責任があるから。さっさと開けて、キミの看病をさせて。」


「嫌だと言ったら?」


「キミが開けてくれるまでずっとここで待つ。」


「……」


「……」


 瑞希が観ているモニターの画面には、じっとこちらを見ている雪音の姿があった。


「はぁ……分かったよ。雪音に甘えさせてもらうとするか。」


 そう雪音に言って、玄関口へ歩いて行く。

瑞希の経験上、雪音がああなってしまったら本当に自分が開けるまでそこにいるだろう。

それに9月だといってもまだ、だいぶ暑い。こんな中で彼女を外で待たせるわけにはいかなかったのだ。


 その後、瑞希は玄関の鍵を開け、雪音を招き入れる。


「ほら入れ。」


「ん、ありがとう。」


 お邪魔しますと一言口にして、家の中に入る。その後雪音は手を洗いに、瑞希は玄関の鍵を閉めた後彼女を追いかけた。


「それで、どう?体調は?」


 手を洗いながら雪音が瑞希に問う。


「うーん、まぁぼちぼち?そんなに具合が悪い訳じゃなんだよ。一応熱あるけどさ。」


「ふーん、まぁ取り敢えず横になって休んでて。家事だったりはボクがやっとくからさ、今日はもうゆっくり休みなよ?キミはこうゆう時くらい、しっかりと休みを取らなきゃだめなんだからね?……分かった?」


「……分かったよ。」


 渋々といった様子で瑞希が返事をする。

本当ならば、別に大丈夫だと。心配しなくても平気だと言いたかったが、やめた。なんというか圧があった。これ逆らったらダメなのでは?なんて感じる圧が。


 そう答えた後、瑞希の部屋に二人で戻り、瑞希は布団の上に寝っ転がり、雪音は床の上に座る。その後雪音はバックの中からあるものを取り出す。


「はい、これスポーツドリンク。くる途中で買ってきたんだけど、ちゃんと飲んでね。」


 スポーツドリンクを1本瑞希に差し出す。


「それと、食欲はどう?何か食べれそう?色々と食べれそうなもの買ってきたけど。」


「食欲は特に変わらないから大丈夫。それと買ってきたやつの料金は後でちゃんと払うから。」


「ん、分かった。はい。ゼリー。風邪引いた時は食べるといいって聞いたからさ。あぁ、後冷蔵庫借りていい?色々と冷やしときたいものがあるから。」


 ゼリーとプラスチック製のスプーンを渡しながらそう聞いてくる。


「ありがと。それと、好きに使っていいぞ。」


「ん、了解。じゃあちょっと冷やしてくるから。」


 そう言って雪音は冷蔵庫へと向かいに部屋から出ていった。


 部屋にいるのは瑞希のみである。


「りんご味か。それじゃあいただきます。」


 先程渡されたゼリーを開けて食べる。


(うん、美味いな相変わらず。それにしても来るとは思わなかったけど、ありがとう。)


 雪音へ感謝の気持ちを抱きながら、食べ、その後近くにあったゴミ箱へ捨てて、雪音が戻るのを待った。

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