第18話 風邪
朝、瑞希が眠りから目覚めると身体に違和感を覚えた。まぁ、違和感といっても体の一部が無くなるだとか、思うように動かないだとかではなく。ただ少し身体が重いなと感じるくらいだった。そんなことから瑞希は、特に気にすることなく、朝の準備をしていた。……していたのだが、時が経つにつれて、あれ?なんだかおかしくないか?と、思い始めた。いっこうに治らないのだ。身体が重いし、咳も出てきた。何なら怠ささえ感じるようになってしまった。
(うーん、風邪引いた?はぁ、取り敢えず熱でも測ってみるか)
そんなこんなで体温計を持ってきて、熱を測る。ピピピッと計測が終わったことを告げる音が聞こえた。体温計を手に取り、表示されているものを見る。
(37.9度、これは今日休みか。連絡しとかないとなぁ。はぁ……絶対これ、昨日のやつが原因か。)
風邪を引いた原因は分かっている。絶対とまではいけないがほぼ9割はこれが原因だろうなと思っている。それを鑑みるに風邪引いたのは自業自得なのだが。
まぁひとまず学校に、休む旨の連絡を入れるため、瑞希は自身の部屋に舞い戻り、スマホを使い、学校へと電話をかけた。
電話が繋がった後は、事情を説明して、担任の先生を呼んでもらう。
暫くすると声が聞こえてきた。
「よぉ、瑞希。珍しいじゃないか、お前がこうして学校に連絡入れるなんてなぁ。」
聞こえてくるは、砕けた口調で話す、若い女の声。
「そうですかね。あと、教師が生徒に向かっていの一番に、よぉは無いんじゃないですか、先生?」
今瑞希が話している相手は瑞希たちのクラスの担任の教師である。
「あぁ?別に口調なんぞどうでもいいだろ。なんだ、お前はわたしにもっと品のある口調で喋って欲しいのか?わたしは、親しみやすく、相談しやすい教師を目指してるからな。こっちの方がなにかと話しやすいって評判なんだぞ。まあ?お前の愛しい彼女にはなにかと避けられてるけどな。」
「彼女じゃありませんけど?」
「愛しいの部分は否定しないと……」
「それ、卑怯じゃありません?あと、さっさと本題に入りたいんですけど。」
「ああ、すまんな。ついお前と話していると楽しくなっちゃってな。こんなにもツッコミを返してくれる奴は中々いなくてな。」
「はぁ、そうですか。まぁ、本題ですけど、風邪引いたので休みますね、学校。」
「風邪か……症状は今のところどうだ?」
「症状ですか?熱があるのと、咳、後は少し怠いくらいですかね。」
「ふむ、それなら大丈夫そうか。こうしてわたしの会話に付き合えているのだしな。まぁわかった。しっかりと休息をとるがいい。
お前もたまにはゆっくりと休みを取ることだな。それじゃあこの辺でわたしは失礼する。お大事な。瑞希。」
「はい、ありがとうございます。」
通話が切れる。はぁー、とため息をつく。
あの先生と話をするのは少し疲れるのだ。
相手のペースに乗せられるというかなんというか。まぁそれを思っているのは自分だけだろうなと思う。ああいった感じだが、生徒からは絶大な人気を誇る人なのだ、あの先生は。
まぁ、それは兎も角。連絡も終わったのでひとまずゆっくりと休むとするかということで布団の上で横になる。
それから暫く、布団の上で横になっていると、家のインターホンが鳴った。
なんだ?と思い、布団から起き上がって、部屋を出て、モニターの前まで移動する。
そこに映った人を見て、思わず目を見開く。そして、相手に声をかける。
「おい、なんでお前が居るんだよ……」
「なんでって、看病だけど?一人だと大変だと思うから、こうしてボクがやってきたのさ。」
瑞希の家までやってきた相手、それは本来なら学校に行っているはずの雪音だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます